映画『シックス・センス』『アンブレイカブル』『ヴィジット』などホラーのジャンルながらも、作品の最後にやってくる"どんでん返し"ストーリーが見る人を惹きつけてやまないM・ナイト・シャマラン監督。そんな彼の最新映画が『スプリット』。見知らぬ男に拉致され密室に監禁された3人の女子高生、そして23人もの人格を持つ多重人格者の犯人(ジェームズ・マカヴォイ)との密室での攻防を描いた作品だ。

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そこで注目したいの、その女子高生の1人ケイシーを演じたアニャ・テイラー=ジョイ(21)。2015年から映画やドラマで活躍を始め、米ホラー映画『ウィッチ』のトマシン役で高い評価を受けるなど、これらかの活躍が期待される演技派の若手女優。そんな彼女のインタビューを独占でお届けします!

―『スプリット』では、誘拐、密室、そして多重人格者という複数の恐怖の中での生きようとする姿を描いています。今回、ケイシー役のどこに魅力を感じたのでしょうか?

出演を考えたとき、一番に彼女のことをとても気に入ったの。とても思慮深く、かなり内向的なところをね。今までにそういう人物を演じたことがなかったから。映画『ウィッチ』のトマシン役は口数がとても少ないけれど、実はとても情熱的で自立心があった。そうやって振る舞えるようにはさせなかったトマシンのいた社会がある一方で、ケイシーのいる社会はオープンで気さくにいることができるの。でも、ケイシーはそうしないことを選ぶ。自分の世界にぎゅっと閉じこもってしまうの。みんなでテーブルを囲んでランチをしている時に、彼女はヘッドホンをして「あなたたちとは話したくないの」と言うのは、ケイシーにとってさして難しいことではないのよ。こんなに物静かで、内向的で…それでも観客とコミュニケーションをとる難題にはとてもワクワクしたわ。できれば、それがみんなに伝わるといいな。

――この脚本を初めて読んだとき、何を考えましたか?

ケイシーが多重人格である犯人の性格とどう向き合っていくのかということを考えたわ。それぞれの性格と向き合い方を変えられる能力が彼女にはあって、そうやって向き合い方を変えられるのは自分のためになると認識できるほどに彼女は聡明でもあるの。それってとても本能的なものだと思う。他の女の子たちはみんな、ケビンが嘘をついていると思っているし、すっかり怯えてしまっている。一方で、ケイシーは「私の直感がうずいているわ。この人たちとは個別に話ができて、この状況を乗り切れるような気がする」と思うの。

――誘拐される3人の少女のひとりを演じていますが、難しかったのはどのようなことでしたか?

難しい状況を、成長の糧にするの

感情を激しく表現し自分の置かれたあの場所でも、とても落ち着いていられたわ。でも、1日の終わりには疲れ果てていた…繰り返すのはとても難しいことだったと思う。でも、私はこういった難しい状況を、成長の糧にするの。何度もテイクを重ね、ただただ泣き続けるときは、(M・)ナイト(・シャマラン監督)に「演技に出せるぐらいの気持ちが作れたから、その気持ちを軽く揺さぶってもらえれば、いつでも泣き続けられるわ」と言って撮影を続けたの。

―追い詰められる役を演じ続けていましたね。最大の難題はどのようなものでしたか?

やりがいがあると思えることがあったわ。この撮影と同時に『ウィッチ』のプロモーションが始まったの。月曜から金曜までいろんな緊迫したシーンの撮影をして、金曜の夜に電車に乗ってニューヨークに。土日で雑誌の撮影をしたあとに、フィラデルフィアに戻ってまた月曜から金曜まで撮影をしていたの。その繰り返しを3カ月間続けていたわ。その終盤の頃までには、自分がどこにいるのかもう分からない状態だった。でも、すごく素晴らしい機会だったわ。セットに戻るたびに、幸せだったの。それが私の仕事で、私は挑戦することが好きだから簡単なことだったんだと思う。

――モデルとしてキャリアをスタートされていますが、今回の演技を通じて、モデルでは学べなかったことはどんなことがありますか?

