元コスモポリタン アメリカ版エディターのマリア・グリッグが、自身の処女性について記事にしたのは4年前のこと。そんな彼女が先日、ついに初体験したときのエピソードを赤裸々に告白! 処女であった自分と人一倍向き合い、25歳で初めてセックスを体験した彼女の胸のうちを、コスモポリタン アメリカ版よりお届けします。

『私はこの人とセックスする』と、なぜかそんな気がしていました。

「当時23歳、大学を卒業してすぐの新卒採用で私はコスモポリタン編集長のアシスタントの仕事に就きました。セックスのためのアドバイス記事を書いたり、当時担当していたイケメン独身男性コンテストのためにセクシーな男の子をスカウトしたりする仕事に充実感を感じていました。ただ私には、1つだけ小さな気がかりがありました。それは、私のステキな同僚たち(もちろんセックスライフも絶賛満喫中)に、いつ私が"処女"であることがバレるか…ということ。

そんなある日、企画会議で編集者の1人に『誰か20代で無宗教のバージンを知らない?』と聞かれました。他の編集者はみんな、そんなの聞いたことがないとでも言うように、クスクス笑いました。現代を生きる女性が、特別な道徳的しがらみもないのにそれを我慢するわけがないじゃないか、と。

私はその編集者に、処女の友達がいるとメールを送りました。そのメールの最後に、『ちなみに、私もです。マリアより』と記して。

気づくと私は編集長に呼び出されていました。彼女はこう言いました。『最高じゃない! 他の記事は忘れて。代わりにあなたの話を一面に載せるわ! テレビに出るのは抵抗ある?』

私は、自分が処女であることを恥じてはいなかったので、記事の執筆を引き受けました。むしろ "バージン"という言葉のとりすましたイメージが大嫌いでした。自分自身がエッチなタイプだということは分かっていましたから。ただ、恋愛の進展が人より遅いだけだったんです。ファーストキスだって大学2年生のときでしたし。

表紙に"助けて! 私、コスモで働くバージンです"と打たれた、私のストーリーを載せた雑誌が店頭に並びました。記事中のタイトルの隣には、ピンクの男性用パジャマを着て、本に囲まれた白いベッドの上に控えめに座り、髪が風でなびく私の写真が丸1ページ分。写真の上には「セックス:みんなが知ってて、私がまだ知らないもの」というキャプションも。

世界中が私の秘密を知ってしまいました。大学時代ほとんど話したこともない知り合いから、コンビニでコスモを買っている写真が送られてきたりしました。ある日親とブランチをしていたら、突然男の人がやって来て、『この街で一番純潔な娘を持つのはどんな気持ちですか?』と親に尋ねてきました。見ず知らずの人たちから『強くて立派だ』と称賛されたり、『続編はいつ出るの?』と聞かれたりしました。

周囲におだてられた私は、気づくと自分の処女を『ワンナイトスタンドみたいな形で簡単には失いたくない』と思うようになっていました。『初体験なんて別にたいしたことないよ』と周りには言われてきたけれど、私は"物語"が欲しかったのです。ロマンチックなものでも、有意義なものでも、その他の形でも、ここまで待った甲斐があった!と思えるような、記憶に残る体験が。

しかし、これは恋愛に対するジレンマをもたらしました。私の曖昧な"いい物語になりそう"基準に満たない男性の家には決して行けず、時には『私、セックスしたことないから!』というセリフを挑戦状のように突きつけたこともあります。

そんな恋愛行き詰まり状態の私に関係なく、人生は容赦なく進み、私はその忙しさに呑み込まれ、早2年が経過していました。

その間、私は2度転職し、運動嫌いを克服しようとランニングも始めました。そして25歳の誕生月の5月に、インスタンブールへ旅行し、あちこち歩き回ったり、友達と屋上カフェでお茶したり、青いタイル張りのモスクを訪れたりしました。その旅は、私に視野を広げることを教えてくれて、生まれて初めて自分自身のありのままの姿に満足することができました。私は常に自分に自信を与えてくれる選択をしながら、人生を充実して生きてきたのだ、と。そして、セックス未経験である自分への執着心に苛まれていた過去の自分が、笑ってしまうほど無意味に感じられました。

そんなとき、ある男性に出会いました。『私はこの人とセックスする』と、なぜかそんな気がしていました。

共通の知り合いのブランチの集まりで、初めてルーカスを紹介されました。彼はボストン在住の30歳、医大生で、私と同じようにデートブログを書いていました。彼の書き物を見た限り、私たちが真剣交際に発展しないことは一目瞭然でした。私のどんよりした艶のないデートを記したブログに対して、彼のブログはひたすらロマンチックでした。いわゆる"恋愛している自分が大好き"な彼は、女性の髪に太陽の光が反射する輝きを描いたり、雨に打たれながらボン・イヴェールの曲を爆音で流して自転車に乗って帰ったりするような人でした。

