雑誌83カ国、オンラインサイト49カ国で展開する、女性メディアのグローバルブランド、コスモポリタン。他の国のコスモは、どんな女性たちが作っているの? 彼女たちの仕事にかける思いとは?

コスモポリタン アメリカ版が、各国の編集長を直撃しました!

【コスモポリタン チリ版 編集長:イグナシア・ウリベ】

イグナシアは現在30歳で、コスモポリタン チリ版の編集長に就任して2年。以前は新しい新聞の創刊に携わった後、PR会社に勤務。長らく"ジャーナリスト魂"を持て余しては、生かせる場を探していたのだとか。そんな折、コスモの編集長になるチャンスがあると知った彼女は、迷うことなく挑戦することを決意。以来、チリでは禁止されている中絶に関する記事を掲載したり、フェミニズム(彼女ももちろん支持者!)に関する記事を書いたり、自分自身だけでなくコスモのメディアとしての可能性も押し広げ続けているそう。

――現在、チリ版のチーム体制は?

チリ版は世界のコスモの中で最も小さなチームなんです。メンバーは、私、ジャーナリスト、アートディレクター兼デザイナーの3人と、インターンで運営しています。

――コスモで働きたいと夢見る女性にどんなアドバイスをなさいますか?

インターンは常に受け入れています。まずはコスモのウェブサイトでブロガーとして始めてもらいます。そして閲覧数の多い記事を書ける人がいたら、フリーランスとして記事を依頼することもあります。もしそのブロガーがファッションに強いブロガーだったら、ファッション特集を組む際のアドバイザーになってもらったりもします。

――読者層についてお聞かせください。

18歳から30歳の間ですね。1番多いのは23歳から25歳辺りです。多くが大学生や社会人になりたてで、自分の時間の使い方や、自分で稼いだお金をどう使うのか、もしファッションに使うのならどう使うのが自分にとってベストなのか、そんなことを考えている方々だと思います。

――どんなセレブが人気ですか?

カーダシアン一家の人気は絶大ですね。家族全員の写真を表紙にした号は、すごく話題になりました。特にケンダル、カイリー。続いてキム、クロエも人気ですね。アリアナ・グランデは昨年10月チリに来てから人気が高まり、3月号を飾ってもらった表紙も好評でした。マイリー・サイラスの人気も衰えません。

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――チリ政府は市民団体の活動を認める一方で、同性婚は許していません。そのことについて国民はどう意識していますか? チリ版では LGBTの権利についての記事は掲載していますか?

はい、同性婚についての記事を掲載することもあります。ただ昨年扱ったのは、同性愛者だけでなく異性愛者も含めての、とある行政協定についてでした。その協定によって、結婚という形を取らなくても、同居して子供を持つことが許されるようになったのです。私自身もこれについては大賛成です。というのも、チリにおける結婚制度は、男女平等ではないからです。

―― 一体なぜでしょう?

男性優位を許すような結婚制度なんです。ですが今回の行政協定は、異性カップルも同性カップルも対象で、男女において平等な立場を保証されるものなのです。未だ同性婚は認められていませんが、この協定は国民全体にとって間違いなく良いことでしょう。もちろん、今後同性婚が許可されればより良いと思います。

――男女の不平等は、どういった面で最も現れますか? やはり結婚制度でしょうか?

いえ、今現在では結婚する人自体が少なくなっているのと、離婚率の上昇もあるので、結婚制度よりも中絶問題における不平等の方が、より注目すべきことだと思います。中絶を禁止しているのはバチカンを含めわずか数カ国。チリはその1つなのです。母親に生命の危機があろうと、望んでいない妊娠であろうと、レイプによるものだろうと、私たちには選ぶ権利がないのです。政治、法律の世界にいるほとんどが男性で、彼らが全ての決定を下していることが問題です。

――男性優位の政治は多くの国について言えることですよね。チリで女性にとって抑圧的な政治が続いている理由は何なのでしょうか?

70年代までは中絶は許されていたのですが、独裁者であるピノチェトが違法にしてしまったのです。チリの議会には右翼政党も左翼政党もありますが、どちらにも保守派が一定数いるのでなかなか難しい。ですが政府は今、せめてレイプや危険な出産、母体の生命に関わる場合に有効な中絶に関する法律を制定しようと動き出しました。このことは大きな話題となり、たった数日前ですが議会で最初のステップをクリアしたばかりなのです。これから上院での審議を通さねばなりませんが、とてもとても大きな出来事で、私たちコスモ編集部も大変誇らしく思っています。早く合法化されることを願っています。

――女性の健康、避妊に関するコンテンツはどういったものを扱っていますか?

毎月とはいきませんが、取り上げています。避妊に関する記事では、ピルやコンドームについてが中心になります。チリでの避妊方法は、この2つがメジャーだからですが、避妊リングや注射等、他の方法についても紹介しています。

――中絶したくてもできないという女性たちにどのようにアドバイスしますか?

