先日アメリカで公開され、大きな話題を集めている、映画『ワンダーウーマン』(日本では825日に公開予定)。『スーパーマン』や『バットマン』で有名なDCコミックスの人気漫画を実写化したものなので、話題性は十分。でも、注目の理由はそれだけではなく、本作の監督が女性だということ。こうした製作費の高い映画の監督に女性が抜擢されることの大きな意味を、コスモポリタン アメリカ版がレポートしています。

5月末、<The Hollywood Reporter>に掲載された記事には、こんな見出しが。「パティ・ジェンキンスは、女性監督がスーパーヒーローの世界を描く可能性を開くか? 初めての女性主人公の漫画映画化に、これまで制作費800万ドル(約89,000万円)のインディーズ映画しか作ったことのない監督起用で、ワーナー・ブラザーズは15,000万ドル(約165 億円)の賭け」。

これを見た多くの人々がSNS上で即座に反応したように、「賭け」という言葉は、ハリウッドにおける女性監督の位置づけを暗に示唆するもの。たしかにジェンキンス監督の第一作『モンスター』は『ワンダーウーマン』に比べれば低予算映画だったけど、主演のシャーリーズ・セロンがアカデミー主演女優賞他数々の賞を獲るなど、話題を集めた作品。注目したいのは、低予算の映画やTV番組の監督が突然大きなプロダクションに起用されるのは珍しいことではないけれど、これまではそれが白人男性にとってだけだった、という点。

それだけに、『ワンダーウーマン』へのジェンキンス監督の起用は意義深いこと。実際、サンダンス・インスティテュートが行った最近の調査では、2002年から2014年の間で最も興行収益の多かった1,300の映画のうち、全体のわずか4.1%が女性監督によるものだったのだとか。また、今年2月に発表された南カリフォルニア大学アネンバーグ校の調査によると、そもそも女性監督の数は男性の24分の1で、そのキャリアは男性監督に比べて短い傾向があるそう。しかも、状況は改善の道をたどっているとは言い難く、サンディエゴ州立大学「テレビと映画における女性についての研究センター」の調査によれば、興行収益がもっとも多い250の映画のうち、女性監督によるものは全体の7%で、前年の2015年に比べて2%ダウン、1998年と変わらない数字に。

監督に女性が起用されるということは、映画製作のスタッフに女性が増えることでもあるそう。同センターが興行収益のもっとも多い500本の映画を調査したところ、女性が監督を務めた映画では、全体の64%が女性の脚本家を選び、男性が監督を務めた場合の9%を大きく引き離していたのだとか。つまり、女性が全体を統括する立場に起用されれば、より多くの女性が映画業界で働く可能性が増えるというわけ。

映画監督は長らく男性の職とされてきたけど、ジェンキンス監督は、監督業が典型的に女性的な特性を必要とするものだと言い、以下のようにコメント。「特定の仕事が男性のものだと信じられてきた長い歴史があるのは確かです」。「けれど、監督という仕事がそういうものの一つだったというのは、不思議な気がします。なぜかというと、それはとても女性にとって自然な仕事に思えるからです。(監督業は)ある意味でとても母性的なのです。あらゆることに気を配るわけですから」。

もっとも、ジェンキンス監督は、女性が同じようにチャンスを与えられても、その後の扱いには男女で差があることも熟知している様子。「もし、私がこれは難しいと分かっている仕事を引き受けて、実際そうなったら問題です。男性による仕事なら、映画会社の失敗の一つということに落ち着きます。でも、私が監督だったら、私の失敗のように見え、(女性一般についての)とても悪いメッセージを送ることになります」。

つまり、『ワンダーウーマン』が女性監督によるものだというだけでなく、(作品の出来が女性全体の評価にもつながるため)良くなければいけないわけだけど、実際、かなり評判は良いよう。後は興行収益が十分に上がれば、さらなる女性監督の活躍への道が開かれることに。ジェンキンス監督の起用は白人女性の成功であって、有色女性に対するチャンスはまだ閉ざされているというもあるけれど、本作の成功が、ハリウッドがより広い層に門戸を広げる一歩になることを期待したいですね。

※この翻訳は、抄訳です。

Translation: mayuko akimoto

COSMOPOLITAN US