ついに高校時代の記憶から、自分の押し殺してきた「鍵」を見つけた筆者。高校で"性的対象=女性"という道を選び、ひたひたと歩んできたのだった。30 歳を前にして、「この道でいいのか」を明らかにする時が来たに違いない。

気づいたからには、一度試さなければなるまい…。しかし、知り合いと関係を持つのなんて論外。かといって、"二丁目"に1人突撃する勇気は全くない。そんな勇気があったら30手前までこんな悩みを抱えているわけがないのである。しかも、ゲイの聖地とはいえ、あの雰囲気のなかに飛び込み、なにかコトに及ぶことがあったら…なんというかトラウマすぎる。

落ち着いた状態でじっくり相手を選べる方法はないものだろうか? 頼りにしているゲイの友人・A氏に協力を仰いでも良かったが、今回ばかりは独り立ちの意味でも自力で探ってみることにした。ネットの掲示版、チャット…色々と探して辿り着いたのが、「Grinder」というゲイ専門のマッチングアプリ。邦訳すれば"研磨機"。禍々しい名称だが、知り合いにバレることなく、かつ、相手を選べるとあればこんなに便利なものはない。これを思えば、一昔前の同性愛者の相手探しのなんと難しかったことよ。

ダウンロードしてみると、指一本で扉の向こうの世界が華開いた―― GPS機能を用いて、近くにいる相手とマッチングするサービスなのだが、スマートフォンの現在位置をONにすると、日本人から外国人まで半裸の男性たちの画像が所狭しと並んでいた。

「...こりゃあスゴい」

考えるともなく、声が出た。男子校出身ではあるが、自分に向けて(カメラに向けてだけど)セックスアピールしてくる男性たちを見るのは初めて。ちなみに、一般的な出会い系アプリにありがちなモザイクや、遠景写真はほとんどない。ほぼ全て顔がばっちり写った近接撮影だ。そのため、迫力が段違いなのである。

…正直なところ、これには結構参った。金槌で殴られたように、ガツンと衝撃があった。とはいえ、ここで怖じ気づいては、目的を果たすことはできぬ。「頑張れ!負けるな!」自分にそう言い聞かせつつ、スクロールすると、ふと目がとまる男性がいた。

高校時代の友人Bの面影のある男性だった。

「この人なら、イヤではないかも...」

ドキドキしながらメッセージを送ってみる。初めて女の子を誘った時と同じような(いや、それよりも大きな?)高揚感が胸を締め付ける…。

相手がいる話なので、やり取りは割愛するが、結局彼と会うことに。実はこの時、失礼にならないよう「自分のセクシャリティに自信が持てないから、コトに及ぶかわからない。それでもいいか?」と事前承諾を取ってはいたが…。

繁華街で彼を待ち合わせ。新しい扉は果たして開くのだろうか?鼓動がイヤに鳴り響き、息苦しさで胸が詰まる思いだった。

続く。

※第5回は5月24日リリース

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