【悶々14】服従こそが幸福への道なのよ――理由はよう知らんけど。

「気持ちはわかるし自分も嫌だけど、そういうもんだから」って言われると、「わかってねーじゃん!」って思いますね。

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いちいち「なんで?」って聞くな!この知りたがり!

さて前回に引き続き、一見妖しく美しい少女たちの楽園、その裏にある言いようのない不気味を描いた映画『エコール』について。

森の奥にあるその「エコール(学校)」にいられるのは、6歳から12歳の少女だけ。卒業はそれぞれの「繁殖の準備ができたタイミング」で決まるのですが、それまでは高い塀で囲まれた敷地内から出ることは絶対に許されません。前回書いたように、少女たちの「可愛さ」は売り物にされてはいるものの、その買い手たるオッサンたちが直接手を触れる事態には決してならないよう、完全に守られています。

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でもそうは言っても、っていうか、そう言われるからこそ、外の世界や男の子に興味津々のお転婆娘もいるわけです。そんな少女たちが脱出を計画し実行した時、どんな末路を辿るのか。これがとんでもなく不気味な仄めかしとして、作品の随所に盛り込まれています。例えばこの学校にはエディットとエヴァというふたりの女教師がいます。エディットは脚が不自由なのですが、彼女がこの学校の生徒だった頃に「逃げ出した罰として脚を折られた」という噂です。一方、ある悲劇的な脱走事件の後、陰で号泣していたエヴァは、子供たちに言います。「服従こそが幸福への道なのよ」。

でも何が一番怖いって、理由を知らないまま「外に出ちゃいけない」と信じている上級生たちが、「出たら罰を受ける。死ぬまでここで他人に仕えることになる」と脅すように新入生に教え込んでいることです。いろんなことを「なぜ?」と聞く新入生(6歳)が、上級生(7歳)に「この知りたがり屋!」と折檻される、怖いんだか可愛いんだか、よくわからない場面すらあります。もちろん7歳が「なぜ?」の答えを知ってるワケがありません。

従順で世間知らずな「売り物」で、生涯生きてゆけるか

映画の原作「ミネハハ」は、死んだ老婆が残した手記の断片という形をとった小説です。これが100年以上前に書かれた作品だと聞いて驚くのは、この世界のエッセンスが今の時代と普通に共通するからです。

「先輩、女子の方が仕事できるのに、なぜ男子しか出世しないんですか?」「後輩よ、理由なんてないわ。わが社は女子は課長どまり、頑張ってもろくなことないわよ」「娘よ、あれこれと興味を持っても、外の世界には失望しかないものよ」「一体どんな失望が? ていうかお母さん、外の世界に出たことなくね?」「妻の一番の仕事は夫を支えること。これからは息子をお願いね」「お姑さん、それはどうしてですか。私だって夫と同じくらい仕事を…」「ええい、黙らっしゃい、この知りたがりが!世の中はそういうもんなんじゃ!」

んあああああ、悶々とします~。わかりますよ、わかります、人生の先輩の言葉がある面で真実だってことも。でも男社会の中で知らないうちに飼いならされた人の、怯えや恐怖、それを知らない無邪気な下世代への嫉妬や羨望など、様々な気持ちがないまぜになった結果の「同調圧力」だったりもします。時に人間は、自分を苦しめている社会的束縛を、自ら再生産して補強してしまう、そういう心理は本当に不思議です。

「エコール」は言ってみれば、「お嫁さん学校のプレスクール」――お料理お裁縫お洗濯など主婦に必須と言われる技術を仕込む「お嫁さん学校」ではなく、子供たちを「愛されるお嫁さんになりたい」と思う女子に育てる学校のようなものです。

地下の劇場のその奥には、外から来るおっさんたちから金をとる"やり手婆"のような老婆がいます。彼女が卒業目前の12歳の少女にこう言います。それまで描かれた美しい世界とは不似合いな声音で。「その脚は、外でも売りになるだろうよ」。少女たちが仕込まれるのは、何も疑問を持たない従順さと、「売り物」に値する美しさ。映画は決してそれを賛美してはいません。何しろここに入る6歳の子供たちは「棺桶」に入って運ばれてくるのですから。

映画には描かれない、少女たちの卒業後を思います。疑問を持つことを許されず、従順さだけを教えられた、世間知らずの美しい「売り物」たち。もちろん、そうした女子を求める優しい男性に出会い、幸せな人生を送るかもしれません。でも出会うのは、そうした女子を求める優しくない男性かもしれない。結婚とは違う関係を"従順に"飲み込まされるかもしれない。何かの事情で、生涯一人で生きてゆく可能性も、もちろんなくはありません。

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(C) L'Ecole,byLucileHadzhalilovi

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