男装のスーパー肉食女子、作家ジョルジュ・サンド【悪姫6】

「淫乱女」と後ろ指さされても気にしない。私には絶対に見つけたいものがあるから。

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ジョルジュ・サンドは19世紀に活躍したフランスの女流作家で、数知れない男性遍歴で知られる人です。目鼻立ちがはっきりした美人で、町で一目惚れされてとか、息子の家庭教師とか、離婚相談していた弁護士とか、診察してくれた医者とか、すれ違った程度の相手と出会って数日の間に肉体関係になるスゴいモテ女です。最も有名な相手は作曲家ショパンですが、この煮え切らない年下男には「どうすんの、あなたがその気なら、私のハラは決まってるけど」という「最後通牒」を送り付けてゲット。歴史に名を残すスーパー肉食女子といっても過言ではありません。

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…というわけで、ここで彼女と噂になった(本人たちは否定)音楽家フランツ・リストの当時の妻マリー・ダグーが、彼女について言っている言葉を引用しましょう。

「女性として――いや、失礼! "男性"として――彼女はくだらない。まるきり話が通じないのだ。(中略)それでも美しいには違いない。彼女の愛人たちは彼女にとっては、黒板に字を書くための白墨の切れ端にすぎない。彼女は書き終わると、その切れ端を足で踏んづけて、あとには埃が残るだけで、それもあっというい間に舞い散ってしまうのだ」

男を芸の肥やしにして使い捨て、くらいの感じでしょうか。でもそれ以上に、マリー・ダグーが彼女を「男性として」と書いているところが気になりますよね~。

実はサンド、思春期の頃から男装して乗馬や狩りを楽しんでいた人なんです。当時の女子の服は、大きく膨らんだ足首丈のドレスはリボンやレースまみれ、ウェストはコルセットで締め上げ、造花や羽のついたつば広帽…みたいな重っ!  暑っ!  なスタイルですから、まあ一回ズボン履いて動き回っちゃったら、そりゃ窮屈に決まっとります。

するってぇと、その時代にもやっぱりいるんですね、「お前、それでも女か。男にでもなったつもりか」とか言ってくる男が。ある時、サンドはそういうウザ男にこう答えています。

「私を男と思いなさろうと女と思いなさろうとご随意に。私はどちらでもない。一個の存在です。一人の友達、兄弟であり姉妹であるとおぼしめせ。あなたへ男並みに尽くす点では兄弟、心の細やかさを読み取り理解する点では姉妹なのです」

つうか、私が何着ようがほっとけや――と、一喝したわけですね。この他人の目とか関係ないし! な感じ、憧れます。今の時代だって、ここまで言える人はなかなかいません。

主人と奴隷のような「結婚制度」の、どこに愛情が?

さてこの男装、もうひとつの利点は安上がりなこと。この人、27歳の時、9年続いた結婚生活に嫌気がさして、故郷ノアンから単身パリへ飛び出してきてしまったんです。夫はゴルフや飲み会…じゃなかった、趣味の狩猟にかまけて妻をほったらかし――というお決まりの倦怠期に、サンドは「この人を今後愛せる気がしない」と見切りをつけちゃったんですね。

ここでサンドの結婚観を見てみましょう。当時は離婚が許されない時代でもあったためか、サンドはその著作の登場人物の言葉を借りて、「結婚制度」を時に激烈に批判しています。

「(結婚制度によって)女性を男性の奴隷ないしは所有物にしたのは、むき出しの欲望ではないのか?  純粋な愛の本能とか聖なる貞節の概念のうちで、この致命的な打撃に抵抗できたものがあるだろうか? …主人と奴隷の間に、どのていどの感情の交流なりどのていどの知性の融合があるというのだ?」(ジョルジュ・サンド著『ジャック』)

でもサンドが「結婚」を否定していたのかというと、そうではありません。彼女は「結婚は"真実の愛"の到達点であるべき」と考えていたんですね。じゃあ"真実の愛"って? サンドが自分の心の中にそれを明確に描き始めたのは、おそらく30歳前後ではないかと私は見ています。

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当時、年下の天才詩人ミュッセとの恋にドハマりしていたサンドは、それゆえに、彼の癇癪と放蕩に、嫉妬し激怒し別れてはよりを戻すということを繰り返していました。

一方、その合間に付き合ったイタリア人医師パジェッロは、セックスの相性は最高なだけど、なんかつまんない。ミュッセから得られるような刺激がないんです。当時の書簡にはこんな文言が書かれています。

「真の愛とは、心と精神と肉体が互いに理解しあい、しっかりと抱き合うときのこと」

本当の愛ならば、相手を尊敬でき、嬉しくて楽しくて、さらにセックスもいいはず! ってことですね。これすべての女子が憧れる、理想の愛情関係だと思います。

あなたから学びたい、でもあなた好みの女になろうとは思わない

サンドが面白いのは、付き合う相手の影響が作品に如実に表れることです。詩人ならば詩情を帯び、宗教家ならば宗教小説を、社会思想家ならば哲学を吸収し、そのたびに彼女の世界は広がってゆきます。冒頭のマリー・ダグーの指摘は実はある意味ですごく的確なのですが、それでも「男と女は平等」という考えは絶対にブレなかったのが、この人の素晴らしさ。女を下に見ていることに気づいて、百年の恋が冷める、なんてこともあったようです。

あなたから学びたい、でもあなた好みの女になろうとは思わない。あなたを尊敬する、でも隷属はしない。周囲に何と言われても気にせず、サンドが次から次へと様々な男たちと関係したのは、そうした"真実の愛"を信じ探し求めたが故。その意味では究極のロマンチストでもあったのかもしれません。

「どんな種類の被創造物でも、雄と雌の間で、どちらかが他方により余計に恵まれているということはないのよ。自分が完全になるためには相互に相手を必要とする二つの存在で、その愛が素晴らしい合一を生み出すのね。動物に於いてはつかの間の合一でも、私たちの場合には永続性があるのは、そこに知性があって、心と感覚が1日でも枯れてしまわないように力を貸してくれるからよ。だから人間の愛は、もともと持続にあこがれを持つのね…」(ジョルジュ・サンド著『コンスタンス・ヴェリエ』)


(参考文献)

「ジョルジュ・サンド評伝」長塚隆二

「ジョルジュ・サンドはなぜ男装をしたか」池田孝江

「愛と革命 ジョルジュ・サンド伝」坂本千代

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