アメリカの人気ドラマ『HEROES Reborn/ヒーローズ・リボーン』で、ミコ役として、唯一の日本人キャストに選ばれた祐真キキさん(26)。現在はサンタモニカを拠点に、日本とハリウッドを行き来しながら、俳優業に打ち込んでいます。前回のインタビューでは、ハリウッドの芸能界事情や、オーディションの様子などを語ってくれました。後編となる今回は、祐真さんがいつから、またどのようにハリウッドを目指しそして夢を叶えているのか、など、そのバイオグラフィーに迫ります。

——祐真さんは、なぜ、ハリウッド俳優になろうと思ったのですか?

そもそものきっかけは、中学生の時にハマったアメリカのドラマかな。オルセン姉妹が出ていた『ふたりはふたご』とか『サブリナ』を毎回楽しみに観ているうちに、英語が話せるようになったらかっこいいだろうな、って思って英語を勉強していたんです。それで本格的に学びたくなり、高2〜高3まで1年間、アメリカに留学をしました。その後、地元の京都に帰って高校を卒業したものの、やりたいことがわからずに、大学にも進まずにいました。それで、人道支援にも前から興味があったので、アルバイトをしながらお金を貯めて、タンザニアへバックパッカーで行ったんです。

人道支援もハリウッドスターも、両方やっちゃえばいい

——すばらしい行動力ですね!

タンザニアからいろいろな地をひとりで旅していたら、アメリカの政府に雇われて、南スーダンで環境問題などの支援活動をしているというアメリカ人に出会ったんです。それで、私もあなたみたいな活動がしたいんだけど、どうすればいいの? って聞いたら、まずは大学へ行き大学院を出て技術を身につけて、現地で死にものぐるいで働くしかないって言われました。でも、これからそれをしたところで時間もかかるし、じゃあ一生現地で働いたところで私ひとりで何人救えるんだろう? って悩んだらキリがなくなっちゃって。一方で、小さいころから、テレビに出たいという夢もあったんです。たとえばアンジェリーナ・ジョリーみたいに慈善事業をしているハリウッドスターってたくさんいるじゃないですか。それで、じゃあ私も両方やっちゃえばいいんだ、って思ったんです。知名度をあげたうえで支援をすれば、もっと大きなことになるんじゃないかなって。

——そう思っても、両方やろうとする人はなかなかいませんよね。それに、日本の俳優ではダメだったんですか?

うーん、どうせやるなら人生1回だし、ハリウッドを目指したいって思ったんです。日本も大好きなんですが、ハリウッドで1回でも主役をはれば、世界100カ国以上にその作品が広がるから、手っ取り早いでしょ。正直、有名になって人道支援ができればその手段は何でも良かったんですが、自分に可能性があるもので、と考えたら役者が近道だった。それでタンザニアから地元の京都へ戻り、上京して、ハリウッドの作品に日本人俳優をキャスティングしている奈良橋陽子さん主催の演技スクール「アップスアカデミー」に入りました。ここは他のスクールと違って、ハリウッドを目標にする役者がほとんど。菊地凜子さんがプライベートレッスンを受けたり、渡辺謙さんが出入りしていたりと実績も十分だし、受講料も安かったんです。日本式の演技ではなく、ハリウッド仕様の演技を学べたので、私には好都合でした。

ハリウッドではウソ泣きも演技の涙もダメ。泣くなら本物の涙を流さなければいけないんです

——日本とハリウッドの演技方法はそんなに違うものですか?

日本式のレッスンを受けたことがないのでわかりませんが、観ている限りでは全然違いますね。多分、文化の違いなのでしょう。日本は歌舞伎などを観てもわかるように、見ための美しさや外からの見え方も大事で、演技もドラマチックだと思います。でもアメリカはリアル志向。嘘泣きも、がんばって泣きの演技をするのもダメ。演出などのト書きよりも、自分がどう感じてどう動くか、自分なりにどう相手に伝えるかがメインだから、泣くなら本物の涙を流さなければいけないんです。

——なるほど。

アップスアカデミー卒業後は、親しい知り合いはほとんどいなかったのですが、ロサンゼルスへ引っ越しました。なんのコネもないので、まずはエージェントと契約するために、自分のプロフィールとなる作品に出なければなりませんでした。ロスには、スタートラインに立った役者のためのサイトがあるんですが、そこにオーディション情報が流れてくるので、自分で情報を拾いながら100回を超えるオーディションを受けて、小さな仕事もたくさんしました。一番最初の仕事? 中国人の学生が作ったショートフィルムに、アジア人の女の子役で出たんだったけ……忘れちゃいました(笑)。でもそうやって自分のプロフィールを積み重ねているうちに、前回お話ししたように、『ヒーローズ・リボーン』のオーディションを受けることになったんです。

——留学経験があるとはいえ、英語で演技をするとなると、かなりの英語力が必要になりそうですね。独学なんですか?

ロスでアメリカ人の彼氏ができて、5年ぐらいつき合っていたんですが、それが仕事でもプライベートでも大きな支えになりました。彼は日本語が一切話せなかったから、会話は全部英語でしたから。ただ単語や会話は覚えられても、発音は自分で身に付けないといけなかったから、向こうのドラマを観て勉強したり、ハーフの友達に教えてもらったりしました。それでもまだまだ完璧とはいえないですけどね。

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——確かに、彼がアメリカ人なら英語力も上達しそう!(笑) 祐真さんってすごくサバサバしていそうですが、恋してもそのままですか?

私ってそもそもあまり人を好きにならないタイプなんですが、もし誰かに片想いをしたら、ポーっとして集中力は欠けるし、食欲は失せるし……ってタイプです(笑)。

——意外と乙女ですね! どういう人がタイプですか?

行動的なやさしさではなく、心のあたたかさやにじみ出るやさしさを見てしまうと弱いかも。包容力も大事なので、好きになる人は年上が多いですね。

——結婚願望も強い方ですか?

あるっちゃありますね。できれば子供は3人以上欲しいとも思うし。私の結婚観って意外と古いところがあって、家庭を持ったら男は稼いで、女は家庭を守るべきだと思っているんです。アメリカはいま一生懸命男女平等にしようとしているけど、問題児も虐待も、殺人も増えているのは、父親と母親の役割分担をはっきりさせないからじゃない、って私は思っています。家族が出かける時に玄関でお母さんが見送って、帰ってくる時にはまたお母さんが出迎える、みたいな、昭和の家庭像が実は理想的なのではないかと。

夢は、絶対叶えるのがムリってぐらい遠くに置いた方がいい

——ハリウッドで期待されている日本人俳優が、そういう日本人魂みたいなものを語ってくれると、何だかうれしですね。ところで祐真さんは、どうやって夢を叶えてきましたか? また次の目標はありますか?

私、夢は、絶対叶えるのがムリってぐらい遠くに置いた方がいいと思うんです。そうすれば、その手前の小さな目標がどんどん叶っていく。たとえば私が、もし、俳優になりたい! ってだけの夢だったらいまごろは何もできていないでしょうね。知名度をあげて人道支援をするためにハリウッド俳優になる、と決めたから、まずは上京して学校に通って、ロスに行くという目標が立てられ、そして叶えていける。だから『ヒーローズ・リボーン』出演ぐらいでは、まだまだ。夢を叶えるために必要な、たくさんの武器のひとつしかすぎないんです。次の目標は、とりあえずもうひとつ、ハリウッドの大きな作品の役を獲ることです。

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