旅は新しい風景や人と出会って、日常をリセットしてくれる。現実をポーンと捨てて旅に出たい…そんな気分になること、ありませんか? すぐに行けなくても、映画の登場人物たちと一緒に旅に出ることならできるかも。
ここでは、喜びや悲しみや出会いをぎゅっと集めた旅をテーマにした新旧ロードムービーをご紹介。見終わる頃には、もう荷物をまとめているかも!
『橋の上の娘』
(2000年、フランス映画)
ナイフ投げ芸人ガホール(ダニエル・オートゥイユ)は、ある日パリで橋の上から身を投げようとする若い女アデル(ヴァネッサ・パラディ)に出会う。人生を諦めていたアデルに、ガホールは「死ぬ気なら自分の的になれ」と大道芸の旅に誘う…髪を切り、ドレスをまとい、美しい「的」に変身したアデルと、彼女に刺さらないギリギリの位置に的確にナイフを打ち込むガホール。
行く先々で賞賛を浴びる2人の間には不思議な感情が生まれていく…美しいモノクロの映像と、手も一切触れない2人の間の深いエロスにドキドキする映画。若き日のヴァネッサ・パラディの美貌とスタイルにもうっとり。パトリス・ルコント監督。
『サイドウェイ』
(2004年、アメリカ映画)
親友で売れない俳優ジャック(ポール・ジアマッティ)を、彼の結婚前にワインとゴルフの旅に連れていった教師で作家志望のマイルス(トーマス・ヘイデン・チャーチ)。カリフォルニアのワイナリーには、マイルスが恋する女性マヤ(ヴァージニア・マドセン)が働いている。極上ワインを親友と2人で堪能する優雅な旅のはずだったが、ジャックはチャーミングなマヤの友人ステファニー(サンドラ・オー)に夢中になり、婚約中なのを隠して彼女と関係を持ってしまう。反面ジャックとマヤの関係は一向に進む気配がなく、どんどん全てがギクシャクしていく…。
ストーリーは辛口なのに、カリフォルニアの美しい風景、ワイン、ピクニック風景のせいか、気がついたらゆったりとした気分に。ワイングラスを傾けながら観るのをオススメしたい作品。
『モーターサイクル・ダイアリーズ』
(2004年、アメリカ映画)
「世界があなたを変える時、あなたは世界を変える人になる」という英語の謳い文句通り、若き日のチェ・ゲバラの南米旅行記をベースに、彼の南米横断の旅を描いた映画。喘息持ちの医大生で後のチェ・ゲバラであるエルネスト(ガエル・ガルシア・ベルナル)は先輩アルベルト(ロドリゴ・デ・ラ・セルナ)と共に一台のバイクにまたがり、12000キロの南米横断の旅に出かける。その行程で起こる事故、出会い、目の当たりにした光景を通じ、南米社会の現実を知ることになる。
ガエル・ガルシア・ベルナルの美貌にもうっとりするけど、それより南米の美しい風景に圧倒される。
『それでも恋するバルセロナ』
(2008年、アメリカ映画)
奔放なクリスティナ(スカーレット・ヨハンソン)、お堅いヴィッキー(レベッカ・ホール)、遊び人のファン・アントニオ(ハビエル・バルデム)、そしてその激しすぎる芸術家の妻マリア・エレーナ(ペネロペ・クルス)が繰り広げる、ウディ・アレン監督の喜劇。
ロードムービーというよりは滞在型のバカンスという感じだけど、情熱の国スペインで開放的になってしまう2人のアメリカ娘と彼女達を翻弄するスペイン人の芸術家カップルの対比が面白い。スカーレット・ヨハンソンも可愛いけど、狂気すれすれの芸術家を演じるペネロペ・クルスがやっぱり最高。エキゾチックなスペインの風景も素敵。
『リトル・ミス・サンシャイン』
(2006年、アメリカ映画)
ぽっちゃりしてお世辞にも美人とは言えない7歳の女の子オリーブ(アビゲイル・ブレスリン)が、両親(トニ・コレット、グレッグ・キニア)、いつも不幸せな父親違いの兄ドウェイン(ポール・ダノ)、自殺未遂を起こしたゲイで哲学者の叔父フランク(スティーブ・カレル)、ヘロイン中毒のために老人ホームを追い出された退役軍人の祖父(アラン・アーキン)というかなり風変わりなメンツで、カリフォルニアで行われるミスコン「ミス・サンシャイン・コンテスト」に向かうというロードムービー。
ある意味家族の全員が社会の落ちこぼれとしか言えないのに、なぜか最後にはじわじわとこの一家が愛おしく思えるから不思議。人をいつの間にか勝ち組と負け組に分けてしまう風潮やその無意味さと真っ向に向かいあった映画。
『LION ライオン 25年目のただいま』
(2016年、オーストラリア、アメリカ、イギリス映画)
5歳で親とはぐれ、オーストラリア人に養子として育てられた青年が、<Google Earth>を使い、本当の親を探し当てたという実話を元にしたストーリー。オーストラリアで家族や友人たちに囲まれ幸せな人生を送る青年サルー(デブ・パテル)。実は彼はインドで迷子になった後に保護され、養父母に引き取られたのだ。
「今もインドで自分の本当の家族が自分を探しているかもしれない」「自分だけが幸せでいいのか」という思いに苛まれるサルーは、自分のわずかな記憶と<Google Earth>だけを頼りに、自分の家族を探し始める。愛と旅と知恵、そして現代の技術の進歩に感動するロードムービー。
『イントゥ・ザ・ワイルド』
(2007年、アメリカ映画)
1992年にアラスカの荒野で青年が遺体で発見された事件を元に、俳優兼映画監督のショーン・ペンが映像化した作品。裕福な家庭に生まれ、成績も優秀で将来を期待されていたのにもかかわらず、すべてを捨ててアラスカを目指した青年クリス・マッキャンドレス(エミール・ハーシュ)。その過程で人と出会い、幸せの意味を理解していく。
映画が公開されると、実在のクリスの生き様や彼の人生に注目が集まるように。後に、実の妹によってクリスの父親による妻や子供への暴力、破綻した家庭生活、自分自身から逃げようともがいたクリスの実像が明かされている。映画の中で厳しくも美しい自然や数々の出会いの中で人間らしく生きることができたクリスの末路は衝撃的でも安らかでもある。生き方に迷う人多くの人の心に寄り添う映画。