雑誌83カ国、オンラインサイト49カ国で展開する、女性メディアのグローバルブランド、コスモポリタン。他の国のコスモは、どんな女性たちが作っているの? 彼女たちの仕事にかける思いとは?

コスモポリタン アメリカ版が、各国の編集長を直撃しました!

【コスモポリタン アルゼンチン版 編集長:マリア・ホセ・グリロ】

コスモポリタン アルゼンチン版の編集長を務めるのは、マリア・ホセ・グリロ(通称マホ)、49歳。生涯をジャーナリズムに捧げてきた彼女だけど、実はコスモ アルゼンチン版からセックスワーカーに関する特集記事を依頼されるまで、女性誌に携わった経験がなかったのだとか。その当時、彼女はとある国会議員について調査をしていたものの、コスモからのオファーを受けて快諾。

その後、スペインでしばらくの間ニュース編集者として働いた後、正式にコスモの編集に携わることになり、編集マネージャーを経て編集長へと就任。今では多くの部下を抱え、彼女たちの指導を行う日々。圧倒的にカトリック教徒が多いアルゼンチンで、11年間にわたり健康問題に重きを置いて取り上げてきたマリアの仕事観とはいかに…?

――ジャーナリストとして、仕事におけるアドバイスはありますか?

3つあります。まず、(1)誰にでもわかりやすい文章を書くこと。(2)良いときもそうでないときも、人に親切に接すること。そして(3)読者の声に耳を傾けること。これらは全て、コスモで上司たちに教えてもらったことで、彼女たちには今でもとても感謝しています。

――オフィスでの1日について教えてください。

プレゼンや会議がない限り、朝は8時半に出社し、20時に退社します。ただし金曜だけは娘を学校に迎えに行くので、早めに帰ります。毎日決まったスケジュールがあるわけではありませんが、オフィスで行うことは、広告会議、執筆、コスモ ウェブ版の編集、そしてチームミーティングなどです。私の部署には10名の女性が在籍しています。ライターチームはみんな年齢が若いので、いつも賑やかで楽しそうですよ。彼女たちは読者代表と言ってもいいでしょうね。オフィスにいると、時間があっという間に過ぎるので、長時間の労働も苦ではないんです。つらいことと言えば、1日何百通と来るメールの処理。ものすごく時間が取られる仕事なんです。

――コスモ アルゼンチン版で働きたいという女性にアドバイスはありますか?

ありきたりな履歴書ではなく、何を学んできたか、何に興味があるか、どんな能力があるかなど、自身のことを魅力的に伝えられる履歴書を書いてみましょう。もし文章力をアピールしたいのであれば、難しいトピックを選び、それをわかりやすく、おもしろく伝えられるように書いて送ってください。そしてぜひ、本誌を熟読してほしいですね。コスモに限らず、仕事探しの際に大切なのは、まずはその会社がどんな人材を求めているかを知ることです。実は私たちの会社は、アルゼンチンでは初となる女性専用の仕事検索サイトを立ち上げて好評を得ているんですよ。

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――アルゼンチン版の読者はどのような女性ですか?

18歳から35歳の女性が主な読者層です。学生さんから、経験豊富なビジネスパーソンまで様々ですね。みなさんに共通して言えるのは、セックス、美容、ファッションについて興味を持っている方が多いことでしょうか。つまり、常に自分を高めたいという女性たちですね。読者はアルゼンチン国内の大都市圏に住んでいる方がほとんどですが、実はウルグアイやパラグアイでも展開しているので、そういった地域の読者も多いんですよ。

――人気のあるセレブは誰ですか?

テイラー・スウィフト、アデル、ビヨンセ、リアーナ、カーラ・デルヴィーニュなど、インターナショナルに活躍している女性ですね。またもちろん、ルイサーナ・ロピラト、ラリ・エスポジート、ティニ・ストエッセル、ナタリア・オレイロ、セレステ・シド、チナ・スアレス、カル・リヴェロなど、アルゼンチンセレブの人気も高いです。ここに挙げた全員、本誌の表紙を飾ってもらっているんですよ。

――アルゼンチンはラテンアメリカの国としては初めて同性婚を認めた国ですが、ご自身の裁量でLGBT関連の記事を掲載することはできるのでしょうか?

はい、もちろんです。長年コスモ アルゼンチン版は、セックスや恋愛において、異性愛の女性たちのバイブルとしての役割を果たしてきました。アメリカ版に掲載されたレズビアンの性に関する翻訳記事も採用してきたし、ちょうど現在は、レズビアンカップルの日常を追った記事も準備中です。コスモは女性誌ですから、全ての女性に向けた記事があって当然と考えています。

――アルゼンチンは多くのケースで人工中絶が認められていない国ですが、実は年間50万件もの手術が違法に行われていると聞きました。なぜ未だに合法化されていないと思いますか? 

