コスモポリタンはエンタメ月間ということで、今回はアタシらしく「オネエ文化がよく分かる名作洋画」をご紹介しちゃいまっしょ。そもそも映画界なんておナカマだらけだし、メジャーからインディーズまでLGBTをテーマにした作品も数知れず。そんな中、コスモポリタン・ガールズにオススメしたいのは、「ファッション」「ダンス」「毒」というキーワードで選んだ、ババア世代にとって懐かしい、"20年以上前"の3作品でございます。…って古すぎとか言わないで! あんたたちだってSNSで最新ネタ追うのにちょっと疲れてんでしょ。逆にどーんと古いほうが発見があるものよ。温故知新ってな。(と言いながらTTポーズで自撮りするイタい女装おじさんはアタシだよ!)

『プリシラ』

[youtube ]https://www.youtube.com/watch?v=MV-Zzasrky8&t=27s[/youtube]

これ、ちょっと前に宮本亜門センセイの演出で日本でもミュージカル版が上演されて話題になったから、タイトルだけは知ってるコも多いんじゃないかしら。オーストラリアのドラァグクイーン3人組が、砂漠の真ん中の町でのショーに呼ばれ、バス「プリシラ号」に乗って旅をするロード・ムービー。

とにかくビジュアルがたまんないの。ビーチサンダルで作ったドレスにストロー素材のウィッグ。電飾シャンデリアドレスに、オーストラリアらしいエリマキトカゲやオペラハウス風コスチューム、と次から次に楽しませてくれて、さすがは見事アカデミーの衣装賞にも輝いたクオリティ。ファッショニスタきどりの女子は「流行に合わせる」だけじゃなく、20年たっても新鮮な「オリジナリティで自己表現する」お祭りファッションを見るべし。まあそのまま日本の女子がエリマキトカゲとか取り入れちゃうと、頭おかしいコ扱いされると思うけどね。

もちろんドラァグクイーンのショーがテーマだから、80年代ディスコ系中心のサントラもババア大興奮の粒揃い。それでいて、背景は砂漠や山なんかのオーストラリアの大自然だったりするから、日曜昼間の旅番組「ド派手オネエ3人、砂漠の珍道中」くらいのかんじでユルく見ても十分楽しめるはず。

でも実は、メッセージ性も豊かなの。女装ショーガール3人組といっても、一番ババアのバーナデットは手術を受けたトランスジェンダー、中堅ミッチーは子持ちのバイセクシュアル、若いおてんば娘フェリシアはマッチョのゲイ、と年齢もタイプもばらばら。昨今の日本の「オネエ」一括り問題にも通じるけれど、「まとめてキワモノと思っている枠の中にも、さらにいろいろ立場や想いの違いはあるの」ということがさりげなく伝わる3人の設定がうまい。さらに、シドニーのショークラブから田舎に繰り出したことで、バスに「エイズ野郎は出て行け」なんて落書きされちゃうような笑えない現実もしっかり描かれてるのね。ババア女装の「アタシたちは都会の壁に守られているのよ」という言葉が染みるわ〜。

とはいえ、原住民のキャンプでの交流や、ノンケじい様とトランスばあ様の老いらくのロマンスもあり、女装のオネエさんだけどパパでもあることに向き合うゲイなど、自分の殻や守られたホームから飛び出したからこそ進める一歩、という誰にでも通じる前向きな成長も描いていて、観終わった後は「楽しくてホロリともする良い旅に同行できた」って気になるんじゃないかしら。

『パリ、夜は眠らない』

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
PARIS IS BURNING Trailer
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『プリシラ』よりさらに前の1990年に公開されたドキュメンタリー映画です。タイトルはパリだけど、舞台はNY。それも主に黒人やヒスパニックなどが集まる「BALL」と呼ばれるゲイクラブでのダンスバトルの世界を描いてるの。

そしてここから、現在も全く色褪せないマドンナの神曲『VOGUE』で世界中に知られたダンススタイル「ヴォーギング」が生まれたのね。ボールに集う貧しいダンサーたちが、彼らの憧れでもあるセレブな世界の象徴、ファッション誌<VOGUE>に出てきそうなモデルポーズを取り入れて生まれたヴォーギングは、マドンナが世界に知らしめた90年代以降も、オネエセンスあふれるクールなダンスとして定着。Perfumeの一部の曲の振り付けや、インスタでも流行った小藪さんの「カズニョロポーズ」も、源流は60年代からのゲイクラブで育ったモデル気どりポージングだったのね。アタシも仲良くさせていただいてる天才マイキー率いるダンス集団「東京ゲゲゲイ」や、椎名林檎ちゃんやマドンナねえさんもPVに起用したAyaBambiもヴォーギングベース。ダンスが好きな女子なら、その源流や意味が記録されたこの映画を観ておいてソンはないんじゃない?

