腟前庭痛Vestibulodynia)」という病気を知っていますか? 聞いたことがない人がほとんどだと思いますが、実は多くの女性が苦しんでいる病気なのだそう。膣への挿入行為に激しい痛みを伴い、時にはセックスができないほどの痛みを感じることもあるようです。20~40代の女性の4~28%が患っていると言われているので、もしセックス時に痛みを感じる人がいたら、ぜひこのコスモポリタン イギリス版に掲載された記事を読んでみて。

腟前庭痛とは?

腟前庭痛は2種類ある外陰痛の1つで、膣の入り口付近または膣前庭に痛みを感じます。セックス中の挿入行為やタンポンの挿入だけでなく、きつめのジーンズなどによる圧迫なども痛みを引き起こす原因となります。

この病気はかつては腟前庭炎Vulvar vestibulitis)と呼ばれており、膣の表面に焼けるような痛み(灼熱感)を感じます。1980年代後半に診断基準が変わり、研究も進んでいます。特例もありますが、外陰部の神経の損傷、局部過敏症、イースト菌感染症、骨盤底筋の弱体化などが病因と言われています。

腟前庭痛による性交渉のトラブル

この病気に対する認知度を高めるため、オスロ(ノルウェー)の研究者チームが 患者8人を対象に調査研究を行っているそう。<Medical Express>によると、たった8人であっても、症状は各患者ごとにかなり異なり、体位によってはセックスが可能かつ快感を得られる人がいる一方で、セックスそのものが不可能な人もいるとのこと。

被験者の23歳の女性は「初めてのときから、常にセックス中に痛みを感じています」と語っています。「この病気の患者にはセックスライフなんてないも同然です。恋人に言ったところで『僕が君に苦痛を与えている』と思うだけなので、彼にも言いたくありません」

こうした性交渉を伴うパートナーとの関係についての問題は、この病気の患者女性たちの共通の悩みである、とオスロ&アケシュス応用科学大学のカレン・シュンネ・グローヴェン氏とグロ・キリ・ハウグスタ氏は指摘。「患者は自分の意志でセックスについて語ってくれました。誰にでも言えることではなく、患者にはため込んだ思いがたくさんあるのです」(グローヴェン氏)

患者女性の1人は、全く楽しめないにも関わらずセックスをしなくてはならないというプレッシャーから恋人と破局したと語り、別の女性は結婚して12年たつものの、全くセックスをしていません。実現可能な治療(筋肉弛緩訓練や手術など)はありますが、腟前庭痛についての認知度があまりに低いため、こうした治療が全ての女性に対して保証されているわけではないのが現状です。

膣前庭通の原因はストレス?

病気そのものがあまり知られていない状況も含め、この病気は「膣痙攣」というさらに稀な性交時に起こる症状に似ています。膣痙攣とは性交(または膣の内診)をしようとしているときに膣や膣の筋肉が突然硬直してしまう症状を指します。

しかし膣痙攣が性的暴行やレイプへの反応として起こることが多いのに対し、膣前庭痛研究の被験者グループには性的トラウマの過去を持つ女性はいなかった、と研究者チームは<Medical Express>に語っています。

「膣前庭痛患者と他の長期間持続する痛みに苦しんでいる患者を比較し、どちらに性的虐待経験者が多いのかは定かではありません。こうした(性的事例に関わる)ことを明らかにするのは大変難しいのです」とハウグスタ氏は述べています

膣前庭痛患者の女性はストレスの多い生活を送っている傾向があるとする過去の研究結果もありますが、最新の研究者たちはこの説に否定的です。

「20代の患者が、同世代の女の子よりストレスの多い人生を送っているかと言うと、そんなことはありません」とハウグスタ氏は語っています。「しかし彼女たちが『満たされていない』ことは確かでしょう。これも一種のストレスです。セックスができないことで、自分たちが『女性である』と感じられないのです。この事実を多かれ少なかれずっと考えているのですから、精神的ストレス持続的な痛みを助長している可能性はあります」

膣前庭痛についての情報を広めたい、そして女性たちに痛みのない楽しいセックスを経験してほしいとの思いから、ハウグスタ氏とグローヴェン氏の2人は研究結果を出版することを検討しています。

※この翻訳は、抄訳です。

Translation: 宮田華子

COSMOPOLITAN UK