近年よく耳にする、「ポリアモリー(複数恋愛)」や「オープンリレーションシップ」といった言葉。
一方で、「ポリアモリーとオープンリレーションシップの違いは?」と聞かれて、即答できる人は少ないかもしれません。どちらも「複数の人と付き合うこと」ではあるものの、そこには明確な違いがあるのです。
そこで本記事では、ポリアモリーの定義とよくある誤解について専門家の知見をもとに解説します。
【INDEX】
ポリアモリーとは?
ポリアモリスト(複数恋愛主義者)と家族との関係を専門に研究しているエリザベス・シェフ博士によると、ポリアモリーとは、複数のパートナーたちと互いの合意のもとで交際し、精神的にも強いつながりを築いている関係を指すとのこと。
また、複数の交際を同時に進行した場合、「本命」「二番手」などの序列が存在することも多いんだそう。ポリアモリーの情報共有サイト<ポリアモリー・ソサエティ>では、本命と二番手の違いについて以下のように定義されています。
- 本命:
一緒に過ごす時間の長さや相手に対する想いなど、生活のすべてにおいてもっとも優先順位が高く、誰よりも親密な関係を築いている人物
- 二番手:
共有する時間、関係の重要度、そして気づかいなどが、本命に比べて少ない相手
「ポリアモリー」と言っても、その形態は様々。たとえば2組の夫婦(異性愛者同士の男女カップル)がときどき配偶者を交換(男女の組み合わせでスワップし、同性同士ではない)したり、親しい友人関係の人たちで構成されたグループ間で、本命以外の相手同士が付き合ったりすることもあるんだそう。
オープンリレーションシップとの違い
複数恋愛についてコーチングを行っている<ポリー・コーチ>によると、オープンリレーションシップの場合、必ず恋人たちの間に優先順位(序列)が存在するものの、ポリアモリーの場合、これは必須ではないのだとか。
つまり、3人と同時に付き合っている場合、ポリアモリー的な恋愛であれば3人を同じように愛する(要するにとりたてて本命はいない)こともあるけど、オープンリレーションシップの場合は3人の中に必ず本命がいて、本命を中心に生活しつつも他の人とも付き合うというスタンスということ。
ポリアモリーに対するよくある誤解や偏見
まだ社会的にポリアモリーへの理解が進んでいないことから、誤った認識を持っている人がいるのが事実。
その典型的な例として挙げられるのが、複数人と関係を持つのは“浮気”になってしまうのではないかという誤解や、「パートナーへの愛情や、コミットメントに欠けている」「セックス依存症なのではないか」という偏見。
ここからは、ポリアモリーの教育者であり、ブログ<ポリーフィラ>の創設者であるリアン・ヤウ先生が解説する、ポリアモリーにまつわる誤解と正しい知識を<プリベンション>からご紹介します。
合意を得ていれば浮気ではない
「たしかに、もし一人でも合意を得られていない場合、それは浮気になってしまうのかもしれまん」と、ヤウ先生。しかし、ポリアモリストはお互い同意のうえで、複数人との関係を築いているというのが大きなポイントとのこと。
コミットメントの仕方は人それぞれ
続けて、「パートナーへの愛情や、コミットメントに欠けている」という偏見に対して、ヤウ先生は次のように解説しました。
「モノガミー(一人とじっくり付き合う恋愛)と同じように、ポリアモリストたちの関係も成長し、ときには別々の道へ進み、時の試練に耐えています」
「(ポリアモリストである)私にとってコミットメントとは、不干渉な関係ではなく、むしろその逆で、相手を認めて、受け入れることを指します」
性行為よりも感情的な繋がりを重視
ポリアモリストはセックス依存症でも、性的探求が目的でもあるとも限りません。
「正直なところ、ポリアモリストは性的な行為よりも、お互いの関係について会話をすることに時間を使うケースが多いですね。つまり、性行為よりも感情的なつながりを大事にしている人が多い印象です」と、ヤウ先生。
ポリアモリーの愛のカタチ
ヤウ先生によると、ポリアモリーの愛のカタチは様々で、大きく分けると下記の4つのカテゴリーに分類できるとのこと。
