すみれインタビュー
五十嵐 瑛仁(TRON)

前回のインタビューでは、ハリウッド進出の夢を叶えた自身の経験から、夢の叶え方を語ってくれたすみれさん。その背景には、すみれさんが生まれ育った環境や複雑な家族構成なども大きく関係していました。人から愛されること、そして人を愛すること、すみれさんの明るくてハッピーなマインドはそこから始まります。

結婚=幸せではないし、結婚や幸せの形ってすごくたくさんあっていいと思うの

——よく言われると思いますが、すみれさんっていつも笑顔でポジティブ思考で、パワフルウーマンな印象です。

私、全然パワフルじゃないですよ、泣き虫で弱っちくてとってもセンシティブ(笑)。

——それは意外です! だとしたらなぜ、いつも笑顔でいられるんですか?

笑うことが好きなのかも。それに、笑いのツボが浅くて、何にでもすぐ面白がれるのかもしれないですね。どうせ同じ時間を過ごすなら楽しみたいし、誰かと一緒にいる時間はハッピーでいたい。そんなふうに考えていると、仕事でもプライベートでも自然に笑顔になっているような気がします。ただ、自分には厳しいと思う。仕事が終わって家に帰ったら、自分にダメ出しもするし、反省して落ち込んだりもする。ただ、もともとセンシティブな性格だから考え過ぎるとネガティブになってしまう。だからそうならないように、自分で心の声をキャッチするのを忘れないようにしています。「反省してもいいけど、あまり重く考え過ぎないこと」って。ちなみに私って、意識していない人の前では自分らしくいられるのに、好きな人の前では、ネガティブになっちゃうんですよ。シャイだし、緊張してヘンな動きになって……(笑)。

——あははは、恋するとわかりやすそうですね(笑)!

そうなの! 顔に出ちゃうかも。「好き好き、恋してます!」って顔ではなく、逆にかちんこちんのロボット。好きな人と目が合うと吸い込まれそうになっちゃうから、目も合わせられない。だから相手からは、この人僕のことすごい好きか、もしくはすごい嫌いなのかなって思われるタイプかもしれませんね。

——そこはポジティブに、好き好き! って行くタイプだと思っていました。

実は中学1年生のとき、好きな男の子ができて「私のことどう思ってるの?」って聞いたことがあるんですけど、考えるという間もなくすぐに「友達」って返事でフラれちゃったんです。それがトラウマになっているのかもしれない。

——確かに、思春期の恋愛っていつまでも忘れられないですよね。ちなみに結婚願望はありますか?

あります。その理由は、子供が大好きで子供が欲しいから。もし子供に恵まれなかったり、心から愛して寄り添えるパートナーが見つからなくても、何らかの方法で子供を持ってシングルマザーになるっていう選択肢も考えるくらい子供は欲しいですね。

——何らかの方法とは?

たとえば養子を迎えるとか、選択はいろいろあると思うんです。それから、もちろん、結婚によりお互いが幸せになることは素晴らしいことです。ただ、結婚によって自分の夢をあきらめて、我慢し続けて不幸になる人もいる。私自身が一時期シングルマザーで育ったこともあって、結婚=幸せではないと思っています。その一方で、子育てにはやはり父親の役目が必要なことも知っています。だから、何らかの事情でシングルマザーになったとしたら、父親役を担ってくれるゲイのパートナーを見つけるのもいいと思います。日本ではLGBT(Lesbian、Gay、Bisexual、Transgenderの略)にはまだまだ偏見があるから、そういう関係性はなかなか理解されにくいかもしれないけど……。そういえば、渋谷区や世田谷区でパートナーシップ証明書が発行されることになったというニュースは、すごくうれしかった。結婚やパートナーとの関係性っていろんな形があっていいし、お互いがハッピーになるなら、誰がどんなチョイスをしてもいいと思うんです。

——日本でも同性のパートナーが認められはじめている一方で、30歳までに結婚しない女は負け、なんて言われて"負け犬"という言葉も流行りました。それについてはどう思いますか?

 負け犬? そんな言葉知らなかったし、よくないですね。だってバリバリ働いて自立している女性ってすごくステキなのに。"私はサバイバー、決してあきらめないで生き抜く、絶対に成功してみせる"ってビヨンセも歌ってたでしょ。あの『サバイバー』って曲みたいにすごくカッコいいと思うの。

——そんなグローバルな考えをお持ちのすみれさんですが、理想の恋愛や恋人はどんなタイプですか? 

