第74回ヴェネチア国際映画祭が、8月30日~9月9日(現地時間)までイタリアのリド島にて開催されました。受賞作と話題作、そして今年賞賛を浴びた日本の映画まで現地からお届けします!
2017年度のヴェネチア国際映画祭、受賞作品は…?
9月9日の授賞式で発表された金獅子賞はメキシコのギレルモ・デル・トロ監督『The Shape of Water』に輝きました(写真左)。イタリアのエンターメイント雑誌「CIAK」に掲載されている批評家たちからの評価も高く、多くの人が納得のいく結果にいなったよう。
また、今回『Custody』で初の長編監督デビューを果たした新鋭のグザヴィエ・ルグラン監督が銀獅子賞と新人監督賞の2冠を制覇(写真右上)。そして最優秀新人賞には『Lean on Pete』で馬を愛する純粋な少年を演じた10代のイケメン、チャーリー・プラマーが輝きました(写真右下)。
次ページでは受賞作の中からチェックしておきたい作品をご紹介!
以下、主な今年のコンペティション部門の受賞作品一覧
金獅子賞(最優秀作品賞):『The Shape of Water』/ギレルモ・デル・トロ監督
銀獅子賞(最優秀監督賞):『Custody』/グザヴィエ・ルグラン監督
審査員大賞:『Foxtrot』/サミュエル・マオズ監督
審査員特別賞:『Sweet Country』/ワーウィック・ソーントン監督
最優秀男優賞:カメル・エル=バシャ/『The Insult』
最優秀女優賞:シャーロット・ランプリング/『Hannah』
マルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人賞):チャーリー・プラマー/『Lean on Pete』
最優秀脚本賞:マーティン・マクドナー/『Three Billboards outside Ebbing Missouri』
栄誉金獅子賞:ジェーン・フォンダ&ロバート・レッドフォード
新人監督賞:『Custody』/グザヴィエ・ルグラン監督
受賞作品以外にも話題作が満載
オープニングを飾ったのが、人口過多問題解決のために身体のサイズを小さくすることができるようになった世界を舞台にしたアレクサンダー・ペイン監督のSF社会風刺コメディ『Downsizing』。その他、今年第一子の出産をしたアマンダ・サイフリッドが出演したマーティン・スコセッシ監督のスピリチュアル・サスペンス『First Reformed』、ドキュメンタリー映画の巨匠フレデリック・ワイズマン監督がニューヨーク公立図書館の魅力に迫った『Ex Libris – The New York Public Library』、ファッションブランド『ロダルテ』デザイナーの姉妹が初監督をし、キルスティン・ダンストが主演をつとめた『Woodshock』など、話題の作品が盛りだくさん。
次ページでは、そんな話題作の中でも注目度の高い作品をチェック。
『Mother!』
監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:ジェニファー・ローレンス、ハビエル・バルデム
郊外の一軒家で幸せに暮らしている有名な詩人と若い妻。ある夜、ノックの音がしてドアを開けると招いてもいない訪問者が。その後も不審な訪問者が次々と現れ、常軌を逸した事件が起こる。不安に駆られる妻だが、夫は拒むどころか彼らを受け入れる。そして妊娠をし、母になった妻を待っていたのは、予想もしない出来事だった…。
ヴェネチア映画祭の上映時にはブーイングと喝采が入れ混じった、注目すべきサイコミステリー。
※2018年1月19日、日本公開予定
日本も話題になった今年の映画祭
9月9日のクロージング作品では裏社会に生きる男たちの戦いを描いた北野武監督の最新作『アウトレイジ 最終章』が上映されました。海外でも人気の高い北野武監督には、エンドロールでは鳴りやまないスタンディングオベーションが送られ、ファンの熱い声援に包まれていました!
また、是枝裕和監督はデビュー作『幻の光』以来、22年ぶりにヴェネチア映画祭のコンペ作に登場し、主演の福山雅治とタッグを組んだ心理サスペンス『三度目の殺人』を上映。
海外にもファンが多い音楽家、坂本龍一の3.11の際の活動や、闘病中の姿、新しい音楽を創作するアーティストとしての精神に迫ったドキュメンタリー『Ryuichi Sakamoto: CODA』が上映され、大喝采を浴びていました!
番外編:ヴェネチア映画祭でも女性の性差別問題が話題に
映画業界でも男女の賃金の違いなど性差別があると、世界中でディベートになっている男女格差問題。今回のヴェネチア映画祭でも21作品上映されたコンペ作には1つしか女性監督の映画がない(ヴィヴィアン・チュイ監督『Angels Wear White』)ことが指摘されていました。一方で、2006年にカトリーヌ・ドヌーブが審査員長を務めて以来、11年ぶりに女性の審査員長として、女優のアネット・ベニングが就任。
映画祭を含め、映画業界での女性問題はまだまだ大きな討論が繰り広げられるよう。