雑誌83カ国、オンラインサイト49カ国で展開する、女性メディアのグローバルブランド、コスモポリタン。他の国のコスモは、どんな女性たちが作っているの? 彼女たちの仕事にかける思いとは?

コスモポリタン アメリカ版が、各国の編集長を直撃しました!

【コスモポリタン オランダ版 編集長:アン=マリー・デ・ヴリース・レンチュ】

コスモポリタン オランダ版の編集長アン=マリー・デ・ヴリース・レンチュ(40歳)。インターンとしてキャリアをスタートさせた彼女が、編集長になったのは3年半前のこと。男女間の格差が比較的少ないというオランダでの、働く女性のリアルな経験談を語っています。

――コスモポリタンの一員になったきっかけは何ですか?

何年も前になりますが、インターンとして働き出したのが始まりでした。私にたくさんのことを教えてくれた雑誌です。メディアの一線で活躍するための心構えや、ハイヒールでしっかりと歩く方法なんかも教わりました。私にとって、広く名の知れた媒体で働くのはコスモが初めてでしたが、インターンを経て、ブランド・マネジャーを務めるまでになりました。それから一度コスモを離れ、『マリ・クレール』誌と『グラツィア』誌のブランド・マネジャーとしてのキャリアを経験。そうこうしているうちに、出版社から「コスモポリタンが編集長のポストを探しているよ」と声をかけられたんです。「信じられない!」と思いました。コスモは私の初恋で、最高の恋人でもあったからです。編集長のポストを得るために、私は課題に取り組み、出版元のハースト・インターナショナルと数回電話での話し合いを経て、とうとう採用の連絡を受けました。夢のような出来事ですが、最高の仕事に巡り会えたのです。こうして"初恋"の場所に戻ることになりました。

――コスモガールにとっては、夢のようなストーリーですね。

自分が編集長になるというとき、インターン時代の編集長がメールをくれたんです。私が数年の時を経て、ご自身の辿った道を引き継ぐことを祝福してくれました。「あなたがソワソワしながら、私の隣に座っていたのを覚えているわ。そして今、あなたがコスモポリタンのかじ取りをすることになったのね!」と言ってくれました。

――オランダ版の読者層は何歳くらいでしょうか?

ターゲットはミレニアル世代で、年齢でいうと18歳から34歳ですが、平均年齢は27歳です。雑誌の読者は、ウェブ版よりも少し年齢層が高いと思います。他の雑誌においても言えますが、ウェブ版の主な読者は若年層になるんですよね。

――読者に人気のセレブリティは?

ミレニアル世代の女性の特徴は、(残念ながら私はこの世代ではないのですが)自分が共感できる女性を支持する点ですね。2014年に、私たちは若い女性を対象に、大々的な心理学リサーチを行なったことがあるんです。彼女たちの原動力、人生おいて重要視すること、何に最も価値を置くかなどを調べました。そこで、彼女たちは自分が共感できる女性に影響を受けることがわかったんです。その答えは、ウェブ版を見ても、雑誌の表紙を見ても現れていると思います。世界的なセレブリティ、例えばジェニファー・ロペスはミレニアル世代ではありませんが、とても人気があります。彼女は自らの手でキャリアを築いた、強い女性。そこに読者は共感するのでしょう。その他、ジェニファー・ローレンスやビヨンセも高く支持されています。一方で、カイリー・ジェンナーも人気があるので、一概には語れませんけどね。

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――読者が今、注目しているファッションや美容のトレンドは何でしょうか?

オランダ国民の特徴として、とても堅実である、ということが挙げられると思います。またとても正直で、まじめな人が多いんです。ですから、美容やファッションのトレンドも気にはなりますが、実用的かどうかの方が大事。例えば、スモーキーアイメイクってかっこいいけど、職場やちょっとした外出には向かないかな、と考えるわけです。明るいリップもしかり。もちろんそれがトレンドだってことは知っているんですよ。実は最近まで髪のブローやセットの習慣もなく、美容院と言えば、ヘアカットをする場所、でしかなかったんです。

――ブローしないんですか…?

