あの人、死ねばいいなーと思ったりもする私。
グーグルとかで「愛」と「復讐」をクロス検索すると、「手酷く振られた相手に復讐するには」みたいなスレッドがたくさん出てきます。仕事でも恋愛でも自分にひどい目に合わせた人を「死ねばいいなー」と思う程度に性格の悪い私は、フッフッフッと怪しく薄笑いしながらそういうページをクリックするのですが、出てくるのは「最大の復讐は相手より幸せになること!」とか「"逃した魚は大きかった"と思わせる素敵な人間に」とか、健全な話ばっかり書いてあり、なんだか拍子抜け。
でもかといって、ニュースでよく見る、交際を断られてカッとなって!みたいな話は、全く理解できません。だって衝動のままに相手を傷つけるようなことをしたら、ひどい目にあった自分のその後の人生まで台無しになってしまうやないの?(私が「殺したい」ではなく「死ねばいいのに」と思うのは、そういうわけなのですが) 相手を奈落の底に落とすために、自分がさらなる不幸になるとか本末顛倒にもほどあります。
とまあそんな前フリをしつつ、今回のネタは『ノクターナル・アニマルズ』。そこには私の理想の復讐(なんだそれ)が描かれていて、ゾクゾクします〜。
物語のヒロイン、復讐される側、成功したギャラリーオーナーのスーザン。お金持ちに生まれ育ち、美術館のような豪邸に住むセレブな生活を送り、イケメンの夫に16歳の娘までいます。つまり全部持ってる人なんですが、ひとつだけ手にしていないものが。それが愛です。
そんなある日、音信普通だった元夫エドワードから、謎の小包が届きます。中には、作家志望だった彼が書いた『ノクターナル・アニマルズ』という小説の原稿が。表紙には「スーザンに捧ぐ」とありーーもうお分かりでしょうが、エドワードが「復讐する側」です。
愛は一度失われれば、二度と手に入らない
お互いが初恋の相手だった2人は、それぞれ作家を目指していた学生時代に再会、親の反対を押し切って結婚します。若気の至りとしかいいようのない展開ですが、ご多分にもれず「ロマンチックだけじゃ食えない」と先に気づくのは女のほう。スーザンは「愛しているけど、将来の展望が見えない暮らしはイヤ」と彼の元を去り、金持ちのボンボンでより見栄えのする今の夫と結婚します。
ロマンチック男エドワードの最後の言葉は「愛は一度失えば、二度と手に入れられない」。ヘボ作家だったエドワードは、小説の面白さでスーザンを引きつけ、じわじわとせまり、最後の最後で分からせるんです。スーザンが何をしたのか、それにより彼から何を奪ったのかを。
私はある瞬間ーー私がかつて「死ねばいいなー」と思った相手と、偶然にも遭遇してしまった時のことを思い出します。二度と会いたくない顔も見たくない一生関わりたくない、そう思っていた相手です。私は慌てました。というのも、うわ、生きてる、死んだはずでは!と思ったからwww。死ねばいいのにと思った時から、敵はじわじわと私の中で死んでいき、要はすっかり忘れていたんです。
この復讐の何がスゴいって、やっぱりエドワードが20年間、復讐を忘れていなかったこと。つまりずーっとスーザンを忘れていなかった。理想の復讐は愛のなれの果て、骨の髄までロマンチックな男だなあと思いつつも、なんだかウットリしちゃう私はーー愛が足りてないのかもしれません……。
(C)Universal Pictures
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