 私の場合、恋愛するなら結婚前提。つき合うときに「この人と結婚できるかどうか」まで考えてからつき合います。その上での理想の恋人は、彼として、友達として、ビジネスパートナーとしていろんな役回りができる人かな。国籍はどこでもいいけど、愛情を持って私を大事にしてくれる男性がタイプです。どの女性にも同じように優しく接する男性はイヤ。

すみれインタビュー
五十嵐 瑛仁(TRON)
コンプレックスは美しい個性。いろんな色があってこそ輝けるんです。

——結婚の形はいろいろある、とおっしゃいましたが、すみれさんのご家族の中にもたくさんの形がありますよね。複雑といってはいけないのかもしれないけれど……。

いや、自分でも複雑な家族構成だと思っていますよ(笑)。パパとママが離婚して、義理のパパとママの間に弟が生まれて、パパの息子の(いしだ)壱成くんがいて、パパは(東尾)理子ちゃんと結婚して理汰郎くんが生まれて……。でもどんな家族にも問題が起こったり、複雑な状況になったりするのは同じでしょ。私の家族にはいろんなことがあったけど、やっとここまでこれたし、みんなで乗り越えたっていうのがあるから、いまは家族みんなでいる時間がすごく楽しいんです。英語で「The more the merrier」なんていうように、多いほどにぎやかで楽しいっていうまさにそのまま。家族が多いほど愛してくれる人がたくさんいるし、私も愛すべき大切な人がたくさんいます。それだけで、もう怖いものはないんです。それは私の結婚観にも影響しているかもしれないし、反面教師で、失敗をくり返したくないっていう勉強にもなっていますけどね(笑)。

——それにしても、ご両親が離婚されたあとにお母さんがまだ7歳のすみれさんを連れて、女2人でハワイへ移住するという行動力は、尊敬します。大変な経験も多かったと思いますが。

 ずいぶん前のことなので、大変さというものはどんどん薄れていきますが、たまにVTRを再生するかのように、クリアに思い出すこともあります。だけど、何も知らない土地でゼロから生活の基盤を作って、税金や私の学校の手続き、習い事などをひとりでやってくれたママのために、苦労したとは思いたくないです。もちろん、外国で暮らすなんて最初は怖かったし不安も大きかったです。英語が話せなくていじめられ、傷ついたこともありました。でもママのほうが大変そうだったから、いじめられていてもママには内緒にしていたし、学校に行きたくなくてもがんばって笑って行っていたんです。そして悔しい気持ちをバネに「いじめっ子を見返してやる」って英語を一生懸命勉強したし、気がつけば友達も増えて、ハワイがもうひとつの故郷になっていて。そんな経験をさせてくれたママは、本当に強い女性だし、「私と弟はママの命だから」って必死で私や弟を守って育ててくれた姿を思うと、いまでも泣けちゃうぐらいです。

——強くて美しい女性像がいちばん身近にあったわけですね。そんな経験もふまえ、すみれさんが考える"女性の美しさ"とは何でしょう?

 うーん、難しいですね。でも、ビューティーって誰でも持っていると思います。「今日ね、ここにニキビができちゃって憂うつなの」と言っても「え? どこに? いわれるまで気がつかなかったけど」なんてぐらい、自分のコンプレックスって実は他人はそれほど気にしていないことが多いんです。私も最近ある人に、長年のコンプレックスを打ち明けたら「え! そこがあなたのいいところなのに」っていわれて初めて気がついたんです。自分のコンプレックスって他人から見たら、ほかの誰かとは違う特別なもので、そこが魅力的に見えたり美しさにつながるものなんだ、と。外見だけじゃなくて、性格や考え方、特別な才能など、みんながそれぞれの美しさを持っていると思います。レインボーはいろんな色が交じっているから美しいように、女性にもいろんな色があってこそ、美しく輝けるんだと思います。

>>【前篇】ハリウッド女優の夢を叶えた「仕事観」

撮影/五十嵐 瑛仁(TRON) ヘア/ABE(M0) メイク/Ken Nakano スタイリスト/井阪 恵(dynamic) 歌手・女優 /すみれ 取材・文/若山 あや

ドレス&ミニスカートセット/\685,000(ロベルト カヴァリ/ロベルト カヴァリ ジャパン) ピアス/\24,500(メドゥスィン・ドゥース/ゴールディ アッシュ・ペー・フランス) 靴/スタイリスト私物 ※全て税抜価格