そうなんです! アメリカの女性にとっては、ステキな髪型が最高のアクセサリーですよね? でもオランダではそうでもないんです。ちょくちょく小雨が降るなど、変わりやすい天気のせいもあるかもしれませんね。ですが、美容やファッションへの関心は以前よりも高くなっています。SNSの影響もあるでしょうね。2~3年前よりも、自分の写真を撮る機会が増えましたから。

――オランダは2001年、同性婚を合法化した最初の国となりました。読者は、世界が同じ動きをするのに時間がかかっている、と驚いているでしょうか? それとも、もはやあれこれ考えるほどのことでもないのでしょうか?

断定はできませんが、オランダ人はあらゆることに対して、とてもオープンマインドなんです。それはコスモ オランダ版を読んでいただけたらわかると思います。バレンタインに恋愛特集を組んだのですが、「愛って何?」「愛こそがすべて?」という疑問が私たちの頭に浮かびました。そしてどんな人が「愛」についてのアドバイスを必要としているのかも考えました。そこで私たちは、シングルの人も、恋愛中の人も、結婚している人も対象に企画を考えることにしたのです。また、同性愛者の女の子たちにも話を聞こう、とも。そして彼女たちに悩みや、パートナーとの関係をうまくいかせるコツを尋ねてみたんです。私たちは他のカップルと同じ質問を、同性カップルにもしてみました。同性カップルからも注目してもらう必要があると思ったのです。私たちにとって、それは自然なことでした。また、ミレニアル世代は性について"流動的"な側面がある事実についての記事も書きました。

性別の重要性は減っています。ゲイ、ストレート、バイセクシュアル、トランスジェンダー…ミレニアル世代にとって、性的指向が何なのかはどうでもいいことになりつつあるようです。世界的なこの傾向を、私たちの読者にも伝えたいと思っています。

――オランダは世界全体でも人工中絶の割合が低い国の1つだといわれています。これについてはどう思われますか?

いい質問ですね。アメリカの事情とは違うと思います。オランダでの人工中絶は法律で認められているんです。それから、若い世代は避妊についてしっかりと教育されます。避妊について情報を得やすい環境にあるのも理由かもしれません。これは私個人の意見ですが、人工中絶の割合はさらに低くなっているので、女の子たちに正しい情報が届いている証拠ではないかと思います。本当のところはわかりませんが。

「ストレスを感じた(stressed)とき、ケーキや甘いもの、アイスクリームを食べるでしょ? それはなぜか? 反対から読むとデザート(desserts)だから!」

――オランダ版では、避妊具に関する情報も扱っていますか?

毎号ではありません。新商品が発売されたり、調査結果がわかったり、関連ニュースで報じられたりした場合でしょうか。女の子たちはオランダのどこでも情報が得られます。私たちの医療制度はとても優れていて、必要とあらば誰でも病院に行けますし、医者に診てもらうこともできます。避妊具についても情報はあらゆるところにあるんです。

――オランダ版ではセックスワーカーをどう扱いますか? オランダでは売春が合法とのことなので、それほど問題ではないのでしょうか?

過去、何度か扱ってきましたが、いずれも女性たちからの実話をもとにした記事を掲載しています。例えば、「セックスワーカーであることとは」という記事では、ジャーナリストが念入りに取材をしました。違法ではないので覆面では取材していません。ジャーナリストは、エスコートサービスに出向き、女の子たちに話を聞いては、自分自身の経験も交えて記事を書きました。私たちは常に、自分たちの経験から記事を書くようにしています。オランダには"飾り窓"という風俗街があります。そこでは食事ができたり、バーでお酒を飲めたり、ただ散歩することもできるんですが、大切なことは、必ず合法に運営されているエスコートサービスとタッグを組むこと。中には不法な組織も存在するので注意が必要です。

――読者は男性のセックスワーカーにも興味がありますか?

話題にも上がりませんし、わざわざ「男性のセックスワーカーについて特集してほしい」なんてメールを送ってくる人もいません。どちらかというと、女性はオーガズムの問題の方に、より興味を持っているのではないでしょうか。いろいろと調べた結果、オーガズムを得られるのは簡単なことではないようです。かつてインタビューした女性の中には、あれもこれも試してみて、結果カウンセラーに相談したし、かなりエッチなマッサージも受けた、という人がいました。私たちの調査では、男性のセックスワーカーのことが知りたいという結果は得られませんでしたが、オーガズムを求める女性への解決法として取り上げてもいいかもしれません。

――最近の記事で、特に自信を持っているのは何ですか?