他にも、セクシュアリティや人種、貧困などの社会問題の記録映像としても見どころたっぷり。まだミドルティーンくらいの親に捨てられたようなゲイやトランスの子たちが、「ハウス」と呼ばれるダンスバトルの「族」みたいなコミュニティに所属して、ハウスマザー(族長みたいな女装姐さん)のもとで、それぞれのファーストネームの後にハウス名を付けて活動してるの。人気の「ハウス・オブ・ニンジャ」のウィリー・ニンジャは、映画内で語った夢の通り、マドンナのPVで振り付け・出演をして世界を巡る人気ダンサーに。ゴルチエのモデルをしたり、パリス・ヒルトンにウォーキングを教えたりセレブの仲間入りを果たしたのよ。(2006年にエイズで逝去。合掌)

大都会ニューヨークの片隅で、彼らが擬似家族的に身を寄せ合う姿に愛しさと切なさと心強さを感じつつ、そのハウス同士が「あんなババアの率いるハウスは終わってる」みたいにけなし合うのもオカマらしさ。主役級に目立ってた美人トランスジェンダーが途中で殺されちゃったり、ドキュメンタリーならではの展開もすごい。映画としての見せ方以前に、登場するオネエさんたちの「人間」そのものの面白さに引き込まれる作品ね。

『シリアル・ママ』

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最後は鬼才ジョン・ウォーターズ監督の『シリアル・ママ』。監督はゲイで、伝説のドラァグ・クイーン「ディヴァイン」を世に知らしめた人なんだけど、一般人にはついていけないカルト作品が多いの。そんな中、『シリアル・ママ』は分かりやすいブラック・コメディに仕上がっててイチオシ! …とはいえ、やっぱり十分に頭おかしいんだけどね。

主人公はゴールデン・グローブ主演女優賞に輝いてる大物キャスリン・ターナー。そんな彼女が、一見善良な主婦、でも本当はささいな「曲がったこと」で近所の人々を血祭りにあげる連続殺人鬼という怪演をこなしてるの。そう、アメリカの家庭の朝食「シリアル」と「シリアル・キラー」をかけてるママなのね。

優しく家族を送り出したママがまずすることは、近所の主婦への嫌がらせ電話。いきなりドスのきいた声で「このチ○ポ吸い!」って罵倒するママの笑顔がたまんない。ちなみに理由は、駐車場で横入りされたから。怖いわー。アタシが一番好きなお仕置きは、「レンタルビデオを巻き戻さずに返すババア」だわね。理由に時代を感じるけど。大音量でかかるミュージカル『アニー』のテーマに合わせて、骨付き肉でババアをはたき殺しながらママが叫ぶの。「Rewind(巻き戻せ)!」って。

この映画がさらにすごいのは、ママの凶行がバレてからの展開。精神疾患を理由にしようとした弁護士をクビにして、自ら弁護を始めるんだけど、もーほんと良い意味でヒドい。ママがスター化していくところも含め「悪ってなんだ」って監督らしい風刺もあるし、何よりこういうギリギリで下品で、でもウィットもある毒って、まさに本来のオネエ文化が培ってきた「武器」なのよね。ただの悪口とはまるで違う、毒のあるユーモアをこの映画から学んでみて。学べば学ぶほど、キツいオカマみたいな女になっちゃうとは思うけど。

てか、長ぇーなオイ! ババアのオカマに思い入れのある映画を3本も語らせたら、そりゃ長くなるってもんよ。でも本当にステキな映画だから、いつか観てくれたら幸いよ。古き良き映画の世界へ、HAVE A NICE FLIGHT