美しく強く、信念を曲げずに生きる女性を、常に演じてきた女優のジェシカ・チャスティンさん。今もハリウッドを揺るがし続けている「ハーヴィー・ワインスタイン問題」でも、SNSを通じ世界中のセクハラ被害者たちを勇気づける投稿を続けています。その潔さと凛々しさ、そして可愛いさに女子ファン急増中! 今回はそんなジェシカさんのインタビューをお届けします!

――主演最新作『ユダヤ人を救った動物園』について教えてください。

私が演じたアントニーナは、ワルシャワにある動物園の園長の妻で、ともに園を切り盛りしているの。第二次大戦がはじまり、ユダヤ人が劣悪な環境のゲットー(居留区)に押し込められると、夫婦は危険を顧みずに、ゲットーからユダヤ人を救い出し、動物園にかくまうのよ。

――アントニーナとご自身との共通点はありますか。

動物を含め、生き物が大好きなところ。アントニーナに同意するのは、彼女がすべての生命を奇跡だと考えているところよ。彼女はヒーローだと思うけど、映画でよく描かれる武器で戦うタイプじゃないわ。彼女は愛と思いやり、共感によって戦うヒーローなの。

――ジェシカさんが演じる役には、常に女性だから表現できるヒロイズムのようなものを感じます。作品選びでは何を意識しているんですか?

「女性はこうあるべき」というステレオタイプを作っているのは映画でしょ。だから映画の中からそれを崩していかなきゃ

役を選ぶときに考えるのは、その役が、自分の目の前の世界に実際にいる女性像を、ちゃんと体現できているかどうか。これまで、割と男性優位の世界で働く女性を多く演じてきたけれど、現実にもそういう女性って多いでしょ。

今回と『ゼロ・ダーク・サーティ』では全く違うタイプだけれど、ふたりとも映画で描かれがちな女性像とは正反対だと思うわ。そういう現代的な視点から役を選ぶことも、私は大事にしているの。だってある意味で、「女性はこうあるべき」というステレオタイプを作っているのは映画でしょ。だから映画の中からそれを崩していかなきゃ。

――この作品で最も印象的だったことを教えてください。

この作品でいいなと思うのは、1930年代のジェンダーの問題を描いているところ。夫婦の力学も描いているわよね。私のお気に入りのシーンは、アントニーナと夫が喧嘩をする場面。毎日ゲットーに行き、ごみを運び出すトラックに数人のユダヤ人を隠して脱出させている夫は、「ただ家の中にいる君に、僕が外で経験していることなんてわかるはずない」と怒鳴るの。でもナチに監視され、地下室にかくまったユダヤ人たちがいつ見つかるかわからない中で1日を過ごすアントニーナは、「あなただって私がここでどんな経験をしているかわかってない」と言い返すのよ。

対等な立場にあるからこそ、人間は強い絆で結ばれていく

映画の冒頭では、すべてを夫の選択に任せていたアントニーナは、子供のような存在だった。でもラストに近づくにつれ、2人の立場は平等になってゆく。そうしたアントニーナの変化を描くことが、私にとっては重要なことだったわ。対等な立場にあるからこそ、人間は強い絆で結ばれていくんだから。

――この映画ですごく重要なポイントは、アントニーナのような普通の女性が、多くの人々を救ったことです。そこにはどんなメッセージがあると思いますか?

誰だって他人の人生に何らかの変革をもたらすことができると思ってもらえたら、私としては何よりも嬉しいわ。別に、戦争の英雄や有名な役者、政治的なリーダーである必要なんてないのよ。だって今の時代には、SNSという誰でも使える素晴らしいプラットフォームがあるんだから。

今、ハリウッドで起きている騒動だって、これまでのメディアだけだったらうやむやにされていたと思うの。まだまだ変化というにはほど遠いし、権力を持つ地位はやっぱり男性だらけだけど、女性たちも自分たちの力に気づき始めている。たくさんの女性たちがお互いに支援し合う動きも広がっているし。大事なのは、女性たちがひとつになること。それが恒久的な変化につながっていくと思うわ。

ジェシカ・チャステインpinterest

――SNSで女性支援を発信することを躊躇う女性も多くいると思いますが、ジェシカさんが恐れないのはなぜですか? 何か個人的なきっかけがあったのでしょうか。

この業界に入ったばかりの頃は、声を上げることを恐れ、恥ずかしいなとも思っていたの。変わったきっかけは『ゼロ・ダーク・サーティ』が公開された時に、デマの記事がでたこと。私と共演した女優さんの間で喧嘩しているというものだったわ。

その時私は「これが女優たちが経験してきたことなんだな」とわかったの。つまりメディアやスタジオは、女優たちに喧嘩させ虐げて被害者にして、一枚岩にならないよう努めてきたのよ。

私は即座にフェイスブックに「この記事はウソです」とアップしたわ。もちろんちょっと怖かった。だってメディアを否定するようなことを言えば、「気難しい女優だよね、ジェシカって」って言われてしまうかもしれないでしょ。でもその後に、気づいたのよ。スタジオやメディアは、私を「女性を分断する目的」に利用できなくなった、ってことを。私は「自分の人生を、自分でコントロールできている」とすぐに感じるようになったわ。

若い女性にも、「女友達っていいよね~!」って思いながら大人になってほしい

それからは、他の女優を支援するために声を上げ続けているの。女性は女性とうまくやっていけないなんてありえない、ステレオタイプな刷り込みなのよ。『ヘルプ 心がつなぐストーリー』なんて女性ばっかりの映画だったけれど、これまでで最高の現場だったもの。私は若い女性にも、「女友達っていいよね~!」って思いながら大人になってほしい。私たちに喧嘩させようとしている人たちもいるけれど、ひとつにまとまればより強くなれるしね。

ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命

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