取材で出会うパリのおしゃれピープルと話していると、好んで日本食を定期的に食べていたり、バカンスを日本で過ごしたりと、彼女たちの間で「日本文化」がトレンドになっていると感じます。

また、オペラ・ガルニエやヴァンドーム広場からも近いパリ髄一の日本人街、サンタン通りとその近辺には、ラーメン店、弁当屋、和菓子屋、居酒屋、たこ焼き屋などが並び、パリっ子たちが連日連夜、長蛇の列をつくっています。そして、そんな日本ブームをさらに盛り上げるのが、日本文化の祭典「ジャパン・エキスポ」。今年で18回目を迎え、フランスで日本の魅力はさらに拡大する予感!

そこで気になるのが、実際パリっ子たちは日本のどんなところに魅かれてる?ということ。その疑問をもとに、日本に訪れたことのある4人にインタビュー。「パリっ子が見る日本」とは? もしかしたら私たちが気づいていない魅力を発見できるかも!

インタビューに答えてくれたパリジャン&パリジェンヌ

4人のパリっ子に聞いた、「日本」の魅力
@elephantmusique//Instagram

フランソワ(シンガー)

フレンチポップの音楽グループ「Éléfant」で活躍するフランソワ。日本のアートが大好き。定期的にパリの日本食材店で買い物をし、仕事やプライベートでも日本に訪れるという日本愛好家。

4人のパリっ子に聞いた、「日本」の魅力

レベッカ(アートディレクター)

ランジェリーブランド「Etam」で、アートディレクターとして広告制作をするレベッカ。以前はフリーランス・スタイリストとして、数多くの一流モード誌で活躍。日本のインテリア・デザインやモードに魅力を感じている。

4人のパリっ子に聞いた、「日本」の魅力

ジャック・アレクサンドル(弁護士)

法廷やオフィスで多忙な日々を送る一方、日本語を学び、バレエや絵画鑑賞などアートも愛するジャック・アレクサンドル。日本の芸術の中では、特に書道に魅かれている。

4人のパリっ子に聞いた、「日本」の魅力

ジュリー(エンジニア)

1年半日本で生活をしていた経験をブログに綴っているジュリー。SNSでの投稿では漢字も使いこなすほど、日本語が上手。日本人と接する中で、自身の内面にも変化があったそう。

―はじめに、「日本」という国にはどんな精神が根付いていると思う?

「利益よりも、クオリティの高いものを創ることが、なによりも素晴らしいという価値観。そんな、今の世界で稀に見る"真摯さ"を心から尊敬しています」(フランソワ)

他のどの国でも見ることのない、多彩で個性豊かな世界観が詰まっているところ」(レベッカ)

「ユニークなアイデアが湧き続けるクリエイティビティと、それらを形にするときの完璧主義な性質を兼ね備えている」(ジャック・アレクサンドル)

「神社やお寺に行ったときに感じるような、穏やかな心が日本文化に根付いていると思う」(ジュリー)

―日本に訪れたときに感動したことは?

「東京は理想的な近代都市だと思う。なんでも手に入る、ただの物質的な"大都会"ではなく、"粋な精神"で溢れている街。ビジネス、家族の伝統、若者文化、シニア世代の生き方、すべてが調和してイキイキとしてる」(フランソワ)

日本人に根付いている純粋な親切さ! 人にいいものを提供したい、という気持ちを多くの人が持ってる。あと、自分たちの暮らす場所を大切に保っているところ。街中がこんなにも整備され、キレイで清潔な国は他にはない!」(レベッカ)

「東京に訪れたとき、超高層ビルのような近代的な建物と、神社のような伝統的な建物が、とてもバランスよく調和されていることに驚いたよ。僕自身の心の中も東京にいるときは、ワクワクとした躍動感と深い静寂を同時に感じていたんだけど、たぶん街の雰囲気が反映していたのかも」(ジャック・アレクサンドル)

レストラン、居酒屋などお店の人々が丁寧で素晴らしいサービスを提供してくれるところ。あと、安全なところかな。ヨーロッパでは夜道を1人で歩くときに注意を払わないといけないけど、日本では緊張感なく歩けるの。

それと、電車が遅れることがほぼないから、待ち合わせに遅刻するかも…なんてストレスを感じなくてすむ」(ジュリー)

4人のパリっ子に聞いた、「日本」の魅力
@elephantmusique//Instagram
フランソワが見た日本

―日本人に抱く印象は?

