「性」はいつの時代においても複雑なテーマ。しかしここ数年、これまで以上に性の多様化が広まっていると感じる人も多いのでは? バイセクシャルであることをオープンに語っているクリスティン・スチュワートやカーラ・デルヴィーニュ、好意を持つ対象をどちらかの性に定めない"セクシャルフルイディティ(性的流動性)"を告白したリリー=ローズ・デップなど、性の多様性を後押しするセレブの影響も大きいのかも。

自身もセクシャルフルイディティだと語るライター兼作家のケイティ・ヒーニーさんによる、「性の多様性」についての記事をコスモポリタン アメリカ版から。ケイティさん本人の告白と、セクシャルマイノリティ&フルイディティ当事者たちの体験を交え、現代の性の在り方を分かりやすく解説しています。

"ごく普通のストレート女子"の私がなぜ女性に興味を持ち始めたのか…と自分でも不思議です。

「『セクシャルフルイディティを公言する人が増えている背景には、多様化する性を受け入れることを明言している多くのセレブリティの影響があるでしょう』と性別および性の研究者であるジェーン・ワード博士(カリフォルニア大学リバーサイド校准教授)が語るように、数年前には想像できなかったほど、今は"多様化した性"について語られるようになりました。性的指向を変えた女性たちの話を聞く機会も増えましたが、実は私自身もそんな女性の1人であり、セクシャルフルイディティなんです」

性的指向の変化

「物心ついて以来、自分はストレートだと思って生きてきました。思春期には男の子に一目ぼれし、俳優のチャニング・テイタムのファンでした。毎朝立ち寄るコーヒーショップのイケメン店員とちょっといい感じになったりした経験も。そんな"ごく普通のストレート女子"の私がなぜ女性に興味を持ち始めたのか…と自分でも不思議です。特別なきっかけなんてありませんでした。

でも28歳のときには、すでに自分が女性にも興味があることを自覚していました。レズビアン専用のデートサイトに登録し、女性との出会いを探し始めたんです。オンラインデートを始めて3週間もたたないうちに、現在の恋人と出会い『自分は"たぶん"ゲイ(同性愛者)なの』とカミングアウトすることに。でも私の中で『自分を"ゲイ"だと思うこと』と『男性を好きになるのをやめること』は別のものでした。だからと言って自分が"バイセクシャル"かというと、それにも違和感を感じたんです。

私のように性的指向に"グレーゾーン"がある人を指す言葉が、"セクシャルフルイディティ"です。『基本的には男性(または女性)が好きだけど、生涯に12回だけ女性(または男性)に魅かれることもある』という人もいれば、『好意を持つ対象の性が頻繁に入れ替わる』という人もいます。研究によると、後者は女性に多いと言われているとのこと。進化生物学的見地から『女性にセクシャルフルイディティが多いのは、一夫多妻制の場合、他の妻との軋轢を減らす効果があるから』という意見もあるものの、『セクシャルフルイディティになる理由は社会的、文化的要因が大きい』と考える専門家もいるんだとか。

生物学的起源がどうであれ、現在セクシャルフルイディティが一般的になりつつあるのは確かと言えるでしょう。19952005年にかけて行われた調査によると、『性的指向(どの性別の人を性的対象とするか)を"バイセクシャル""レズビアン""ストレート""アンレーベル(分からない)"の中で少なくとも1度は変えたことがある』と答えた被験者女性は2/3にものぼったそうです」

気づき方は人それぞれ

「上記の結果は『女性なら誰しもレズビアン的感情を持っている』ということではなく、女性の"性"の複雑さを示唆しているのでしょう。女性が女性に興味を持ったときの反応は人それぞれ異なります。例えばタイラーさん(23歳、ベビーシッター&ライター)は『自分がゲイだなんて、考えたこともなかったんです。奇妙な気持ちでしたし、"ホントなの!?"と懐疑的にさえなりました』と語っています。

しかしアマンダさん(32歳、慈善団体勤務)は、初めて女性と交際しはじめたとき『もともとレズビアンだったのかどうかは分からないけど、女性と付き合うことがこんなに楽だなんて!』と思ったんだそう。

このように、人によって性的指向の気づき方、感じ方はさまざまですし、自身をセクシャルフルイディティと認知することで心が解放される人もいます。また固定観念を打ち破り、自分自身を見つめなおすきっかけになる場合もあるようです。エリンさん(33歳、レポーター)は『女性と付き合ったことで、自分自身の男性的な部分に気づきました。今ではそんな自分の性格を楽しんでいます』と言っています。

しかしセクシャルフルイディティの女性がセックスなどの性行為をすることを怖がり、気持ちを封じ込めてしまう場合もあります。一方、考えた上で性行為に踏み切ったことを『大きなご褒美だった』と語る女性もいます。クリスさん(32歳、デザイナー)は『(セックスをしたところで)ヒドイ結果に終わったらどうしようと心配したのですが。実際にはそんなことはありませんでした。男性とのセックスと同じです』と、自身の経験について語ってくれました」

人びとの認識を変えるために

「『へテロセクシャル(異性同士)の恋愛だけが唯一の選択肢』と思って生きてきた人たちにとって、セクシャルフルイディティはまさに"ありえないこと"なのでしょう。しかし世の中の見方は確実に変化しています。アメリカに住む1824歳の女性のうち10%が『自分の性的指向はストレートではない』と認識し、23%が『1つの性別だけに魅力を感じるわけではない』と答えた、という調査データもあるほど。

『複雑な性についてオープンに語る人たちに会い、自分自身の性について気づくことができました』とセラーズさん(26歳、事務職)が語るように、セクシャルフルイディティの人たちが声をあげることで、より認知度が高まり、社会に浸透していくはずです。トランプ政権下において女性の権利やLGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィア)の権利が危ぶまれている現在、これはとても大切なことだと思います」

参考:セクシャルアイデンティティ用語集

「自分の性別や性的指向を定義することを嫌がる人もいますが、逆に自分の性を社会的に認識されることを望む人もいます。下記はLGBTQと若者の自殺防止を目的としたNPO法人<トレバー・プロジェクト>がまとめた一般的な性的指向関連用語と、その解説です。

ゲイ:同性に好意を抱く人(女性が女性を好きになる場合、"レズビアン"という呼び方を好む人もいる)。

バイセクシャル男女両方、もしくは1つ以上の性別の人に好意を抱く人

シスジェンダー:生まれたときに診断された性別を自分の性としている人(例:女児として生まれ、女性として生きる人)。

ジェンダークィア"女性""男性"だけでは表現できない性別を表す言葉。

クィア:ストレートでもシスジェンダーでもない人を含めた、幅広い意味を持つ言葉。ポジティブな意味で使用されることが多い。

ノンバイナリ―:自分を"男性"か"女性"のどちらかに分類しない(できない)人。

注:『まったく同じ人間は誰ひとり存在しません』と<トレバー・プロジェクト>の臨床ディレクターを務めるアシュビー・ドッジさんが説明するように、この定義に当てはまらない人たちもたくさんいます。この点を頭に入れた上で、参考にしてください」

この翻訳は、抄訳です。

Translation: 宮田華子

COSMOPOLITAN US