90年代に一世を風靡した『セックス&ザ・シティ』は、女子が抵抗なく「セックス」という言葉を口にできるようになったきっかけとなった記念碑的作品です。作家たちが様々な取材から集めたNYのセックス事情が、日本の女子たちに与えた衝撃&笑撃は計り知れません。今回の短期連載は、その『セックス&ザ・シティ』の4人のヒロインたち、それぞれのタイプ別に、なぜか寄ってくる「笑っちゃイカンが笑っちゃう、独特の趣味のセックス」をプレイバック。初回の今回、まずは主人公のセックスコラムニスト、【キャリー・ブラッドショー編】からいってみたいと思います。

そのプレイは"ゴールデン・シャワー"というらしい

シリーズをご覧になっている方はもうご存知かと思いますが、登場する4人の女子の中では実はもっとも普通なキャリー。その恋愛を含む肉体関係は、後に結婚することになるミスター・ビッグを筆頭に、婚約までこぎつけたエイダン、キャリーに怖気づいて逃げ出したバーガー、最終回に向けてご祝儀的に登場するビッグネーム、ミハエル・バリシニコフ(世界的なバレエダンサー)演じるアレクサンドルら、5~6エピソードからシーズンまたぎの長期的なものが中心。4人の女子トークの場面でこそ過激な言葉も飛び出しますが、次々と新たな相手とデートしちゃ関係を持つというタイプではないように思います。

とはいうもののその合間合間には、一風変わったセックスを求めて来る男もいないわけではありません。個人的に最も強烈だったのはシーズン3で登場する政治家ビル・ケリーです。「政界のプリンス」と呼ばれる彼は、チャーミングで理知的、政治家らしい押しの強さで猛アタックの末にキャリーと関係を持つのですが、ある時こんなお願いをしてきてキャリーをドン引きさせます。

「一緒にシャワーを浴びたい。お互いの身体をきれいにしたら、その後にオシッコをかけて」

ドラマの中でも屈指のぶっとびリクエストに、凍り付いたキャリーの顔が爆笑です。

これを聞いたミランダ曰く「オシッコだけじゃ絶対にすまない。エスカレートするわよ」。

サマンサ曰く「権力を持った男にありがちなマゾ嗜好ね」。

ここで「そんなことできない」「やりたくない」と拒絶せず、かといって「愛しているからやるわ!」ともならない、もわもわとお茶を濁しながら関係を続けるのがキャリーです。でもある日のセックスの後、「一緒にシャワーを浴びよう」と追い込まれたキャリーは、「あなたが目をつぶり、私がお茶をかけるっていうのは?」と、相手からしたら冗談みたいに興ざめな提案をし、結局捨てられてしまいます。捨ててくれてありがとう、だとは思いますが。

ジェントルマンな政界のプリンスは、権力者にありがちなマゾ系性癖の持ち主pinterest
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この例を言うに及ばず、キャリーの場合、心の不均衡がセックスに直結している人に魅かれてしまうことが多いように思います。

例えば道端でのちょっとしたトラブルから知り合った、断酒会に通うパトリックは、アルコールの代わりにキャリーとのセックスにハマり、朝から晩までセックスを求め始めます。またセックスに異常にオープンな家庭(それも強い女だらけ)で育った人気作家のボーンは、セックスに対する嫌悪感と羞恥、それでも抑えきれない性欲の狭間でさいなまれ、いつもセックスに至る前に果ててしまうという、悲しいほどの早漏です。セラピーで出会ったセスは、一度寝た女に興味を失ってしまう男だったし、キャリー史上最高のオーガズムを与えたジャズクラブのオーナー、レイは、注意欠陥障害でした。さらに彼女の運命の人、ミスター・ビッグとのセックスも、実のところ結婚中のビッグが「妻とはうまくいってない」と最も病んでいた時の不倫関係において、最高潮の盛り上がりを見せます。

彼女が心身共にもっとも幸せだったのは、間違いなく家具職人エイダンと付き合っていた時代なのですが、そうした静かな幸せの時ほど、何かしら難癖つけて不安を抱え込み自ら幸せ画をぶち壊してしまい、むしろ不安要素が発覚した男とはどうにか前向きにやって行こうとする、キャリーは何とも不思議な女なのですが――意外といるんですよねえ、こういう人。心当たりのある方、バランスを欠いた男にお気を付け下さいませ。