SNSを何もやっていない」という人を見つけるのが難しい昨今。すっかり私たちの"生活の一部"となりつつあるSNSだけど、「これだけ毎日SNSをやってると、自分の"脳" に何か影響を与えるのでは?」と考えたことのある人はいませんか?

コスモポリタン イギリス版のエディター、カトリーナ・ハーヴィ=ジェナーもそんな疑問をもった1人。彼女は自身のある経験からSNSが脳や精神に与える影響を分析し、記事にすることに。「いいね!」の数を過剰に気にしたり、何でもSNSに書き込まなくては気がすまない人は、海外でよく言われる"ソーシャルディアFOMO(=Fear of missing outの略。取り残されるのが不安になる現象)"の可能性があるのかも。

以下に紹介するカトリーナの記事を参考にして、この機会にSNSとの関わり方を考えてみては?

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コスモポリタン イギリス版のエディター、カトリーナ・ハーヴィ=ジェナー。

「いいね!」の数が、目の前のデート相手よりも気になった。

私がコスモポリタンに採用されたときのことをよく覚えています。感激のあまり、直ちに3つのことをしました。まず15分間に渡り飛んだり跳ねたりしながら喜びを噛みしめました。次に両親に電話を掛けて報告。そして電話を切った後、すぐに下記のコメントをSNSに書き込み、就職の喜びを世界に向けて発信したんです。

この就活に何カ月も掛かったけど、とうとうコスモのジャーナリストとして採用されたわ! 待ちきれなかった!

この投稿は900人以上いる"オンライン上の友人たち"に送られました。でも実際には彼らのほとんどと2年以上連絡を取っていません。でも私はこの"オンライン上の友人たち"と喜びを分かち合い、「おめでとう」と言ってほしかったんです。

実は採用通知を受け取ったこの日の晩、ある男性との "最初のデート"の約束をしていました。ディナーに出掛けたのはいいけれど、私は目の前の彼より「いいね!」の数(が増えていく動向)が気になって仕方なかったんです。デート相手があまり私の好みではなかったということもあったのですが、実際に会っている人からの「おめでとう」という言葉より、ヴァーチャルな世界からの反応の方が大切でした

でもこの経験を通じて「これって何か変!」と気づきました。ヴァーチャルな反応を毎日必死に追い求める現象に違和感があった私は、「いいね!」をもらうことが心身に与える影響について探り始めました。

「いいね!」に酔いしれる、という現象

SNSで『いいね!』やポジティブな反応をもらうたび、喜びの感情に関連している脳内神経伝達物質ドーパミンが分泌されます」と語るのは、心理学者のエマ・ケニーさん。

「これはお酒を飲んだときと同じような現象なのです。お酒を飲んで良い気持ちになるともっと飲みたくなるように、SNSで『いいね!』をもらうともっとたくさん『いいね!』がほしくなります。つまりこれは良い気分になるために作動する脳内サイクルなのです」

最近の研究によると、この脳内サイクルはチョコレートを食べたり、宝くじに当たったときと同じように、たくさんの「いいね!」をもらったときも作動するとのこと。また実際には知らない人であっても、その人がたくさん「いいね!」を貰った投稿を読んでいるうちに、個人的な繋がりを感じ始める傾向があることも判明したんだとか。

不幸話もシェアしたい

SNSの投稿は幸せなニュースで溢れているわけではありません。不幸な出来事や悲しい気持ちを誰かに電話して聞いてもらう代わりにSNSに書き込み、反応をもらうことに喜びを感じている人もたくさんいるとのこと。

「(不幸話をシェアすることは)悪いことではないんです」とケニーさんは解説します。「オンラインに投稿すれば、そのニュースを多くの人が知ることになります。そして本当にその人を心配する人だけが実際に連絡してくるでしょう。"投稿する"という行為が悲しみをやわらげる"カタルシス"として機能する場合もあるんです」。