数年前までアフターピル(緊急避妊ピル)すらありませんでした。今となっては使用が認められていますが、その是非をめぐっては大きな議論がありました。私たちに言えることは、危険な中絶をすることで自分の命を危険にさらさないでほしい、それと同時に、自分の体は自分で守ってほしい、ということです。私の知人にも、事情はどうあれ中絶を選んだ人はいます。決して安全ではありませんし、良いこととは言い難い。しかし彼女たちは後悔していません。とても難しい事柄だと思います。

しかも、そういった記事を書くと、保守政党から中傷のツイートをされるんです。また中には、若い女性からの中傷もあります。なぜそういうことができるのか、私には理解できません。自分が中絶に反対なら、中絶をしなければいいことであって、他人に強制するものではないはずです。

――こういった記事を掲載することで、政治的な圧力や規制は受けませんか?

いえ、さすがにそこまではありません。時々記事を見たという人から「訴えるぞ」なんていうメールやツイートがあったりはしますが、私たちには記事を書き、女性たちに情報を提供する権利がありますから。実際に訴えられることもありません。報道・言論の自由が認められています。私たちは中絶の合法化を積極的に支持しているというだけです。

――他に、「訴える」などの脅迫を受けた記事は?

先に挙げた中絶を合法化する3つのケース(レイプ、胎児の存命が見込めない場合、母体に命の危険がある場合)についての議論が過熱した際に、私たちは大規模な特集を組んだのですが、その締めくくりに「最も重要なことは、誰しもが自分で選択する自由を手にすることです」と結論づけたところ、ネガティブな反応を受けました。批判的なツイートが大量にありましたが、しかし、最終的には何も起こりませんでした。

――女性大統領を持つ国の編集者と話をする機会はあまり多くないのですが、チリの読者はヒラリー・クリントンとドナルド・トランプ、あるいはアメリカ大統領選についてどのように感じていると思いますか?

正直見当もつきません。というのも、チリの政治は現在とても混乱しています。私たちの国の政治はとてもクリーンで、南米一の政治を行っている国だと思われていましたが、ここ2年の間に様々なスキャンダルや疑惑が浮上してきたのです。報道とジャーナリズムによるところが大きいのですが、国民は政治に対してものすごく怒っていて、果たしてアメリカの政治に関心を持つ余裕があるかどうか…。私には私の意見がありますが、読者のみなさんを代弁することはできません。

――読者はフェミニストでしょうか?

先月、男性による女性殺害のうち、性別的要因が大きく関与する"フェミサイド"についての特集を組んだところです。実は、今年こうした事件が相次いで起き、大きな問題となっているのです。チリでの報じられ方にも問題があって、「その女性は"愛"のために死んでいった」などと書かれたりします。女性は愛のためになんて死にませんよ。女性たちは今、フェミニズムと男女平等について意識し始めたばかりで、"マチズモ"、つまり男性の方が女性よりも優れているといった観念から解放されようとしています。ただフェミニズムとは、「女性の方が男性よりも優れている」という考え方だ、と誤解している女性が非常に多い。本来は平等であることであって、優劣を表す言葉ではないのですが、ようやくその認識が広がり始めたばかりなんだと思います。先はまだまだ長いです。私たちの読者もフェミニストですが、そのほとんどがまだ、このことを認識していないのかもしれません。

――2年前編集長に就任した頃と比べて、今の方が人気のあるコンテンツはありますか?

2点あります。私は今のポジションについてすぐに、インスタグラムを始めました。インスタグラムは今ものすごく大きなSNSになっていますよね。私たちにとっても最も影響力のあるSNSなので、活用するようになりました。そしてもう1つは、オリジナルコンテンツの増加です。以前は少なかったのですが、現在は全体の65%から75%がオリジナルで、残りは海外版のコスモからのコンテンツです。今は私自身がセレブのインタビューも行いますし、表紙も担当しています。中絶や同性婚、女性の権利などについての記事も自分たちで作っています。また、音楽やいろんなイベントなどにも積極的に関わっています。読者たちと直の接点を持てる良い機会なのです。

――雑誌とウェブ版との関係性はどういったものですか?

雑誌は私たち少人数チームが担当、オンライン版はブログのような形式で、デジタルチームが担当しています。相互関係はありますが、部署もフロアも分かれてしまっているんです。

――チリの若者に関することで、他の国の読者が驚きそうなことはありますか?

意外に思われるかもしれませんが、チリの若い層も世界中と繋がっている、ということではないでしょうか。私たちの国は地理的には世界の端っこに位置しています。しかし、例えばニューヨークやパリで開催されている最新のファッションショーのことも知っていますし、有名セレブのことにも詳しい。世界中で起こっていることに関心があります。そう、私たちは繋がっているのです!

※この翻訳は、抄訳です。

Translation: Captain & Me, Inc.

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