ヒエアルキカル・ポリアモリー
ヒエアルキカルポリアモリーとは、基本的には一人のパートナーを最優先しながら、複数人と関係を持つこと。
ヤウ先生によると、最優先すべきパートナーとの間には基本的なルールや制限がもうけられている場合が多く、お互いに外で恋愛を自由に楽しむことができるものの、その関係はどこまで進めていいのか、境界線を決めておく人もいるそう。
ノンヒエアルキカル・ポリアモリー
ヒエアルキカルポリアモリーのように特別なパートナーがいるわけではないけれど、それぞれの人とどんな関係を築きたいのか、話し合いで決めている関係のこと。
ヤウ先生によると、ポリアモリストの多くがこのスタイルを実践しているよう。
「どんな関係を築きたいのか、誰もが声を挙げる権利を持っています」
ポリフィデリティ
ポリフィデリティとは、複数の人と忠誠心を持って付き合うこと。
たとえば愛情もあり、性的関係もある複数の人たちで構成される4人グループがいるとして、このグループ内であればどんなカップリングでセックスしてもOK。でもグループ外の人との恋愛や性的関係はNG、という関係を指すのだそう。
ポリアフェクティヴィティ
ポリアフェクティヴィティとは、「複数の人たちが1人の恋人をシェアし、その(恋人をシェアしている)人たちとはお互い恋人同士ではないものの、特別な感情で結ばれているという、その愛情にも似た気持ちを指す」と、この言葉を作ったシェフ博士は説明します。
「恋人(男性)が二人いる女性(一人)がいたとします。この男性たちは同じ恋人を共有することで互いに親近感を持っていますが、恋人同士ではありません。これはもっとも一般的なポリアフェクティヴィティ的関係と言えるでしょう」
前向きにポリアモリーを実践するための10のステップ
もしポリアモリーに興味があるのなら、セックスハウツー本『アーバン・タントラ』の著者であり、セックス・コーチングを行っているバーバラ・カレーラスさんが作成した「前向きにポリアモリーを実践するための10のステップ」をチェックしてみて。
ステップに沿って1歩ずつ進むことで、あなたがポリアモリーに適性があるかどうかを確認することもできるはず。
- 交際にまつわるルールを定義する
どの相手とも同じ条件で交際することで、平等かつ同じ立場で付き合うことが可能に。 - 自分自身にも交際相手にも正直に行動する
隠し事をしたり嘘をついたりすることはルール違反です。意識の高いポリアモリストがすべきことではありません。 - 踏みこんでほしくない境界線やルールをあらかじめ伝え、相手に同意してもらう
短期的な展望で考えるのがベター。実際に付き合ってみると、半年後にはほとんどのルールを改定したくなる可能性も。でも1度決めたら、改定するまではきちんと守ること。 - あせらずゆっくりスタートする
楽しみながら、新しい恋愛に順応できるかをじっくり確かめて。 - 安全なセックスを心がける
- 自分自身の成長に繋がる場合もあることを知る
ポリアモリーを実践することは、自己発見のプロセスでもあるのです。何もかもが最初からうまくいくなんてことはありえません。もし「しっくりこない」「不快に感じる」ことがあるなら、7に進み自問してみて。 - 現状を把握し、問題があるならその原因を考えてみる
これはポリアモリーであってもモノガミーでも同じこと。自分に必要なこと、相手に理解してほしいことをハッキリと伝えるべき。 - すべてをクリアにして物事を進める
交際相手同士が競争することがないように、各交際相手を紹介しあいましょう。面識ができることで、妄想が膨らみ過ぎることや、無駄な競争も避けられます。 - 自己中心的にならない
交際相手全員にとっての最適な選択をいつも優先することが大切。あなただけがハッピーでも、みんなが幸せでなければうまくはいかないものだから。 - いつやめてもOK!
すべてはあなた次第で、これがもっとも大切なことだと語るカレーラスさん。ルールがうまく機能しないならいつでも交渉は可能だし、交際をやめることもあなたの自由です。
※この翻訳は抄訳です。
Translation: 宮田華子、YUUMI IKEUCHI