【カンヌ映画祭レポ②】パルムドール&グランプリ受賞作を最速レビュー!

世界最大の映画のお祭り、カンヌ映画祭。最高賞パルムドール受賞作品ってどんな映画?を映画ライター渥美志保が最速レビュー!

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1日に5本の映画を見る、1年で最もハードな2週間

さてカンヌ映画祭。終わってみると「あっという間だった」という感じですが、初めて行ってみて、ホントにいろいろハードな映画祭だな……と思いました。

まず第一に、映画の上映スケジュールがハードすぎ(ヘタレぶりが露呈)。映画祭専用の劇場「パレ」では朝から晩まで映画が上映されっぱなし(当たり前)。それも初回が朝8時半から始まり、最終回で夜中の12時過ぎみたいな上映もあり、毎日5本ペースで見てる人もザクザクいます。

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ちなみに日本の出品作『無限の住人』は23時すぎからの公式上映で、記者の囲み取材は上映終了後の25時過ぎから、つまり皆さんが見たキムタクのコメントは夜中の2時前くらい。翌日はこれまた朝8時半から上映ですが、ジャーナリストはその最中も速報で原稿を送らなきゃいけないわけです。これを2週間やったらあなた、人間だもの、"半壊れ"になってもおかしくない!(体調壊した言い訳)ほんと、プロの人たちってすごいわあ(他人事)。

でもそれなら朝の上映をパスすればいいのでは!って思いますね。そうはいかないのがカンヌの意地悪さ(?)。朝イチの上映は11本ずつ上映される「コンペティション部門」、つまりカンヌのメイン部門の作品です。もちろん別の時間にもリピート上映されるのですが、昼間は記者会見や取材で時間がとられてしまうマスコミは、ここで見ておかないと見逃しちゃうわけなんですね。

過激なブラックユーモア炸裂のパルムドール受賞作『The Square』

そのコンペ部門。最高賞は「パルム・ドール(黄金の椰子賞)」といいます。ヤシの木は町中に生えているカンヌの街の象徴です。

でもってこの賞に今回選ばれたのが、スウェーデン映画『the Square』。監督のリューベン・オストルンドは、日本でも2年前に『フレンチアルプスで起きたこと』という作品が公開されている人。こちらは夫婦で見に行ったら絶対モメる、超リアルな「アホ男あるある」をブラックに笑いのめすという作品でした。

さて『the Square』は、ある美術館で企画された人の道徳観を試すインスタレーション作品「ザ・スクエア」をモチーフに、「助けを求める人に見て見ぬふりをするのか」というヨーロッパの今を問うようなシニカルな作品。クライマックスにはそれこそ背筋が凍るような不気味さがあるのですが、にもかかわらず主人公(美術館のキュレーター)の「アホ男」ぶりも含め15分に1度は笑わせてくれるのがすごいところ。

実は私はこの作品が最も面白かったのですが、最高賞の風格がある!的作品とは異なるブラックさと過激さに、これをパルムドールに選ぶ映画祭の果敢さ、自由さ、豊かさに、「カンヌってやっぱすげえ」と思った次第です。

美少年とマッチョの恋に「胸キュン」のグランプリ受賞作『120 Beats per Minute

カンヌ映画祭でちょっとややこしいのは、コンペティション部門に、この「パルムドール」のほかに「グランプリ」というのがあること。これは審査員賞、いうたら次点みたいな感じでしょうか。でもって今回選ばれたのが、コンペ部門で2番目のお気に入り作品『120 Beats Per Minute』。90年代初頭のフランスを舞台に、エイズの過激な啓蒙運動を繰り広げる同性愛者たちの青春を描いた作品です。

なんだかこちらも社会派風ですが、実のところ、恐ろしく恐ろしく恐ろしく「胸キュン❤」の映画なのです~!! 「ACT UP」と名乗る彼らの活動は、エイズで儲けている製薬会社を吊るしあげたり、高校の授業中に乱入してコンドームを配ったり、それはそれは過激なのですが、同時進行で描かれる運動を通じて知り合った2人(セクシー美少年と丸刈りマッチョ)の恋愛が純粋で可愛らしくて切なくて、胸がぎゅーっとなること間違いありません。

120BPM」って「1120拍」のことで、脈拍としてはすごく早いんですね。たぶん「エイズの症状で脈拍が早くなる」っていうのと「恋愛で胸の鼓動が早くなる」をかけてるんじゃないかなー。

さてさて最後に、参考までにコンペ部門のノミネート作品を末尾につけときました。ダメ一家もの、子供と動物もの、爆笑不倫もの、不条理ホラー、宗教SF……とまあ、あらためて見るとそのセレクションはものすっごい個性的。国内作品だけが並ぶオスカーとは全然違う、まさにヨーロッパの多様性そのものです。

でもって観客が気に入らなければ「途中退場」も「ブーイング」も当たり前。「悪い評価はわざわざ口にしないでも……」的な甘えがないのは個人的にはすがすがしいし、裏を返せば観客の絶賛はお世辞のない真実だってことです。タフな舞台だからこそ、スタンディング・オベーションがあんなにも感動的なんだな~。

(コンペ選出作品ラインナップ)

  • アルノー・デプレシャン監督『Ismael's Ghosts』(オープニング作品/賞の対象外)
  • ファティ・アキン監督『In the Fade
  • ノア・バームバック監督『The Meyerowitz Stories (New and Selected)』(Netflixにて)
  • ポン・ジュノ監督『Okja』(Netflixにて)
  • ソフィア・コッポラ監督『The Beguiled
  • ジャック・ドワイヨン監督『Rodin
  • ミヒャエル・ハネケ監督『Happy End
  • トッド・ヘインズ監督『Wonderstruck
  • ミシェル・アザナヴィシウス監督『Le Redoutable
  • ホン・サンス監督『The Day After
  • 河瀬直美監督『光』
  • ヨルゴス・ランティモス監督『The Killing of a Sacred Deer
  • セルゲイ・ロズニツァ監督『A Gentle Creature
  • コーネル・ムンドルッツォ監督『Jupiter's Moon
  • フランソワ・オゾン監督『L'Amant Double
  • リン・ラムジー監督『You Were Never Really Here
  • ベニー・サフディー&ジョシュ・サフディー監督『Good Time
  • アンドレイ・スビャギンツェフ監督『Loveless

※太字は日本公開が決定しているもの

Courtesy of Cannes Film Festival

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