350ml缶を1本飲めば、スプーン10杯の砂糖を獲ることになる

誰もが「今年こそ!」と決意新たにダイエットに挑む春。そんな季節に、全日本の女子に見てもらいたい映画があります。それがオーストラリアで大ヒットした『あまくない砂糖の話』。オーストラリアの俳優でもあるデイモン・ガモーが、「砂糖」の真実を知るべく、自ら挑んだ人体実験ドキュメンタリーです。

オーガニック生活を続けていた監督は、奥さんの妊娠を機に「子供の健康のために食べるべきものは?」と考え始めます。特に知りたかったのは、常に「人体に絶対に必要」「身体に悪い」と議論の的となる「砂糖」について。何が本当か分からない、ならば自分の身体で確かめようと一念発起した監督は、オーガニックな生活の中でほとんどとっていなかった砂糖を、毎日160g(オーストラリア人の1日平均摂取量)ずつ60日間摂り続け、身体にどんな変化があるか記録することに。

160gといえばティースプーンで40杯分。甘いものどんだけ食べまくるのかと思いきや、実験に関わる専門家は言います。「低脂肪が売りの、いわゆる"ヘルシーフード"を食べるだけで十分です」。どういうことなんでしょうか?

――実験のルールを教えてください。

1日の摂取カロリー(2300kcal)と運動量(週2回のランニングと筋トレ)はこれまでと変えないこと。糖分の中でも「甘さ」の元であるショ糖と果糖のみ(米や麦などブドウ糖や、牛乳に含まれる乳糖を除く)をカウントすること。アイスクリームやソーダ類などのジャンクフードを食べず、低脂肪を謳ったヘルシーフードを選ぶこと。

――1160gってどのくらいでしょうか?

ティースプーン40杯分です。例えば朝食に、ジュース、シリアル、無糖でないヨーグルトを食べれば、それだけでスプーン20杯分くらいにはなりますね。

――身体にはどんな変化がありましたか?

12日目の最初の測定で早くも3.2kg、最終的には8.2kg太りました。内臓脂肪が激増したウェスト周りは10cmも太くなり、触れば波打つ完全なメタボ腹に。18日目には脂肪肝の兆候が出始めました。起き抜けの身体はだるいし、物事にぜんぜん集中できなくなりましたね。気分的にも上がらず、甘いものが欲しくなって、食べると妙にハイになるんです。実験前は同年齢の欧米人にくらべやせ形で、数値的にも健康でしたが、実験後は糖尿病の兆候も出ていたし、肝臓は永久的なダメージが出る寸前のかなり危険な状態になっていしまいました。

――実験を始める前は、どれくらいの結果を予想していましたか?

ここまでとは思いもしませんでしたね。だってコカ・コーラをがぶ飲みしたりチョコレートを山ほど食べたりしたわけでもなく、ローファットヨーグルトやフルーツたっぷりのスムージー、繊維質たっぷりのグラノーラ・バーなど、いわゆる「ヘルシーフード」のみを食べていたんですから。実験期間を60日に設定したのも、30日では大して変わらないんじゃないかと思ったからです。だから自分の身体の急激な変貌にはすごい衝撃を受けましたし、実験に参加した医師や研究者たちもすごくビックリしていました。2か月くらいで肉体的にも精神的にも元に戻りましたが、最初からわかっていたらやりませんでしたね、絶対に(笑)。

●加工食品と砂糖の超大国アメリカにある、衝撃的事実

低脂肪で風味が足りない食品に「食べ応え」を出すために大量に加えられる砂糖。食べれば食べるほど、もっと食べたくなる砂糖。そんなこんなで、このまま摂取量が増えていったらどうなっちゃうのか。その行き着く先を求めて監督が飛んだのは、ひとりあたり年間消費量が60kgという砂糖消費大国アメリカ。1990年代のペプシvsコカ・コーラ戦争でペプシが勝利したケンタッキー州では、その主力商品「マウンテン・デュー」を飲んで育った子供たちの歯が、た、た、大変なことに……

――映画の中で個人的に一番ショックだったのは、小さい頃から「マウンテン・デュー」を飲み続けたことで、総入れ歯にするハメになった少年のエピソードです。彼がそれでも「今後もマウンテン・デューを飲み続ける」と言っていたことに本当に驚きました。

彼が最初にマウンテン・デューを飲んだのは2~3歳の頃。それから1日に12缶は飲んでいた、この町ではそれが普通だったと言います。「マウンテン・デュー」は1.25Lのペットボトルに入っている砂糖はティースプーン37杯、カフェインはコーラの4割増しで、中毒性がすごく強いんです。

