「お前の愛は愛じゃない」と私を責める、お前の愛こそ愛じゃない

さて前回書いた「愛」についてですが、これほど様々なところで議論を呼び、結局のところ答えが出ない話はありません。飲み会の、酒の肴にぴったり。

ちょっと悩んでるんだー、実は今付き合ってる人がいるんだけど、彼の家に行くと必ず全身タイツに着替えさせられるんだよねー。「全身タイツの女にグッとくる」っていうから、まあいいかなって思って何度か受け入れちゃって、それ以来、行くたびにずっとでさあ。さらにこの間なんて、「君も意外と好きなのかなと」って、新しいタイツが10着買ってあってさあ、私、これなんか違うんじゃないかなって思うんだけどー。

てな具合で身の上話風に言ってごらんなさいな。座が持つ上に、巻き起こる議論がめちゃめちゃおもしろい。「イヤならちゃんと言った方がいい」という良識派、「愛されてるなら何でもできる」という愛され至上主義、「彼にも、あつみちゃん(わ、わたし?)が好きなフンドシ姿になってもらえば?」という交換条件派、「それくらいの拒絶で怒るような男は、別れた方が正解」という相手の愛を試す派などの激論の末に痛飲し、最終的には「愛ってさ…!」みたいなけだるい大人の酔っぱらいが数体できあがります。

つまるところ「私の愛」と「あなたの愛」は違うので、あなたに「お前の愛は愛じゃない」と言われても「あなたの愛こそ愛じゃない」としか言いようがありません。もちろんこういうストレートなやりとりは激情型の韓国ドラマとかにしかないかもしれませんが、これのソフト版ならば意外とどこでもあるように思います。「僕が愛する君が、そんなことするはずない」とか「あなたがそういう人だとは思いもしなかった」とか。これ、「あ、本当は愛してなかったんだ/愛されてなかったんだと思う瞬間ですね。

女が主役の『スターウォーズ』に、いちゃもん言っちゃうファン

さて、今回のネタも前回に引き続き『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』。新世紀の三部作の2作品目ですが、主人公が女子、レイア姫が将軍になってた前作以上に、敵も味方も女子大活躍。ウォルト・ディズニーという、これまでずーっと主に女子と子供を相手にしてきた会社が配給する作品、そういうターゲットに物を売るメソッドはめっちゃ持ってる会社ですから、当然の成り行きだと思うのですが――やっぱりどーでもいい文句を言う、おそらく主に男性の、意味不明ファンがいるんですね。前作の『フォースの覚醒』はもとより、フェリシティ・ジョーンズが主人公を演じたスピンオフの『スター・ウォーズ/ローグ・ワン』でも、女が主人公ってどういうことなんだよという声があったわけです。

「ニューヨークタイムズ」の取材でこれに応えたのが、ルーカス・フィルムの社長にして新世紀の"女子"三部作を仕切る、ハリウッドの超大物女子、キャスリーン・ケネディです。

「私は、私を雇っている会社には責任があるけれど、特定のファンの要求に、なんらかの形で応える責任はないわ。"まあこのシリーズはずっとずっと男たち最も魅了してきたわけだし、彼らに何らかの借りがあるんじゃないか"なんて発言に、私は決して縛られはしないということよ」

『スター・ウォーズ』の新シリーズは、そうしたファンたちにとって「僕が愛した『スター・ウォーズ』が、そんなことするはずがない」とか「『スター・ウォーズ』がそんなシリーズだとは思わなかった」ということなのでしょうが、もちろん『スター・ウォーズ』側も、ファンがそんなこと言い出すとは思わなかったんじゃないかしら。でも仕方ありません。つまるところ、「あなたの愛」と「わたしの愛」は違うんだもの。

むしろそういう食い違いが起こった時に、それでも互いを受け入れる姿勢に、本当の「愛」があるんじゃないかしら、とか思ったりして。

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』

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