「女には無理」な職業は、アクション映画の監督?

その昔「女はすし職人になれない」と言われていました。「すし職人なりたがる女がいない」じゃなくて「なれない」ってどういうこと?と思っていた私は、その理由を「女は手が温かいから、ネタが生臭くなる」ともっともらしく説明する周囲の大人の襟首に、氷のように冷えた自分の手(スーパー冷え症)を滑り込ませて、「冷たっ!」と言わせて面白がっていました。

100人の女と100人の男の手の平均温度を比べたら、冷え性が多い女の方が低いのはほぼ間違いないこと、つまりここにはおそらく別の理由があるわけですが、さらにまた別の説「女は生理がある(=不浄のもの)から」があることを知りぶっ飛びました。性器触らないとトイレが済まない男のほうが100倍汚いだろ、っていうのはあくまで個人的感覚ではありますが。

もちろん「女子には向かない(けど人による)」「女子は好んでやらない(けど人による)」という職業はあると思いますが、それ男も同じだし、「男には無理」な職業がないのと同じように、「女には無理」なんて職業なんてないんじゃないかなー。女は論理性に欠けるとか、女は感情的とかいうけど、論理的思考なんてその気になれば誰でもできるし、感情的で面倒くさい男なんて石投げりゃその辺にいくらでも。女子がそう思い込まされてるだけです。

さてそんなこんなで、今回のネタは話題の『ワンダーウーマン』。この映画は、ふたつの「女には無理」を達成した映画として映画史に残る作品となりました。

それは「女性監督」と「女性の主役」が、「アクション超大作を大ヒットさせること」です。

ワンダーウーマンことガル・ガドットの「え?もしかして私、結構すごい?」な瞬間。pinterest

『ワンダーウーマン』は、『ローマの休日』アクションバージョン

アクション超大作と言えば、当然ながらハリウッドのメインストリームであり、大ヒットが大命題という作品でもあります。そのジャンルを支える観客は男で、男が求めるもの(マッチョなヒーローとか、それに惚れる露出度の高い巨乳女とか)を散りばめ、そういうのがわかってる人、つまり男性監督に任せる――という考え方がスタンダードです。でもこれは最近のハリウッドで戦闘的な女優たちがよく口にすることですが――もし女性好みの映画があれば、お金を払う女性観客も当然います。

というわけで大ヒットしたのが『ワンダーウーマン』です。というのもこのヒロイン、最強であると同時に、神話世界からやってきたお姫様なんです。そして彼女を伴って戦場を行く軍人との関係は、完全にオードリー・ヘプバーンの『ローマの休日』なんです。

さてこの作品を大ヒットに導いた監督パティ・ジェンキンスには、映画公開の後にすごく嬉しいことがあったといいます。それはある幼稚園の女の子たちが

「将来、ダイアナ(ワンダーウーマンのこと)みたいに何か国語もしゃべれるようになりたい」「お誕生日会は『美女と野獣』パーティーにしようと思ってたけど、『ワンダーウーマン』パーティーにする」「"世界を救う必要があるなら、その準備をしたい"と翌日からワンダーウーマンの格好で来るようになった」

素直で自分の可能性を自ら狭めない子供のうちに、こういう体験することすごく大事。もちろん才色兼備で最強の正義のお姫さまは、そりゃ絵空事ではありますが、優しくカッコいいヒーローが男の子に道を示すように、ワンダーウーマンは女子にカッコいい生き方を示すある種のロールモデルになったんではないか、なーんて思ったりもします。

「これを知ってあらゆる苦労がふっとんだ」と喜ぶパティ・ジェンキンス監督も、ミス・イスラエルにして兵役経験のある主演女優ガル・ガドットもまたしかり。すし職人じゃないですが、「女子には無理」なんてことは「思い込み」であり「思い込まされ」です。この映画をきっかけに、カッコいい女子たち、増えてゆくかもしれません。

『ワンダーウーマン』

© 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

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