――よく見かける炭酸飲料などには、だいたいどのくらいの砂糖が入っているのでしょうか。

例えばコカ・コーラは100mlあたり45kcalなので、350ml缶で約157kcal(栄養成分は炭水化物のみ)です。砂糖は1g4kcalなので約40g。ティースプーン1杯の砂糖は約4gですから、350ml1本でスプーン10杯の砂糖が入っているんですね。エナジードリンクはさらに多く、1本で1617杯入っていて、それだけで推奨される1日の摂取量(ティースプーンで1115杯)をオーバーしてしまいます。これを知っていたら、当然、親は子供には飲ませないですよね。

●とはいえ、食べたい時もある女子にオススメの、砂糖を減らす方法

実は春先の3~4か月は「白砂糖抜き」を実践している私。というのも数年前、毎年この時期に悪化するアレルギー的な肌荒れの原因が砂糖であることに、経験的に気づいたからです。

思えば糖分と水分で生きていた若い頃は不眠気味だったし、朝起きるなり泥のように疲れていたわ……思い当たることだらけのこの映画。

確かに確かに、減らした方がいいのかも・・・・・・でも、それでも食べたい時もあるのが女子というもの。どうしたらいいんですか、監督。

――摂取する糖分を減らすためには、どうすればいいでしょうか。

ティースプーン1杯=4gというデータを頭に入れて、自分が毎日どのくらいの砂糖を摂取しているのかを意識すること。そして野菜や果物など――いわゆる「本物の食べ物」を極力食べるようにすること。そのまま食べれば糖分だけでなく繊維なども含まれているし、例えばそのままのリンゴならひとつでかなりお腹は膨らみますが、ジュースにすれば簡単に4つ分の糖分を摂ってしまいます。加工品から「本当の食べ物」にシフトしていくことが大事です。

――明日からできる具体的なオススメの方法はありますか?

まずは飲み物ですね。砂糖が大量に含まれている、ソフトドリンク、濃縮還元ジュース、エナジードリンク、ビタミンウォーターなどを飲まずに、普通の水やノンシュガーのお茶のようなものに切り替えること。それから甘いものが欲しくなったら、デザートでなくフルーツを。もちろん、チョコレート「ちょっとだけ」くらいなら、毎日食べてもそれほど悪いことではないと思いますよ。

――毎日食べてもいいチョコレート「ちょっとだけ」っていうのは、どのくらいですか。

そうですねえ(笑)、ダークチョコレートを選ぶとして――あれは砂糖が少ないから――小さなチョコレートバー1本くらいですかね。意外と多いでしょ? 他を食べなければ、それくらいなら大丈夫です。

――実験中は監督も砂糖の禁断症状に苦しんでいましたが、そうなった時に、何か代替品になるものはありますか?

フルーツ、ベリー系やバナナなんかがいいと思いますよ。これは科学的に実証されていることですが、砂糖を摂取した時に分泌される特定の脳内物質は、良質な脂肪をとった時にも同じように分泌されるんです。ですからココナッツやアボカドなどは、砂糖の代替物になりますよ。特にココナッツは、そのままやオイルの他にも、ココナッツクリームやもココナッツミルクなどがあっていいですよね。バナナとココナッツクリームを合わせたスムージーなんて最高に美味しいし。砂糖の中毒反応が出ている時にオススメです。

――この映画を見て、人々にどんな変化が起きてほしいですか?

砂糖に対する恐怖を感じてほしいわけじゃなく、食べ物は人間の肉体だけでなく、感情や精神にとっても重要なものなんだなと知ってほしいですね。特に僕の場合は、ずっと砂糖をとっていなかったから敏感に反応した部分もあると思います。砂糖が美味しいのは分かっているけど、古い友達みたいな感じで少し距離を置いて付き合っていくのがちょうどいいのかもしれません。でも本来はセンシティブなのに、それに気づいてない人もいると思いますよ。もちろん毎日食べても大丈夫な人もいるけどね。

(参考)※体格や活動量の違いを加味した女性1849歳の推定エネルギー必要量は、16502300kcalWHO(世界保健機関)は砂糖で摂るエネルギーは、その10%未満(165230kcal)に抑えることを推奨。砂糖は4kcal=1gなので、165230÷441.25g57.5g。ティースプーン1杯=4gとして、1117杯。

日本人の食事摂取基準(2015年版)報告書年版)報告書WHO Guideline:Sugars intake for adults and children


『あまくない砂糖の話』

3月19日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

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