50万件という数字が事実かどうかはわかりませんが、毎年多くの女性が不適切かつ安全ではない中絶手術により命を失っていることは確かです。人工中絶が認められるのは、性的虐待による妊娠か、女性が精神障害などを患っている場合の、限られたケースのみ。ですがその場合でも、信仰や倫理観を理由に、医者が中絶手術を行うのを嫌がることがあります。アルゼンチン国民のほとんどがカトリック信者で、現在もカトリック司教の政治的影響力が強いため、法制化が進まないのです。だから私たちは、本誌のなかで避妊の重要性について何度も取り上げていますし、これからも発信し続けます。

――仕事、キャリアに関する記事ではどんなアドバイスをしていますか?

私の持論ですが、「仕事とセックスは同じ」だと考えています。つまり、私たちは仕事によってハッピーにもなれるし満足感も得られる。決まった時間に決まったことをこなすのが仕事ではありません。仕事を好きになって、そこから何かを得られないと意味がないんです。お金のためだけに働くのではなく、その仕事を通じてスキルアップし、自己表現の仕方や自信を身につけることが大切だと思います。昇進や独立を目指す女性はみんな、共通してこれらを実践しています。

ミレニアル世代の若い人たちは勢いがあり、何をやりたいかが明確ですよね。私たちからアドバイスできるとすれば、「現状に甘んじないで」ということ。労働環境の改善、オフィスでの人間関係なども、自分がやりたいことを実現するには必要なことです。

――アルゼンチンにおける男女格差については、どんなことが挙げられますか?

全国で女性役員がいる会社は18%しかありません。そして、大学での専攻分野を仕事にできる女性は24.6%です。これには様々な理由が考えられますが、大きくは"マチスタ"と呼ばれる、女性は男性より一歩下がるべきという男性優位の社会通念が影響していると思います。同じ能力を持った男女がいたとしたなら、企業は男性の方を採用します。大卒の10人に6人は女性なのに、男性優位で物事が決められるなんて不公平ですよね。また他の国と同様に、給与水準も男性より女性の方が低いです。

――読者にはフェミニストを自認している人が多くいますか?

「私はフェミニスト」とわざわざ宣言しなくても、フェミニズムの考えを持つ読者は多いと思います。フェミニストと言えば、男勝りで男性嫌い、もしくは男性を劣った生き物と思っている女性、といった固定概念を持っている人がいますが、実際はそうではないですよね。どんな生き方を選ぶか、何を食べるか、誰を愛するか…人間として当然の権利を認めてもらうことが大事だと考え、明確にしようというのがフェミニズムの基本的な発想のはずです。

ところが、女性は男性より劣り、虐げられ、黙殺され、誘拐され、強要されるべきものと考える人が今だにいることは腹立たしいことです。実は昨年、こうした根強い風潮によって引き起こされる犯罪行為の撲滅を目指し、アルゼンチンでは女性ジャーナリストたちが立ち上がって大規模なフェニミストキャンペーン「Ni Una Menos」(直訳:劣っている女性は1人もいない)が発足しました。多くの国民はこれに賛同の意を示してくれていて、他国にも広がりを見せているんですよ。

――読者はアメリカ大統領候補のドナルド・トランプ氏についてどう思っていますか?

誌面で問いかけたことはないですが、SNSでの反応を見る限り、トランプ氏への好感度は低いでしょう。人種差別主義者、反ラテンアメリカ、そして右翼主義、といった印象が多く持たれているようです。

――ヒラリー・クリントン氏についてはどうですか?

クリントン氏の人気は高いですが、「女性だから」という単純な理由からではないと思います。アメリカにおいて、女性が大統領候補に選ばれたことは喜ばしいことですが、女性というフィルターを通すことなく、一政治家として、大統領候補として、正しく評価されなければいけないと思います。実はアルゼンチンには過去に2人の女性大統領がいて、現在の副大統領も女性なんです。

――雑誌版のコスモとウェブ版の違いは何ですか?

当初は雑誌のコンテンツを選りすぐってウェブに流用していました。しかし今では雑誌とウェブは別物であると捉えています。コスモの精神は共有していますが、雑誌とウェブとが競合するものではないんです。ライターや私自身は、どちらの媒体もまたいで記事を作っていますが、それぞれ違う情報を提供するようにしています。他の国のコスモポリタンの記事を厳選し翻訳記事にしつつ、オリジナルの記事も掲載しています。

――アルゼンチンのミレニアル世代が利用するSNSは何ですか?

インスタグラム、スナップチャット、Facebook、そしてTwitterの4つですね。他の国ではTwitterを使う人が減少していると聞きますが、アルゼンチンでは今でも人気があります。

――アルゼンチンの20代の人々について、他の国の読者が驚くようなことはありますか?

男性が指輪を差し出してプロポーズする習慣がないってことですかね。そもそもアルゼンチンでは、婚約自体をカジュアルなものと捉えているので、婚約指輪というものがないんです。指輪と言えば結婚指輪、結婚式で交換するものという認識ですね。それから最近では、結婚の誓いをお揃いのタトゥーで示す、なんてカップルもいるようです。

※この翻訳は、抄訳です。

Translation: Captain & Me, Inc.

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