そんなルーカスと一度しか会っていないにも関わらず、あるとき『用事があって市内に来たから一晩泊まらせて欲しい』と頼まれた私は、あっさり承諾していました。

彼のことをほとんど知りませんでしたが、なぜだか彼ならば、私がこれまで処女を守ってきたことをリスペクトしてくれるような気がしました。ついでに、彼はニューヨークに住んでいなかったので、万一上手くいかなかったらもう会わなくて済むだろうというのも安心材料でした。

彼が来る前日、私は念のためブラジリアンワックスをしました。

ルーカスは車で私を職場まで迎えに来てくれました。車の中で、彼のCDコレクションを物色したり、新しい仕事について話したりしました。彼はたいして口を開かず、沈黙を埋めようと必死になる私をただ笑顔で見守っていました。

私のアパートはひどい状態でした。白いゴミ袋がそこら中に放置され、俳優兼ウエイトレスのルームメイトは、彼氏とケンカ中らしく、リビングでタバコを吸いながらレディー・ガガを恐ろしいほどの爆音で流していました」

状況は完璧からはほど遠いものでした。でも、ふと私は考えました…"完璧なとき"って一体いつなんだろうと。

「私はパジャマに着替え、平静を装おうとしました。部屋に入り、電気を消すと、彼の方に向き直りました。彼はいい匂いがして、それを伝えると、私たちはキスし始め、ベッドへと移動しました。すでに深夜1時を過ぎていて、私はヘトヘトに疲れていましたが、決心はついていました。

彼が下着を脱がそうと手を伸ばしたとき、私のコスモ脳が動き始めました。コンドームだ! コンドームを着けなきゃ! それから、彼に"例のこと"を伝えなきゃと思いました。

『待って。話しておかなきゃいけないことがあるの…。私、実は初めてなの』

彼は一瞬手を止めると、ベッドの上にごろんと横になりました。

しばらく沈黙した後、『じゃあ僕からも話しておかなきゃいけないことがあるよ』と彼が口を開きました。『26歳のとき、自転車でアメリカ横断の旅をして、そのときアソコの神経を傷めてしまったんだ。君と一緒にしたいけど、僕にとって簡単なことではないんだ』

暗がりの中で、ルーカスに私の表情が見えないことにほっとしました。

またしても一瞬の沈黙の後、彼は私の方を見て言いました。『で…どうする?』

状況は完璧からはほど遠いものでした。目の前には生真面目過ぎる男、家中には白いゴミ袋、隣の部屋には『バッド・ロマンス』を爆音で大熱唱するルームメイト。でも、ふと私は考えました…"完璧なとき"って一体いつなんだろうと。そもそもそんなものは存在するのか? この人と一緒にいて居心地がいいと感じるならば、それだけで十分じゃないの?

私は引き出しを開け、どこかのコーヒーショップで配っていたNY州政府のロゴ付きコンドームを取り出し、『やりましょう』と言いました。

若干の痛みはありました。私には名前も分からない色々な体位を試したりしました。彼は終始優しかったですが、一度だけあまりに激しく突かれ過ぎて、私はベッドから落ちてしまいました。私の脳内は"私、今セックスしてる! これが女になるってことね!"なんて思いでいっぱいになるかと思いきや、不思議とすごく冷静でした。ルーカスにはどことなく寂しさが漂っていて、それを感じ取ると、私の不安なんか取るに足らないことのような気がしました。そのうち朝焼けの光が室内に差し込んできて、彼はバイアグラを半分飲んで、果てました。

それから、私は彼の体の隙間にすっぽりくるまりました。彼は『いいブログが書けそうじゃない?』と冗談を言いました。

それから数日間、友達についに体験したと話すと、みんな『何か心境の変化はあった?』と聞きたがりました」

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「何年間もセックスを経験する日とその相手を待ち望んできたわけですが、結果として行為自体に特別なものは感じませんでした。今までもっと親密なことを男の人としてきましたし。それでも、ルーカスには感謝しています。彼が秘密を告白してくれたことで、私は1人ぼっちじゃないと思えたから。

私は今27歳です。おもしろいことに、昔と比べてさほどセックスライフは変わっていません。

ルーカスの後に2人の男性と寝ましたが、いずれも真剣なものではありませんでした。世の中には、一度体験したらそれからはもうやりまくり!なんていう間違った概念が広がっているように感じます。気楽な『セックス・イン・ザ・シティ』的なのもいいけど、実際は、そこまで経験のない私にとって、やはり恋愛は依然としてストレス要因となっています。ほとんどの男性は、私くらいの年頃の女性は自分が必要なものを知っているべきだと思っているようです。でも私自身は、それを知るために、1人の人と長い時間をかけて一緒に見出していきたいと思っています。

初体験を経て私が気づいたのは、これからどんなにブログ受けする"物語"を体験しようと、私はきっとテレビで見るような"やったら終了"的なタイプにはならないだろうということ。今でも私は自分のタイムラインに自分の"物語"を綴りながら、男性に、そして自分自身に、何を求めているのかを探している最中です。

それはきっと、処女も処女じゃない人も、共通して感じることなんだろうと思います」

この翻訳は、抄訳です。

Translation: 名和友梨香

COSMOPOLITAN US