「物、人、すべてのことに敬意を抱いている。日常生活で垣間見る、みんながお互い尊敬しあってコミュニケーションをとっている姿は本当に素晴らしい。その一方で、とてもシャイで、もっと大胆になっても素敵なのに!と思うこともあるかな」(フランソワ)

「穏やかで幸せを感じる心が、そのまま雰囲気にでている人が多いと感じるわ。あと、"和"を大切にしているところも素晴らしい。仕事上、日本人と働くことも多いけど、彼女たちはみんなで考えを話し合いながら、すべての意見を尊重して耳を傾け、良いところを上手に合わせて1つのものを創り上げているわ」(レベッカ)

「真面目な印象があるけど、実は同時に笑うことが大好きな人たち。何が起こっても負けずに前進する自分に負けない力、そして同時に謙虚な姿勢を兼ね備えているところを尊敬してるんだ」(ジャック・アレクサンドル)

「何があってもパニックにならない平静さは、私も影響を受けたわ。ある日、フランスからの飛行機が遅れて東京への乗り継ぎ便を逃してしまったとき、係員に怒って苦情を言う乗客たちの一方で、日本人だけが冷静に次のステップを考えていた。この理性的な姿勢に感銘を受けて、私もそれ以降、たとえパリで大渋滞に遭っても、怒らずリラックスして過ごせるようになったの。

また、日本人は季節の些細な変化を感じる美しい心を持っている。日本で生活してから、たとえ大都会に住んでいても季節を楽しみながら生活することができる、ということに気づいたの。それ以降、パリでも季節の花に意識が行くようになったわ」(ジュリー)

4人のパリっ子に聞いた、「日本」の魅力
@rebusre//Instagram
レベッカが見た日本

―どんな日本文化に魅かれてる?

「日本の写真家、デザイナー、建築家の独特なセンス。彼らの作品は優しい印象でありながら、力強さも同時に備え持つ日本特有の美を感じる。

今年の夏、フランスでも日本建築に関する展示会が2つ開催されるんだ。1つはパヴィヨン・ド・ラルスナルで開催中の「パリの日本建築」展。9月にはロレーヌ地方にあるメッスのポンピドゥーセンターで展示会が開催される予定」(フランソワ)

「インテリアやファッションの、ミニマルなデザインが大好き。シンプルで洗練されていて、センスがいいと思うわ。

あとは、日本独特の"色"もキレイ。京都で舞妓さんを見かけたんだけど、おしろいの"白"と口紅の "紅"があまりに美しすぎて…今でも鮮明に覚えているわ」(レベッカ)

「書道は素晴らしい芸術だと思う。美しい文字を書くために、時間をかけて墨をすり、筆を動かすときには最高の集中力を注ぐ。いろんな能力が必要とされる書を極めている人は、心から尊敬する」(ジャック・アレクサンドル)

「夏祭りはみんなが伝統的な衣装を着て踊ったり、歌ったりする特別な日。そんな光景を見れたのは感動的でした」(ジュリー)

4人のパリっ子に聞いた、「日本」の魅力
ジャック・アレクサンドルが見た日本

―日本の女性のファッションについてどう思う?

「多彩なスタイルがあって驚いたよ! 日本の女の子はいろんなオシャレを楽しんでいて、とても魅力的」(フランソワ)

日本のモードが大好き。エリアによってエレガントなスタイルの人が集まる場所や、コスプレをしている人がたくさんいる場所があるところもユニークだと思う」(レベッカ)

女性が細部にまでオシャレに気を配っているのは、とても洗練されたファッションカルチャーだと思った!」(ジャック・アレクサンドル)

「みんなすごくファッショナブル! 近所に食材の買い物をしに行くときでも、オシャレ心を失わない人が多い印象。でも、ずっとヒールを履いていて疲れないのかしら。キレイにヘアアレンジしている髪や、ナチュラルなメイクも美しい」(ジュリー)

4人のパリっ子に聞いた、「日本」の魅力
ジュリーが見た日本

―フランスと日本の共通点はあると思う?

和食やフランス料理、お菓子、ファッションなど、最高の文化や芸術を創り上げるために意識を集中し、素晴らしいものづくりをするところ」(ジャック・アレクサンドル)

「ファッションの系統は異なるけど、オシャレを愛する心はとても似ていると思う(ジュリー)」

―日本文化で「謎」と思うところって?

道で泣いたり、怒ったりしている日本人を見たことがない。フランスではそういうストレートな感情表現は一般的なんだけど、きっと日本人はいろいろな感情を表に出さずに、中に秘めているのかしら(レベッカ)

スマホを眺めている人が多いところ。あと、臨機応変に状況を改善できそうなときも、ルールを尊重し続けるところ」(ジャック・アレクサンドル)

「日本語の『また遊ぼう』という別れ際の挨拶。たとえ楽しい時間を日本人の友達たちと過ごしても、『また』がない確率が高い」(ジュリー)

―パリのとっておきの「日本」アドレスを教えて!

「バスティーユ広場からも遠くない『Le petit keller』は、和食とフランス料理を絶妙に融合させた料理が美味しくて、定期的に通ってるんだ。あと、ラーメンを食べたいときは、サンジェルマン地区にある『一風堂』によく行くよ」(フランソワ)

「オペラ座界隈にある小さなレストラン『Chez Miki』は、日本風の洋食が美味しいの!」(レベッカ)

「セーヌ川やエッフェル塔からも近くにある『パリ日本文化会館Maison de la Culture du Japon』では展示、日本の映画、コンサートや講演会などが開催されていて、日本文化について学べる場所」(ジャック・アレクサンドル)

「パリ左岸、6区にあるラーメン店『Kodawari ramenは地鳥ベースのスープが美味しい!」(ジュリー)


言葉の端々から日本のことを深く考察し、フランスとはまったく違う側面を好んでくれているよう。そんな日本の良さ、私たちも大事にしていきたいですね。