SNS上の反応の方がより重要に感じる

SNSが身近になればなるほど、最近よく見られる「実際の反応よりもSNSでの反応を重視する」という現象も気になるところ。

SNSにアップした写真に反応がない場合、削除することが多いんです」と語るのは、同じくコスモポリタン イギリス版のスタッフであるルーシー。

「かつてのInstagramの機能では、11以上『いいね!』がない場合、スマホでもユーザーネームが表示されていました。つまりこの表示は"人気がない写真"と言われているようなものですから、写真そのものを削除していました」

つまり彼女は、写真そのものが「良いか、悪いか」ではなく、フォロワーの反応によって「写真を維持するか、削除するか」を決めていたということ。「セルフィーを3回アップして、全部削除したこともありますよ。自分としては『ヘアスタイルがきまってる!』と思って投稿したけれど、フォロワーの反応は違ったみたい」。

ヘアスタイルを見てもらうために、顔はちょっとぼかし気味。

ケニーさんはこうした行動に警笛を鳴らしています。「他人の意見を"事実"として受け入れてしまうことは、自尊心の低下(自己卑下)に繋がります。誰かが『いいね!』と言ってくれなければ自分に自信が持てなくなってしまうからです。(ルーシーのように)オンライン上の反応によって写真を削除してしまうような行為は、本人の精神面にネガティブな影響を与えているはずです」。

…と、ここで考えるべきことがあります。誰かの投稿に「いいね!」をするとき、人はその行為にどれだけの意味を込めているのだろうか?と。ルーシーは「『いいね!』をもらうのは気分のいいことです。でも『いいね!』をクリックする方は、深く考えずにそうしていることは分かっています」と語ってくれましたが、これは真意を突いた言葉です。

フェイクニュースも簡単に作れる

コメディアンのザック・ブルサードさんは2年前、SNSを使ったある実験をしました。彼には数年間付き合っている彼女がいたのですが、まったく別人のモデルを雇って偽のプロポーズ写真を撮影し、SNSに投稿したそうです。すると"友人たち"から何百もの「いいね!」をもらったものの、写真に写っているのが偽の婚約者であることに気付いた人はほとんどいなかったのだそう。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
#proposd (lying to friends and family for social media attention)
#proposd (lying to friends and family for social media attention) thumnail
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つまり彼の実験は、「いいね!」は思慮深い意味を込めた行為ではないことを証明しています。ケニーさんはこの現象を「ダブルスタンダードのようなもの」と解説します。「誰にでもナルシシズムはありますから、皆、心のどこかで『自分の存在は他の誰かより重要で価値がある』と思っています。だから『いいね!』をもらうと、それは人々が自分に注目し、評価してくれているからだと考えてしまいがちです。でも自分が『いいね!』をクリックするとき、それだけのことを考えてしているでしょうか? そんなことはありませんよね」。

SNSの意義とは?

もちろんSNSにはたくさんの長所があります。SNSがあるから繋がり続けている人間関係も多く、本来なら孤立した状況に陥りがちな人を救っているケースもあります。しかしSNSによって自尊心を失い、メンタル面に悪影響を及ぼす場合もあるのです。

最近発表された調査によると、12時間以上SNSを使用している人は、状況によっては「自分は社会から孤立している」と感じてしまう傾向があるとのこと。

特に完璧主義の若い女性の場合、SNSに依存しすぎると不安感があおられてしまうことも。人と較べて自分の人生は惨めだと感じ、ウツ状態を助長することに繋がってしまう恐れもこの調査で指摘されています。

メンタルヘルス慈善団体<マインド>で情報部長を務めるスティーブン・バックレーさんは「SNSは短期的には精神の高揚を生み出すものの、その後落ち込んでしまうこともあります」と説明。「自尊心が低いことそのものは病気ではありませんが、ウツを誘発する要素であることは確かです。SNSは精神面に悪影響を与えない程度に使うことが大切です」。

現代に生きる私たちは、常にヴァーチャルな世界と近い場所に存在しています。オンライン上での反応に感情を左右されてしまうことはよくあることですが、ヴァーチャルは決して"リアル"ではありません。現実の世界で起ることにもっと目を向け、自分を知り、体感しましょう。そうすることで、自分にもっとも適したSNSの使用法が見えてくるかもしれません。

この翻訳は、抄訳です。

Translation: 宮田華子

COSMOPOLITAN UK