不思議なことだけど、世間は私が長いことモデルをしていたと思っている。でも、2~3カ月間モデルをしたあとすぐに、演技を始めたのよ。私はエネルギーにあふれているから「もう疲れた」と言えるまで全力で何かに打ち込めると気分がいいわ。さらにその状態でも、芸術に対する情熱にかき立てられるから、もっと打ち込みたいと思うの。そうやって私は演技に打ち込んでいるわ。

――本作ではベティ・バックリーやジェームズ・マカヴォイとの共演をしていましたが、どんなものでしたか?

一緒に出るシーンは全くなかったけれど、ベティ・バックリーとはセットから離れたところですごく多くの時間を一緒に過ごしたわ。いずれにしても、ベティもジェームズ・マカヴォイもとても刺激を与えてくれる人で、緊迫したシーンの撮影時には常に勇気づけてくれるの。ジェームズからは絶えず刺激をただ受けていたわ。恐れ知らずで、目標に向かってただ進む…素晴らしい仕事をしているの。その姿に私は「よし、引けを取らない演技をしなくちゃ」と思ったわ。そうやって背中を押されて、ある程度は恐れ知らずになれたと思う。

――ジェームズ・マカヴォイによる多重人格者の演技に、あなたはどうやってそれに対処したのですか?

ジェームズ・マカヴォイは演技が本当にうまくて、お互いの顔をすごく近い距離で長い時間見ていたので、自分が(さまざまな人格のうちの)誰と話しているのかよく判断ができたわ。 あるシーンでは、同時にいろんな性格に対して私がリアクションを取る場面があるの。そこは、ケイシーのストーリーとしては、途方に暮れてしまっているところで、他と比べても演じるのが難しかったところね。すべての恐怖を長い間払いのけてきて、その時点でケリがついたの。だからそこで、ジェームズが全力で迫ってきた時には、その瞬間はそれに対応しようとして気分的に疲れてしまったわ。

この映画は、単純な超自然スリラーものではありませんが…。どのくらい期待通りに物語が進むのか知っていましたか?

M・ナイト・シャマラン監督の映画よ!  期待を持った瞬間に、全く違うものになるでしょうね。撮影が終わるまで、もしくは撮影の途中まで何も判断することはできないわ。だから、今までに出演した映画では、私が参加した時点でそれがどんなものになるのかまったく分からなかったけど、映画制作のプロセスのそういうところが私は好きなの。先がどうなるのか分からないけど、激しいジェットコースターのような展開に理がかなっていれば、そのための準備はするわ。私が出た映画はすべてそうやってきたの。どれもかなり緊迫する映画だったから、今は「なるようにしかならない」と思って仕事を進めているわ。流れに任せて進めているだけよ。

この映画はどんな作品と言えますか?

思いがけない展開となりゆきに満ちたハラハラドキドキするスリラーね。実はアルゼンチンで友達と家族のみんなで観に行ったの。そしたら映画の最後で、友達の1人にこう言われたわ。「誤解しないでほしいんだけど、アニャが出ていなくても私はこの映画を見に行ったと思う」って。それに対して私は「どうして誤解するの? すごくいいことじゃない。クールな映画だわ」と答えたわ。それから、ブラックユーモアもあって、とても楽しめるのは、作品の気に入ったポイントのひとつね。

――ナイトと一緒に仕事をしましたが、監督としての彼はどんな人ですか?

私の場合、ケイシーと関係してくるわ。彼女はとても繊細だから、ナイトは私に「思ったことを目の前にただ思い浮かべるんだ」と言ったの。監督が役者にかける言葉としては最高なものだと思う。おかげで、それほど度を越した演技をしていないし、表情からいろんな感情が読み取れる。観客を甘く見ないのはいいことだし、実際に観客はキャラクターの目や表情を見てそのキャラクターが何を言いたいのかがわかるのよ。私たちそれぞれに対してとても気を遣ってくれて、私たちが必要とした心配りをしてくれたわ。

――あなたが出演した前作『ウィッチ』のあとに、同じような情熱的な人物を演じる際、どうやって対処しましたか?

