【悶々68】幽霊との交信、その心もとなさ。

それがネット時代のコミュニケーション。怖いような、寂しいような。

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直接あったことがない相手が、絶対女だとなぜ言い切れるのか?

仕事の関係で何度かメールをもらっていた人と、実際にお仕事をすることになったときのこと。初めて先方からお電話をもらい、もしもし**ですが、と言われて、え?は?**って誰?となり、あ!と気づいて、アワアワとした自分を隠そうとしたら妙にテンションが高くなり、なんか変な感じになってしまいました。何にそんなに混乱していたかといえば、彼女が女子だったから。中性的なお名前だったせいもあり、てっきり男だと思い込んでいたのです。

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というわけで前回からの引き続きネタ『パーソナル・ショッパー』、この映画を見てそのことをふと思い出しました。映画は基本的には主人公モウリーンがある事件に巻き込まれてゆく!というサスペンスなのですが、そのきっかけとなるのが謎の番号から送られてきたSMSです。彼女の個人的な事情と相手を脅かすような文面から、観客はモウリーンとともに、考える余地すらなく相手は男だと思うに違いありません。

まあそれが正解かどうかは映画を見てもらうとして。不思議なのは、なんで人間って予断してしまうのかしらということです。まずはなんとなく条件反射的に、男か女かを判断し、言葉の端々からどんな人かなーと判断し、さらなる情報を読みとろうとしてしまいます。確かに仕事に関することであれば、その人がどんな人か知ることは大事な役立つ情報かもしれません。でも予断は予断でしかなく、実際に会ってみたらほんとかどうかはわかりません。男だと思ってたら女子なんてことあるわけですから。

ネットを通じて話す相手は、もしかしたら幽霊みたいなもの

さて再び『パーソナル・ショッパー』

この映画、普通のサスペンスっぽく見えますが、実はものすごくヘンな設定がひとつあります。それは主人公のモウリーンに霊能力があることです。霊媒師だった双子のお兄さんを亡くしたばかりの彼女は、そのお兄さんからの「サイン」を待ち続けています。そんなわけで当初モウリーンは、謎の番号からのSMSを「兄ちゃんでは!」と思ってしまうわけです。

でも例えば行く先々に「×印」があったとか、誰もいない部屋でグラスが落ちたとか、もっと言えばふたりをつないでいたヘソの緒が箪笥から唐突に飛び出してきた、的なめちゃめちゃそれらしいことが起きたとして、それがお兄ちゃんからだと言い切れるかといえばそうともいえません。お兄さんがお兄さんの姿で「お兄さんだよー」と目の前に来ない限り――いやいやそれすらも、もしかしたらそこらへんのタチの悪い地縛霊が、いっちょからかってやるか的に化けているかもしれません。

ここで私は、ハハーン、と思いました。これはネット時代のコミュニケーションそのものなのではないかと。フェイスブックやブログのコメントで、アドレスをどこで手に入れたのかメールで、恋人探しのマッチングサイトで、今や見知らぬ人とのやりとりは本当に当たり前のことになっています。私たちは相手のことを知っているようで全く知らず、それどころか相手が実在の人物かどうかさえよくわかりません。相手は女のフリした男かもしれないし、いい人のフリした悪党かもしれないし、プログラムされたシステムかもしれないし、もしかしたら幽霊かもしれません……。直接会わない限り何がホントかはぜんぜんわかりません。

――って書いてみたものの、よく考えたら、直接会ってみたところでよくわからないんだわ、人間って。だって私をひどい目に合わせるのは、いつだって直接会ったことのある人。直接会わない正体不明の幽霊のほうが、ぜんぜん怖くないかも。てか、向こうからしたら、私が幽霊だったりもするんだわ。はー。いやだ少し寂しい。

『パーソナル・ショッパー』

©2016 CG Cinema – VORTEX SUTRA – DETAILFILM – SIRENA FILM – ARTE France CINEMA – ARTE Deutschland / WDR

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