ベッドで恋人と良いムードになったり触れ合いながら快感を感じたりすれば自然と腟が「濡れて」くるのが当たり前だと思いがちだけど、気持ちは高まっているのに「濡れない」という経験をしたことがある人は少なくないみたい。

セックスの際に性器が十分に濡れないと、挿入時に痛みが生じるせいで行為を楽しめなかったり、パートナーとお互いにプレッシャーを感じたりしてしまうケースもあるでしょう。

本記事では、「濡れない」原因や対処法について、産婦人科医の富坂美織先生に伺いました。


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「濡れる」とは

そもそも「濡れる」とは、どのような現象なのでしょうか?

富坂先生によると、「濡れる」とは、性的興奮に伴って壁周辺に血流が増し、腟内が体液で潤うことを一般的に指すそう。しかし、その日の体調や生理周期、ストレスレベルなどに大きく影響を受けることも。

「更年期などでエストロゲンが低下すると、腟内は乾燥しやすくなります。また、性交時の心理的な緊張やストレスで筋肉が収縮して体がこわばり、さらに分泌液が減ることで、痛みを感じやすくなることもあるんです」
 
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「濡れない」原因と対処法

一般的に、性的に興奮することによって「濡れる」とのことだけど、自分では気持ちが高まっているつもりでも思うように濡れなかった経験がある人も少なくないはず。

では、腟が「濡れない」原因として一体どんなことが考えられるのでしょうか? 対処法とあわせて富坂先生に聞きました。

「濡れない」原因

心理的要因

濡れない原因が心理的なものによる場合は、いくつかの要因が複合的に作用して症状を引き起こしている可能性があるそう。たとえば、以下のような状態が分泌液の量に影響を及ぼすのだとか。

  1. パートナーに気をつかっているために感じる、「気持ちよくならないといけない」というプレッシャー
  2. 緊張
  3. 自分の体への恥ずかしさ
  4. 不安や恐怖
  5. 過剰なストレス、忙しさ
  6. パートナーとの信頼関係

対処法・アドバイス

「濡れないことで悩んでいる場合は、セルフプレジャーを通して自分の心と体や性的欲求をよく理解することも効果的です」と、富坂先生。

「最近では、婦人科や泌尿器科などの性機能外来に相談することもできます」
「また、ムードづくりが性的快感や濡れることに大きく影響すると言われているので、できるだけリラックスしてみてください。意外とこのような問題も、パートナーとの関係性の延長線上にあったりするので、日頃のコミュニケーションが大切です」

「パートナーとのすれ違いが原因の場合は、カップルセラピーなども選択肢に入れておくと良い」とのこと。

また、日中の過剰なストレスや忙しさも要因の一つ。「普段からストレスを抱え込まず、十分な睡眠をとることも大切」だと言います。

 
Randi Linford / EyeEm//Getty Images

身体的要因

更年期などでエストロゲンが低下してくると、腟内乾燥を引き起こすことも。

対処法・アドバイス

「腟内乾燥が気になる場合には、多くのクリニックやドラッグストアなどで取り扱いのある潤滑ゼリーで潤いを補ってもよいでしょう」と、先生。

「病院に相談し、女性ホルモン配合の腟座薬を使用するのも効果的です」

潤滑ゼリーと似たアイテムとしてアダルトローションを思い浮かべる人もいるかも。ただし、ローションは肌の上で楽しむコミュケーションツール。潤い不足には潤滑ゼリーを活用しましょう。

その他の要因

以下のようなことでも腟内乾燥が起こってしまうんだとか。

  • 洗浄剤の使いすぎ、洗いすぎ

対処法・アドバイス

富坂先生は「日頃から石けんなどの洗浄剤の使いすぎや洗いすぎに気をつけましょう」とアドバイスします。たとえば、強く擦ったり、ゴシゴシ洗ったりするのはNGとのこと。

「肌の状態や体質によって個人差はありますが、洗浄剤は低刺激性のものがおすすめです。デリケートゾーン専用のものを選ぶのも良いでしょう」

さらに、ビデやウォシュレットの使いすぎを避け、ウォシュレットを使う際はノズルをこまめに掃除するのも大切です。

 
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  • 薬の副作用

「海外では、抗ヒスタミン剤を含む花粉症の薬や風邪薬などが、腟内乾燥の原因になる可能性があると報告されています」と、先生。

対処法・アドバイス

この場合、まずは処方医に相談を。

「潤滑ゼリーなどを活用し、外から補うこともできるでしょう」

「濡れにくくなっている」サイン

もしかしたら、自分が濡れにくくなっていることに気がついていない人もいるかもしれません。そこで、「濡れにくくなっている」ことに気がつけるサインを富坂先生に教えてもらいました。

  • 挿入時に痛みを感じやすい
  • 性交時に出血しやすい
  • 性器が傷つきやすい

こんなときは病院を受診して

「性交時に出血しやすい場合は、子宮頸がんなど他の原因が隠れていることもあるので、必ず病院を受診しましょう」
 
zhengshun tang//Getty Images

今回お話を伺ったのは…

産婦人科医 富坂美織先生

 
冨坂美織医師
産婦人科医、医学博士。不妊治療を専門とし、テレビや雑誌など、幅広いメディアで活躍中。さくらウィメンズクリニック勤務の他、順天堂大学医学部産婦人科教室非常勤講師も務める。著書に『2人で知っておきたい 妊娠・出産・不妊のリアル』(ダイヤモンド社)など。