『スプリット』をやって、そのあとに『バリー』と『Thoroughbred(原題)』、それが終わった3日後に『Marrowbone(原題)』の撮影に入ったわ。はひとつの緊迫した状況から別の緊迫した状況に飛び移る時、私が必要とした息抜きには「詩」が本当に役立ったわ。撮影現場でなにかしら耐えている時に、たくさんの詩と歌を書くことは私の力になってくれる。それから、ベティ・バックリーが飼っている犬のピッパをセットに連れてきていたから、ちょっと深刻すぎる状態になると、みんなでピッパを抱きしめたわ。

――撮影はどうでしたか?

スタッフは素晴らしかったわ。今でも親しくしている素晴しいスタッフとは、固く1つに結ばれたの。働いただけではなくて、遊びにも一生懸命だったわ。みんなお互いのことがとても好きだったから、真剣なシーンを撮影するのも簡単にできたの。でも、どんな映画の現場もそういうものだと思う。シーンに入れば、一瞬で、私は真剣になって、無口になって、どんなことでも演じられる。その一方で、現場に入って役の気持ちを作れたあとに、我に返って撮影部の人と一緒になって冗談を言うのが好きなのよ。いいバランスが取れていると思うわ。映画の現場の雰囲気は、闇とユーモア、それから闇だけ、ユーモアだけと続けて起きるの。それが、"撮影"を表しているように思う。ただ、ユーモアは闇とは程遠く、より多くの愛で満ちているの!

――そういったユーモアと闇があることを含めて、あなたは演技に魅了されたのでしょうか?

ユーモア(光の部分)と闇があるし、すべての人間に本来備わっているものなの

だれの心にもユーモア(光の部分)と闇があるし、すべての人間に本来備わっているものなの。闇がある事実を隠そうとする人がたくさんいる。でもそういう人たちは、闇を隠すときに、同じ闇を持ったまったく普通の人が、孤独感を深めていることに気づいていないの。だから、闇のあるストーリーを伝えるときは「あなたは1人じゃない。同じことを乗り越えた人もいる」と伝えているわ。

子供の頃、そういう闇を持つストーリーを見るときはいつも、私はとても孤独だったわ。英語を話せなかったし、子供の頃は孤独だったの。自分がどこにいるのかもわからず、訳が分からなくなっていて。でも、あるとき偶然、高校でいじめにあっている子供の映画を観て、「何か繋がりが感じられる。このストーリーの中に私自身を見ている気がする。孤独感が薄らいで、少しは普通になれた」と思えたわ。私の出ている映画を観る人も、同じことを感じてくれると嬉しいわ。

――M・ナイト・シャマラン監督は、リサーチから初めて、その後空想を始めるそうです。あなたはどのようにして自分の想像力を持ち続けていますか?

私はとても豊かな想像力を持ち続けていると思うけど、問題はそれを抑え込むことがたまにあるの。想像力をそれほど養う必要はないと思っているわ。それをできるのは演技だと思う。演技を始めると、虚構の世界と知りながらも一時的にそれを本物だと信じる状態になるの。例えば、『ハリー・ポッター』を観る場合、ドラゴンは現実には存在しないと思ったら楽しめないでしょ? 常識を一旦おいて、映画の世界に飛び込み、あるがままを受け入れたら、楽しめるはずよ。

M・ナイト・シャマランの空想もそうだと実感している。彼はとても壮大な世界を作り出し、現実と魔術を見事なまでに融合させたの。その世界観で演技をできるのはとても光栄なことね。(『スプリット』に登場する、ほかの女子高生2人の)クレアがマルシアにこう言うセリフがあるの。「ダサいセーターを着ている自分が家にいて、家のドアの外には獣がいると想像して。現実とシュールさは、まさにとなり合わさって存在している」と。


スプリット

10月6日(金)ブルーレイ&DVDリリース

価格:3,990円(税抜)/本編約117分+特典約47分

発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

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「スプリット」Blu-ray&DVD 10.6 Release!
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