いざ、性の世界を股にかけちゃう、セクシャル・コスモポリタンの旅!って、おっさんの売春ツアーちゃいますからねー。旅の始めはやっぱり「初・体・験」かしら。

そう、あれはまだお肌が水を弾いた高3男子の頃(今は染み込む染み込む)。最近のゲイはムラムラしたら、近場のオトコがずらりと並んで表示されるアプリを使って即出会いも可能だけど、当時はそんな便利なものはない時代。古典的に「お手紙」で知り合っていたのよ。

『薔薇族』という老舗ゲイ雑誌を、近所のうらぶれた本屋さんで発見して、ドキドキしながら、サンドイッチ状態でレジに持っていったわ。一般的にストレート青少年のエロ本サンドイッチといえば「エロい本を普通の本で挟んで、そ知らぬ顔でレジに置く」ことだったんだけど、アタシの場合は「ゲイ雑誌を、ノンケ(ストレート)のエロ本で挟む」という上級レベル。レジのおっさんも不可解な顔をしてたけど、当時は「ゲイであること」という背徳感が大きすぎたのよね。ゲイ雑誌にはグラビアと同じくらい重要なページとして「通信欄」コーナーがあって、全国のゲイが短い文章で自己アピールと希望の相手を書き連ねていたの。文字数制限があるもんだから、短縮表現文化も盛んで、たとえば「P大」は「ペニスが大きい」、「A可」は「アナルセックス受け身できます」って意味。間違えて「A大」って書いちゃったりして(どんな自慢よ)。

ゲイってことをそうそう言えない時代だけに住所をそのまま載せるなんてありえないわけで、手紙は編集部を経由する回送システム。載せたい人が手紙を編集部に送り、雑誌に掲載され、それを読んだ人が編集部にまた二重封筒を送り、内封筒だけがお相手に送られる、という、下手すると2カ月以上かかる、しち面倒くさい作業を介してたの。今じゃ1時間の既読スルーでもイラつくのに、よく2カ月も返事を待ってたと思うわよ。

そこに高3のアタシはあざとく「やっと18歳になったよ」なんて文章を載せて、けっこうな数の手紙をゲット。29歳のリーマンと名古屋でドライブすることになったの。今思うと、顔も話題も、割とどうでもいい方(失礼)だったけど、とにかく、他のゲイに飢えてたからね。「今日エッチなこともあるのかな」なんてドキドキしてたら、いつの間にか、車が竹林のほうへ…。そう、アタシは竹林の中でゲイ体験デビューをした、かぐや姫! まあ、お相手に一方的にンッガンンってオーラルしていただいただけのライトなものですけどね。あ、オーラルだけじゃ初体験とは言わないんじゃって? でもゲイの場合は、一生挿入しない人もけっこういるのよ。アタシはその1年後にはばんばんヤッてましたけどね。

やだ、娘みたいな世代の皆さんに、女装ゲイおじさんの四半世紀前の初体験を詳細に語るという、ほぼ嫌がらせみたいな記事になっちゃったわ…。今どきの若いゲイはSNSなんかでもっとライトに出会って経験してるんだろうけど、クラスや職場の異性が普通に候補になりやすいストレートと違って、同性愛者はまず「仲間を探す」作業が必要なのは今も変わらないかも。そのせいか、とくに男性ゲイのほうは、「出会った日のうちに即セックス」ってパターンも多いわね。みんなじゃないけど、一般的に男がしたがり、女が待たせるものだとすると、したがり同士の組み合わせだから、そうなっちゃうの(と自分の尻軽な過去を正当化)。

逆に言うと、女子は「いきなり許したらアバズレだと思われちゃう」みたいな駆け引きも含めて、意識的にブレーキをかけがちよね。もちろん、そもそも感情が自然に高まるまでその気にならないって生理的なものもあるし。でも、最近の「押しの弱い男子」たちが相手なら、ちょっとブレーキかけちゃうと、いつまで経っても発進しないってことも。まあアタシたち世代のオトコ性欲みたいな、見切り発車しまくり事故起きまくりもどうかと思うけど、あんまりもどかしいなら、女子のほうからアクセルふかすのもアリじゃない? アタシの知り合いにも「初体験」を大事に守り過ぎて、本人の見た目とキャラに初物感がまったく無くなってるのに処女ってコもいるし、ある程度の勢いって必要かも。んふふ。

HAVE A GOOD FLIGHT