【悶々60】憐れむように「自虐的ですね」という人

私が私のアホを笑っても、それは自分を蔑んでいるからじゃありません。

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エイミー・シューマーは"自虐の女王"か?

ここ10年以上、毎年「今年の目標は180度開脚」と宣言している私ですが、達成するどころか達成の気配すらみじんもありません。数年前、そんな自分に業を煮やした私は、私なりの本気で股関節にムチを入れていました。今、思えば(股関節が)究極にクタクタだったのでしょう、ある時マンホールの蓋にヒールを取られ、こらえられずにマンガみたいにズルッと滑り、私の股関節は予期せぬ無理めの開脚をするハメになったのです。筋か、筋をやられたか……痛さに顔を歪めながらもガードレールを支えに立ち上がりましたが、股関節はむりやり開き切っちゃった手前きっちりと閉めることができず、カニ歩き的な感じがやっとです。晴れ渡った初夏の空の下、人気の少ない閑静な住宅街で、ガードレールにもたれながら、やっとの思いでカニ歩きする女――あまりにアホらしくシュールな状況に、私はじわじわと笑いがこみ上げてきました。

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こうした「アホ体験」は人に話すと倍楽しいので、必ず誰彼に話します。「アホや!」と一緒になって大笑いしてくれる人、「笑い事じゃないよ!」と心配してくれる人など反応は様々ですが、必ず数人はいるのが憐れんだようにこう言う人です。

「渥美さんは自虐的ですねえ」

私は思わずポカーンとしてしまいます。私の認識が間違っていなければ、自虐とは「自分を虐げること、貶めること」だと思うのですが、私の中には「自虐」の気持ちはこれっぽっちもないからです。

さて今回のネタも前回に引き続き、『エイミー、エイミー、エイミー!こじらせシングルライフの抜け出し方』。ここ23年で、私が最も笑った映画です。なにが面白いって、自ら脚本を手掛け、自分を投影したヒロインを演じるコメディエンヌ、エイミー・シューマーが面白すぎ――なのですが、私はちょっとした悶々を覚えます。自分の太い二の腕を「ロスでは脚に間違われる」と言い、黒レザーのピッチピチ服を着て「ゴミ袋着てると言われた」と、己をのめすかのような彼女の笑いを、日本人が「自虐ネタ」だと思ってしまいそうなことです。

平気で恥を晒す人間は、貶められて当然

エイミー・シューマーは昨年、全米で最も稼いだコメディアン(とここではあえて言うのは、男女を併せたランキングだから)です。彼女が得意とするのはあけすけなセックスネタも含めた男女の「あるある」。例えば、自身の冠番組「インサイド・エイミー・シューマー」には、こんなコントがあります。

ワン・ダイレクション的な若手イケメングループのプロモビデオの中、登場した美しく化粧したエイミー。イケメンたちは彼女を取り囲み「君は"メイクアップ(化粧)"より"ウェイクアップ(寝起き、つまり素顔)"が素敵。内から輝いているから」と歌い上げます。気をよくしたエイミーは化粧品を全て捨て、メイクを完璧に落としたスッピンに。ところがそれを見た彼らは、「少しはしたほうがいいかも、スッピンに見えるメイクが好きかも」と、捨てた化粧品をゴミ箱から戻します。

これと似た「……」となっちゃうような経験がある人は多いと思うのですが、これを無邪気に爆笑できる人は「私もアホだが、男ってマジでこうだし(怒)!」と事態を客観化できている人でしょう。

一方、それなりに笑いつつも「自虐」と思う人は、その経験がいまだに「……」のままで「アホ」と思えるまで消化できていない、もしくは経験の有無に関わらず、こうした「恥晒し」を好んでする人を理解できない、のどちらかです。

ここに私は、他人を「自虐」扱いする人の日本的感覚を見ます。日本(主に東京を中心とした武家文化)には古くから「恥の文化」――つまり「恥を晒すならくらいならいっそ死ぬ(死ね)」みたいなプライドの高さがありますが、それは転じて「平気で恥を晒す人間は貶められて当然」的な考えに通じます。憐れみとともに(もしくは時に非難とともに)言われる「自虐」は、このやんわりとした言い換えのように思えます。日本において笑いの地位が低いのは、そういう背景があるんじゃないかなあ。

もちろんそういう風潮はどこの国にもあります。特にセックスの"恥晒し"ができる女が、時として「セクハラしていい女」かのように扱われるのは、どこの国でもほぼ同じ。エイミーのすごさは、相手からそういう匂いを感じ取ると、それを絶対に許さないことです。ライブで舞台に出た途端(つまりネタとは全くの無関係に)、「オッパイ見せろ!」と叫んだ観客の男をコテンパンに笑いのめし、最終的に会場からつまみ出したことがあります。会場は拍手喝采。ほんと、イカしてるわ~。

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