個人的にも非常に興味深いと思いましたが、安楽死を選んだある若い女性の話です。私たちは彼女の友人にインタビューして、どう思うかを尋ねました。ほかには、乳がんについての話で、実際に罹患した女の子と彼女のボーイフレンドの視点から紹介しました。若い女の子が乳がんを患ったとき、果たしてボーイフレンドはどう思うのか? 友達は? 彼らには何が言えるのか? 逆に言ってはいけないことは? といった具合です。かなり難しいトピックも扱いました。そういった記事はかなりの労力を伴います。それに死はとてもデリケートなテーマなので、無事に成し遂げたことを誇りに思います。

――読者の間で最近、注目を集めていることは何でしょうか?

読者の行動の変化からもわかると思いますが…3年前、紙媒体は私たちの最大のプラットフォームでしたが、今はオンラインに代わりました。1カ月あたり300万人もの若い女性がアクセスします。現在コスモのウェブ版は、オランダの若い女性にとって最大のプラットフォームですが、わずか1年でここまで成長しました。ここまで急速に成長したのはとても興味深いことです。コンテンツを見れば、実体験こそが読者に求められているとわかるでしょう。中には「〇〇のための25の方法」といったリストアップ形式の記事もありますが、女性の実体験もカバーしているのです。アメリカではどうかわかりませんが、そこが若い女性を惹きつけているポイントだと思います。だからどんどん書き続けます。また、多くの女性が仕事を掛け持ちしながら勉強もしているので、"健康"は高い関心を持たれるトピックになっていますね。

――オランダの若い女性に対する懸念点はありますか? 

女性の興味深い点は、自分についてあれこれジャッジしてしまうところです。若い女性、というか女性は一般的にそうですが、自分にとても厳しく、すべてを完璧にやろうとします。確かにこの社会では、やりたいことができるという事実を目の当たりにできます。ブローカーにも、キャビンアテンダントにも、カメラマンにも、そして建設作業員にもなれるのです。ですが私たちはあれこれやりくりして、週7日、24時間"オン"の状態にあります。なぜなら仕事は9時から5時まで、または6時までといった単純なものばかりではないからです。携帯電話の普及や発達で、いつでも仕事モードになっています。それに適応することも変化の1つです。私たちの社会では、フレキシブルになることがさらに求められています。その上で、女性がもっとあれもこれもしたい、ちゃんとやりたいと思った結果、プレッシャーを招くことにもなりかねないのです。

――オランダ版の読者はフェミニストだと思いますか?

オランダでは、男性を敵とは見ていません。彼らから学び、共存することはいいことだと思います。国民には多くの権利が与えられているので、権利を求めて闘う必要が無いのです。それがアメリカなど他の国とは違うところでしょうね。とはいえ、結局のところ私たちはみんなフェミニストだと思います。ただし、オランダでは多くのことが整備されているので、特定の問題についてデモをすることはそうそうありません。女性も男性と平等だと感じることが多いですし、そう信じています。信念はすでに具現化されているので、闘う必要がないのです。

――雑誌とウェブ版はどんな関係ですか? あなたは両方の責任者でしょうか?

そうです。私はチームのことを、"360度チーム"と呼んでいます。ライターは、雑誌とウェブ版の両方を担当する必要があります。

――オランダで人気のあるSNSは何ですか?

インスタグラムとFacebookです。Facebookはニュースフィードとして活用されています。インスタグラムは楽しみで使っている人が多いと思います。両方使っている人もいるでしょう。それからスナップチャットも急成長していますよ。

――最後に、オランダのコスモ世代に関して、他の国の読者を驚かせるようなことはありますか?

今ではみんなちゃんとブローしてますよ、ってことかしら!(笑)

オランダはとても小さな国ですが、世界的な知名度は高いです。それからオランダ人はとても実直な人たちです。今回は人工中絶や同性婚といったデリケートなことについても聞かれましたが、私たちオランダ人はとてもオープンマインドで、あらゆるテーマについて自由に意見を交換できる社会の住人なんです。

※この翻訳は、抄訳です。

Translation: Captain & Me, Inc.

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