英国とジュエリーの深い関係

イギリス旅行の初心者から上級者に至るまで、イギリスで宝石学を学んだ私は必ず「ジュエリーを観に行くといいよ!」と薦めています。

欧州の中でも長い歴史を誇り、繁栄し続けてきたイギリスは、ジュエリーに関しても世界屈指のコレクションを有しています。というのも、欧州列強各国が支配力を争っていた時代、今よりも更に希少価値が高く、美しさをもって人々を圧倒したジュエリーは、その国の富と権力を表していたためです。

例えば「世界一大きなダイヤモンド」の話を聞いたことはありませんか?

「カリナンⅠ」という530.20カラットのダイヤモンド、これは英国王室が式典の際に用いる王笏(君主が持つ象徴的かつ装飾的な杖)にあしらわれているものです。(※1

これがロンドンの観光名所「ロンドン塔」で観光客でも見ることができるんです。ロンドン塔に"牢獄"というイメージを持っている方もいると思いますが、同じ敷地内に英国王室所有のジュエリー「クラウン・ジュエルズ」を保管する「ジュエルハウス」という建物に収められています。

ほかにもエリザベス女王が先日の即位60周年にも身に着けられた帝国王冠や、映画で見るような王室に古くから伝わる黄金の宝珠(手で持つことで支配権を表す、十字架が上についた球体)などの宝石までもが、目で見て楽しむことができます。

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(1953年の戴冠式で、英国王冠、十字架飾りの王笏と宝珠を携えたエリザベス二世女王)

とはいえ「それだけなら、他の国でも素敵な宝石はあるし……ケースの中で観るだけなのでは?」と思ってしまう人も多いかもしれません。

確かに、他の国でもジュエリーの展示はありますが、英国・ロンドンの素晴らしいところはその凝縮された内容の濃さにあります。先に挙げた「ジュエルハウス」に加え、ロンドンの街を12日巡るだけでも、「良質で貴重な宝石たち」をたくさん直に目にすることができます

多彩なジュエリーを展示する博物館では、歴史的なストーリーを合わせつつ、それらを身に着けていた当時の人々に思いを馳せることができるようなアンティークなジュエリーの展示から、希少な宝石を鉱物学的な見地から解説する展示まであります。

また、ボンド・ストリートに代表される高級ショッピング街では、宝石店のショーウインドーを覗くだけでも、日本ではなかなかお目にかかれないような大粒の宝石が輝いています。最先端の洗練されたデザインと、歴史に裏付けられた重厚さを秘めたジュエリーたちのきらめきや美しさに魅了されるはずです。

セカンドハンドの本場!

さすがに、博物館や高級宝石店の宝石には、手が届かないかもしれませんが、「アンティークマーケット」や、時にニュースを賑わす「サザビーズ」や「クリスティーズ」といったオークション会社の名前を見たことはありませんか? ロンドンは「セカンドハンド市場」としても歴史ある本場なのです。

アンティーク市場では、高額ではなくとも、日本ではなかなかお目にかかれないお気に入りのジュエリーを探すことができ、数多く存在するオークションでは、手軽な値段でジュエリーを手に入れることもできます。

ちょっと敷居が高いように感じてしまう方もいると思いますが、旅行客でも気軽に入れるオークション会場もありますし、ジュエリーの見方も少し知識を身に付ければ、ショッピングにも自信を持てるようになるはずです。

これから数回に渡り、そんなジュエリーとロンドンについてお話したいと思います。

(※1)現在は世界第二位の大きさ。タイ王室の「ザ・ゴールデン・ジュビリー」が世界最大の546.67ct