ファンの方すみません、今更ながらスゴイと思いました。

あるアイドルスターのライブに誘われ、先日行ってまいりました。いやー、ほんと素晴らしかった。あまりに素晴らしくて、感動ではちきれそうになった私は、ライブに誘ってくれたガチなファンの女子とともに「いかに素晴らしかったか」を猛烈に語り合いました。あふれだす言葉は、さながら「銀テ」(ライブの盛り上がりの瞬間に空中にパーン!と出てくる銀色のテープ)ばり。「もう閉店なんですけど」的に椅子を片付け売り上げ計算し始めた店員を尻目に、オケなしで何曲か歌いました(超迷惑)。終電超えて。ファンでもないのに。金にもならんのに。

私が何にそんなに感動してしまったか。それは彼らがファンの思いを正確にくみ取り、その思いに完璧に応えているからです。例えば、東京ドーム、ライブを見るにはえらく広い会場ですね。ぶっちゃけアリーナの最後列だって、私のようなおチビちゃんには辛い。ステージから一番遠いスタンド席、23階の見切れ席、もはや"同じ空間にいるだけ状態"の4階席5階席など、いわずもがなです。

でも彼らは、回転する花道とかセンターステージとかの舞台装置はもちろん、大きい山車とか小さい山車とか、ハラハラするからやめてーっ!って言いたくなるようなフライングとか、そりゃもうあらゆる方法で、「もっと近づきたい!」と切望するすべての座席のファンたちに近づこうとしてくれるんですね。

私はたまたまラッキーで、ある局面では、それこそ手が届きそうな席で見ていたのですが、そこまで近いファン(じゃないんだけども)と目を合わせないことにも、個人的にはすごく好感を持ちました。彼らは、それこそスタンド最後列のファンにあり、「見てるよ! 忘れてないよ!」と視線を投げとるわけです。満杯の会場の55千人が感涙。いやほんとすげーな、東方神起。て、言ってもうたわ。

愛しているから、全身タイツはいてくれ

とはいうものの、私はこのアイドルとファンの間の「愛」の素晴らしさに感動したわけではありません。すでに書きましが、感動的なのは彼らがファンの思いを完璧にくみ取って実行してくれていることです。つまり、彼らはファンが「こんな風に愛されたら幸せ」と思うやり方で、ファンを「愛して」いるから。私はその、現実世界にはありえない、めちゃめちゃ美しい幻想を作り上げ、よしんば「この幻想は、もしかしたら現実かもしれない」とさえ思わせる、そのプロ意識に感動したのでした。

これが現実でありえないと思うのは、裏を返せばわかることです。例えば「愛してるから、俺のモノになってくれ」とか「愛してるから、全身タイツ着てくれ」とか言われても、どうなんだって話ですね。生まれてこの方未来永劫、ワタシはワタシのモノだし、全身タイツも、少なくとも愛のためとかだけじゃムリなんで。

さて今回のネタは『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』。なんでこんな話から始まってるかっていうと、前作から新世紀のシリーズの顔となったデイジー・リドリーについて書くため。彼女の「この三部作を終えた後は、レイを演じるつもりはない」といった発言が、いろんなところで物議をかもしていることを知ったからです。

ご存じのように『スター・ウォーズ』は、全世界に映画史上最多のファンをもつお化けシリーズです。そのファンの多くは20年越し30年越し、熱狂的に愛しています。でも彼女はその絶対愛を引き受けるためだけに女優になったわけじゃないわけし、まだまだ若いから、いろんな作品でいろんな役を演じたいのは当然のこと。ファンと同じように愛さないからって、彼女が非難にさらされたらなんか可哀そう。

あまりに大きなシリーズの偶像(アイドル)になったがゆえに、身を持ち崩した人もたくさんいます(一時期は、レイア姫ことキャリー・フィッシャーも!)。そうはならない!という意思を示した彼女の強さと現代性こそ、今世紀のヒロインにふさわしい気もするしね。

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』

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