いろいろ口出ししてくるアナタは、一体ワタシの何を知っとるの?

人間の三代欲求は「食欲」「性欲」「睡眠欲」ですが、これはどこかしらで関連していることは想像に難くありません。学術的な信憑性は定かではないものの、よく言われるのは「どこかが満たされないと、その他が爆発的になる」という説で、「寂しい女は太る」みたいなことを言い出す人が出てきたのはここらあたりからじゃないかと思います。

お腹が減る上に妙に眠いのは、そうかそうか夜の相手がいないからか……と妙に納得しちゃってるアナタ、んなワケないじゃないの。赤ちゃんだろうがお寺の坊さんだろうがラブラブの恋人同士だろうが、腹減るのは食べる量が足りてないからだし、眠いのは寝る量が足りてないからです。「性的に満たされてるから、お腹も減らないし全然眠くならないの」なんて人には、個人的にはお目にかかったことはありません。いたとしたら、たぶん別の病気です。わかんないけど。

大体何なんでしょう、「寂しい女は太る」ってのは。「全日本女子の個人的欲望肯定委員会」(今作りましたけど)の会長である私は、こういう言説には妙に悶々とさせられます。普通に忙しく仕事して、男女平等だからと下手すれば社内の力仕事までやらされちゃったりするのに、「女は美しくあるべき」的な社会の空気のなかで金と時間をかけてそれなりを保ち、こういう社会ってストレスたまるわ~とうっかり暴飲暴食して1kg体重が増えたら、今度はそのことに罪悪感まで覚えさせられるって、いったいどこまで行けば許してくれるんでしょう。意味わかりません。

いえいえ、みんなガンガン食べて太ろうぜ!という意味じゃなくて、私の贅肉の意味をなんでアンタに定義づけされなあかんの?って話です。

世間が定義する「幸せ」や「罪」に、思い悩むのはアホくさい

個人的には「食べること」は女子最大の欲望だと思います。だから女子は美味しいものが出てくる映画や小説やマンガが大好き。『ショコラ』はそんな映画のひとつです。タイトル通り美味しそうなチョコレートが次から次へと出てきて「食べたい…」という欲望を刺激しまくり、チョコレートなしではこの原稿すら書けません。

それなのにそれなのに、映画の中で舞台になっている小さな村はキリスト教の「四旬節」という禁欲期間にあり、村人たちは敬虔なキリスト教徒であるがゆえにチョコレートのような贅沢品を禁じられているんですね。ここにやってきたショコラティエのヒロイン、ヴィアンヌは、チョコレートを村人たちにオススメしまくります。あなたの好みはナッツの入ったコレ。断食期間が終わってからでないと。それならせめて甘~いホットチョコレートだけでも。ダメよダメダメ、あああ罪の香りはなんてスイートなの……とまあ、やりとりはもはや笑顔のSMプレイです。

でも無神論者の彼女が「え? チョコレートのどこが罪なの?」とあまりに普通に言うので、村人たちが「え?罪じゃないの?」となり思わず食べてしまう、これががなんともリアルです。ものすごく重大だと思っていることでも、それをぜんぜん重要だと思わない人の存在があると、とるに足らないことに見えてきます。思い悩んでいた自分を「アホくさ!」と笑えるくらいに。

ま、世間が好き勝手に定義する「幸福」や「罪」なんて、しょせんそんなものなのかもしれません。