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ロッタちゃん はじめてのおつかい(予告編)
ロッタちゃん はじめてのおつかい(予告編) thumnail
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チクチクするセーターをザクザクに切り裂く5歳児

なんかいかにも梅雨時という日々が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。私はクーラーが苦手なうえにどうにもこうにも汗っかきという、梅雨からお盆までの約2か月をこの世で最も憎んでいる人間です。家で扇風機を回しながら原稿を書いてるとじわじわと汗がにじんでくるわ、出かけようと化粧を始めれば塗ったそばから崩れてゆくわ、洗濯物は乾いたそばから湿ってゆくわ、あらゆる行為が恐ろしく不毛です。こういう季節はそれ以上の無力感と不快感は味わいたくないものですが、人間関係のあるところ必ず「まあ、そういわれてもどうにも、そんなわけでそこは飲み込んで頂くしか」みたいなジメっとした理不尽があり。は?何言ってんの?ヤだ!ケラケラケラ!みたいにカラッと言い返したいんだよほんとはさあ。

そんなとき私がつい見る映画は、『ロッタちゃん、はじめてのおつかい』です。ロッタちゃん、日本での公開は2000年で、もはや20年近く前の映画なのね……衝撃です。この映画、当時はもうめちゃめちゃ流行りました。今思えばすごいことですが宣伝のビジュアルに奈良美智さんの絵が使われていて、それはなぜかといえばロッタちゃんがよく見る奈良さんの子供の絵と同じように始終恐ろしく不機嫌だからです。そして彼女の何が素晴らしいって、理不尽な要求を敢然と拒絶することです。母親にボロいチクチクするセーターは着ろと言われイヤだと反発、叱られても全然めけず、ついにはセーターをザクザクに切ってごみ箱に捨てます。でもって「ママへ。ごみ箱見てみな!」(抄訳)と置き手紙して家出(ただし隣にすむ仲良しのおばちゃんの家)。ロッタちゃん、シビれる!

アラサーのロッタちゃんに、自分の居場所はあるか

もちろんロッタちゃんはまだ5歳なので、そのあとはぜんぜん続きません。周りはそれをわかっているし、何しろプンプン怒る姿がめちゃめちゃ可愛いので、仕方ないなあとみんなが許してくれます。もちろんいい大人が同じことやってもロッタちゃんみたいに可愛くはないし、それに免じて許してくれる人なんていません。

でももし万が一「怒る姿が可愛い」なんて言われたとしても、それはそれであんまりよくないんじゃないかなあとも思うのです。こちらの本気の訴えを、むこうはまったく相手にしていない、相手に完全にナメられてるということかもしれません。もし結果として相手が聞き入れてくれないにしても、そしてロッタちゃん並みの不機嫌を相手にぶつけることはしないにしても、「あなたの言っていることは理不尽だ」という気持ちが相手に伝わるほうがいいんじゃないかしら。

とはいえフリーランスとしては、ここが考えどころでもあります。そんなふうに言ったら、この人この先、私に仕事をくれないんでは?

そんなときにロッタちゃんが再び私を勇気づけてくれます。隣の家の屋根裏に自分の居場所を作ったロッタちゃんは、家族が楽しそうにクロッケー(ゲートボールみたいなの)をしている姿を見て呟きます。「クロッケーは楽しい。でも自分の居場所を持つのはもっと楽しい」。

その夜中、ロッタちゃんは迎えに来た父親とあっさり家に帰りますが、私が考えるのは20年後30年後の彼女のことです。ロッタちゃんだって5歳の時とは違い、少なくとも自分でどうにか生きていく方法を見つけているはず。それでいながら、もしあの頃以上に理不尽なことを拒絶できないとしたら、その理由は何なんだろうなあ。

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