2013年に放送が開始されたNetflixオリジナルのドラマ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック(OITNB)』。実在する女性の自伝が原作となり、結婚を目前に幸せに暮らしていた女性主人公が、突然過去にレズビアンの恋人の麻薬取引を手伝ったという罪を問われ女性刑務所に収監される…というところから物語はスタート。

刑務所内で主人公がどう生き抜いていくのか…というのはもちろんのこと、巻き起こる様々な事件、同性愛、人種間での抗争、刑務所の民営化による暮らしの劣悪化など、広く社会問題を取り上げ、昨年6月の時点では「最も多く再生されたNetfleixオリジナル作品」としてランクインし、ゴールデン・グローブ賞やプライムタイム・エミー賞にもノミネートされるなど超がつく人気作品に。

目が離せないのが、主人公も然ることながら、刑務所に入ることになった白人、黒人、ヒスパニック系と人種も生まれ育った環境も、犯罪に手を染めるまでの背景も違ったキャラクターたちの葛藤や生き方がリアルに描かれている点。1人1人の女性の生き様に、心が揺さぶられたという人も多いのでは?

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今回は、6月9日のシーズン5開始に先駆けて出演女優にインタビューを敢行。テーマはコスモポリタンのグローバルコンセプト『Fun Fearless Female(楽しく恐れを知らない女性)』にちなんで、『Fearless(恐れを知らない)』について!

前編では、ダニエル・ブルックス(ターシャ・"テイスティ"・ジェファーソン役)、エイドリアン・C・ムーア(シンディ・"ブラック・シンディ"・ヘイズ役)、ウゾ・アドゥーバ(スーザン・"クレージー・アイズ"・ウォーレン役)の3人に直撃しました。

――2013年にスタートした(日本公開開始は2015年)『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック(OITNB)』シリーズですが、シーズン5と長い期間同じ役を演じてきて、自分自身が「Fearless(恐れ知らず)」になったと感じることはありましたか?

ダニエル・ブルックス(以下、ダニエル):もちろん! 最初にこの女性刑務所って企画に飛び込んだときは、もうすでにある程度は"フィアレス"になってなきゃできない仕事だった。一緒に働く仲間たちを信頼するために共演者たちのことを学んでいって、この題材に対する自分自身の力も信頼しなきゃならなかったから挑戦続きだったわ。

だけど、いま、シーズン5に突入して、脚本家たちを含めてお互いをよく知ることができて、本物の家族のような存在になったし仕事でも信頼できる。(監督の)ジェンジ・コーハンと彼女のクルーは、私たちを役者として強く押し出してくれたわ。それが、このショーの美しいところなの。

エイドリアン・C・ムーア(以下、エイドリアン):その通り。

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エイドリアン演じるシンディ(左から2番目)は、おしゃべりな皮肉屋。空港職員時代に旅行者の荷物を盗み逮捕される。テイスティ(左から3番目)は、若い黒人グループのリーダー的存在。要領が良くシーズン4では所長の秘書を任せられる。

ダニエル:この業界でキャリアを築いていく私たちにとって、今まで行ったこともない領域にまで押し上げられているなと感じるのは、すごくエキサイティングなこと。特に、同じキャラクターをずっと演じ続けているときにはね。与えられた題材で、それぞれにチャレンジを与えられ、みんなが恐れないで環境でだからうまく行ったんだと思う。それが伝わって、このショーを人々が愛していくれるのだと思っているわ。このショー自体が、そうやって突き進んでいくことを決して怖がらないものなの。

エイドリアン:5年間、同じ役を演じてきたことで、キャラクターに親密な馴染みができたわ。私は脚本を読むだけで、演じているシンディがどういう風に解釈するか、彼女の声が聞こえてくるの。脚本家たちから意見を聞くときだって、長い間一緒に仕事をしてきたから、何かを提案するときでも、築かれた信頼の上で堂々と怖じ気付かずにやっていける。だって共演者たちは私を理解してくれると分かっているから。私たちが、自分たちのキャラクターの支配者になったと感じているし、キャラクターの全行動、全ての言葉を表現してきたのが私たちなんですもの。

ウゾ・アドゥーバ(以下、ウゾ):私は以前よりもっと、飛び込んでいけるような勇気を得て、フィアレスになったと感じているわ。でも、さらにもっと"フィアレスになる/恐怖を感じずに歩んでいく"っていうのが、実は私の今年の新年の抱負だったの。

スーザンのキャラクターを演じるのがエキサイティングなのは、彼女のセリフを大胆に大きく言うことも、控えめに小さく言うこともできるということ。大げさなコメディの瞬間、大きなストーリーテリングの時…大胆になるインスピレーションが与えられる瞬間がやってくる。その選択をするとき、それが大きな音を立てて私の中に響くのよ。私がその選択をしていから。

そういうことができるタイミングが『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』以外のところでも、私自身をワクワクさせるものになっているの。そんな恐れ知らずになれる仕事が、これからも、この役柄以外の他のプロジェクトにおいても続いていくことを心から願っている。

――シーズンを重ねるごとに、実生活での変化はありましたか?

ダニエル:最初から変化があったわ。ショーが放映された1日目からよ。私たちの姿が披露されて13時間後から。13時間座っていて、ようやく外に出たとき、もう自分の人生は全く違うものになってたの! どうやって私が外で動き回るか、住んでいる場所や誰が私の友達か、家族がどう接するか、そんなことすべてのことに影響を及ぼすの。だけど、私が恵まれているなと思うのは、周りに私の足を地につけてくれる人たちがいることね。

あと、このショーの素晴らしいところは長く経歴を積んできた役者たちと共演できることもあるわね。新人にとっての、ハリウッドでの恩師のようなもの。そして、エイドリアンやウゾ、そして、キミコ(キミコ・グレン)やサミラ(サミラ・ワイリー)と一緒になって、私たちが心おきなく話せる女性コミュニティを持つことができていること。「今日はどんな感じ? 気分は大丈夫?」と、私たちが関わっている問題を一緒に乗り越えていける女性たちに恵まれているの。

そして、私たちには世界中に素晴らしいファンがいるの。イギリスに行ったばかりなのだけどどこに行っても、人々から識別されるの。本当に嬉しいギフトだわ。でも、休暇に出るのがとても難しくなったけどね(笑)。

エイドリアン:ダニエルが言ったように、私たちの周りの世の中は変わってしまった。でも、今私が思うのは、ファンがいてくれたおかげで、ここまで来ることができたということ。本当に感謝している。でも、1日の終わりには私はエイドリアンであって、あなたにも私にも自分の生きる路があるから、それを貫いていきたいと思ってる。だから、日によっては、ただエイドリアンになりたいときもあるのよ。そんなときには、私はただエイドリアンでいるの。そうなることに対して(人々に)謝る必要はないし。でも、役者として働けることに感謝の念はいつも持っているわ。

ウゾ:このショーに関わる私たちみんなの人生にも言えることだと思うけど、私たちはまっすぐ進んでいたところに突然、1日ごと時には1時間ごとに、大きな変化が訪れるたの。アーティストとしての力を認めてもらえて、認識されるようになった。『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』に出演していなかったら、こんなに早くに、それが訪れなかったかもしれないと思うと感謝しているわ。私たちはこの仕事を心から愛しているし、仕事ぶりを見て、聞いてもらえる機会を与えてくれているわ。私たちの中には、政治的なことにおいても情熱を持ち、声をあげたい人がいる。

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――ウゾは1度目はゲスト女優賞、2度目は助演女優賞として、エミー賞を受賞しましたね。

ウゾ:ストーリーを伝えていきたいというのが、私が生涯を通してやっていきたいことなの。ショーがスタートしたとき、みんなと一緒に働き始めたときには、このように(私の役柄が)先に広がっていくなんて本当に予期しないことだったわ。だって私はただ、もう1回、エピソードに出演できるってことだけに喜んでいたのよ(笑)。

だから(エミー受賞など)が起きていくにつれて、本当にグループの努力が報われたのだと思ったわ。いつも、思うのはステージ上(授賞式のステージ)に上がったのは私だったけど、その瞬間を可能にしたのは一緒に肩を並べて働いてきた人たちがいるからってこと。ここに座っている驚異的な才能あるレディたちと共に、私たちはチームとして働いている。そんな女性たちに出会えたことに、心から感謝している。

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ウゾ演じる、クレイジー・アイズことスーザンは、エキセントリックなキャラクターで周りを驚かせるものの、そのピュアな一面に多くの人を魅了している。

――シーズン4の最後には、黒人のプッセイ(サミラ・ワイリー)が刑務所内で命を落とすという衝撃的なエピソードがありましたが…それは現代の政治背景が影響しているのでしょうか? また政治的な責任を意識して演じていますか?

ダニエル:私の場合、自分のことを政治的な人物像とは思っていなかったけれど、もし、私が政治的な会話の一部になれるとしたら、アートを通して何かを伝えたいと思っていた。私はただ、いつでも演技をしたかった。それが私が愛してやまないものだから。

このショーの一部になることを愛する理由の1つには「私たちは何かを伝えている」ということがあるわ。いま訴え始めたわけじゃなくって、シーズン1の初回から、私たちはこのショーで何かを訴えていて、シーズン4は特にそれが著しいの。アフリカン・アメリカンたちの命が失われた「ブラックス・ライブス・マター(Black Lives Matter)」のムーブメントも社会的に生まれてきたわ。

私たちが生きているこの世で、人々に何が起きているのかを見て欲しいと思っているの。この世で起きていることに対して、全く何も聞ことしない人たちがあまりに多すぎるように感じているから。だから、私たちがせめて、人々にもっと愛や慈悲心を持つようにと呼びかける役目ができたら、違う文化やグループ、違う民族性に対して、もっと理解を深めるきっかけになったらと願うばかりね。それが私にとって、政治的になるということで、生涯その一部になりたいと願っているところ。

エイドリアン:アートや『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』のようなショーを通して、私たちの社会の意識レベルを上げていくことに信念を抱いているの。

いつも大学院生だった頃に読んだ最高に退屈な歴史の本のことを思い出すわ。でも、その歴史の本の最初か2番目の文に"アートとは、エンターテインすることと、教えることだ"と書かれてたの言葉やストーリーの筋で楽しませるだけでなく、何かを教えることができたらと思ってるわ。

それに私が伝えたいのはね、主流のアメリカ、黒人のアメリカ、黒人のハリウッド業界、東洋系アメリカ人のコミュニティやシアターのグループとか、そんなものを持たなくても大丈夫だ、ということ。それよりも、あなたの人種が何であろうと、私の人種が何であろうと、私たちは人間としてどんな人なのか、それが最後には問われることでしょ。それが、私が達成したいと願うことなのよ。


彼女たちの人生を変え、社会にも広く認められるようになった本作。シーズン5は3日間に起こった出来事を濃く伝えていく内容になっているそう。一体、どんなメッセージを社会に訴えかけるのか…。公開が待ちきれない!

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Netflixでシーズン1~4 独占配信中

シーズン5 6月9日(金)より全世界配信開始

[youtube ]https://www.youtube.com/watch?v=NzJATbm8U98&index=2&list=PLvahqwMqN4M0N0IMOcG6-PTT3-5HAp6bf[/youtube]

Translated by Yuka Azuma