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1995年頃のゲイ・パレード(©ブルボンヌ)

あーんもう、お盆も過ぎたってぇのにまだまだ暑いわねぇ。昭和のババアはこういう時は「残暑が厳しいざんしょ」って言って涼んだの、覚えといてね。ほら、サムくなってきただろう。

でもやっぱり暑苦しい話題もしちゃうわ。今回、コスモ編集ガールちゃんから「(ブルボンヌが)ドラァグ・クイーンになるまで、または有名ドラァグ列伝」というお題をいただいたの。

あ、ドラァグ・クイーンってのは、ゲイ中心のパーティ系派手女装のことね。トランスジェンダーの方と違うのは、女性に埋没するんじゃなくて、女性性をぶっちぎってパロディするかんじよ。

全世界の頂点に君臨するのはル・ポール大先生。90年代からクラブ系サウンドのアーティストとしても活躍、最近じゃNetflixで配信中の女装サバイバル『ル・ポールのドラァグレース』で日本でも知名度を増してるわ。エルトン・ジョンおば様とデュエットしたり、ゴージャスな発色で人気のコスメMACの広告に出たり、いろんな分野を切り開いてきた方なんだけど、先日ついに、ハリウッド「名声の小道」(道路上に星型と大物セレブの名前が刻印されてるやつ)の殿堂入りまで果たしたの! これ、日本人で有名なのは黒澤映画の三船敏郎さんとゴジラ(日本人?)くらいしかいない狭き門だから、そこにゲイの女装タレントが加わるってほんとスゴイことよ~!

この連載で以前紹介した映画『プリシラ』、『パリ、夜はねむらない。』が歴史とビジュアルを掴むのにはピッタリだから、ちゃんと知りたいならぜひ観てね。今回はこの文化が日本で拡がった流れを、業界の老害スレスレなババアの立場から思い出話させてもらいましょ。

まず、ドラァグ・クイーンはクラブベースの文化だってこと。日本では90年代初頭のゲイ・ナイトやミックス・パーティあたりの「場」ができてから生まれたの。もちろんそれ以前にも人気のゲイバーママが周年パーティで店内女装をしていたし、そのセンスや立ち振舞いはクイーンに近いものがあったと思うけどね。

日本で「ドラァグ・クイーン」という肩書で活動する人たちの元祖といえば。関西では京都の老舗クラブMETROで、西の魔女シモーヌ深雪先生がプロデュースした『DIAMOND ARE FOREVER』ってイベントが、東ではYUKI INTERNATIONALってイベント会社が動かしていた大規模ゲイナイトでのパフォーマンスが、それぞれの特色とともに日本黎明期のクイーンを育てたと言えるわ。当時の印象としては、西はアートアングラ風、東はNYモデルスタイル、ってかんじかしら。

アタシはちょうどその頃、「クラバー」気取りで毎週のように踊り狂ってた若いゲイだったのね(言っててこっ恥ずかしい)。同時にパソコン通信のゲイネットの主宰もしていたから、94年の4周年パーティの時に、その年日本で初めて生まれたゲイタウン常設クラブ、新宿2丁目「Bar Delight」をお借りしたの。…で、クラブでゲイが集まるなら、当然演し物は「女装」よね。最近流行りのドラァグ・クイーンってのやっちゃおうよ! って、『プリシラ』や京都の皆さんの自主制作VHSビデオ『DIAMOND HOUR』をみんなで観たり、東の魔女マーガレット先生にメイク講座をやってもらったりして、おもしろいことをしたいゲイの若者たちがその表現方法として女装を使いめ始めたわけ。

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当時のブルボンヌ(©ブルボンヌ)

その後は、クラブパーティやパレード参加、現在も経営中の「Campy!bar」と同じ場所で「日本初のオープンゲイバー」と記録されているバーを開いたりして、あの手この手で女装のおもしろパフォーマンスをしまくってきたわ。

この当時、関西ではパーティ『電動付け睫毛』からのダイアナ・エクストラバガンザさん、『LIPS』からナジャ・グランディーヴァさんが人気を博し、ゲイ雑誌同僚だったマツコ・デラックスさんは趣味っぽく社内メイクをしていたわね。「ショーはする気ない」と言いつつ一度だけアタシのパーティにマツコが出てくれた時は、ホイットニーを熱唱してくれたのも遠い思い出…。あ、ミッツさんはけっこう後に、UKから海外風ふかしてやってきて一気にブレイクしたセレブ枠よ(笑)。

そんな「オカマ魂をパートタイムで派手女装表現する業」を背負ったゲイ男性たち中心に、自分たちのホーム周辺でやっていたショーやホステスっぷりが、21世紀になるとアウェイな場所にも呼ばれるようになったの。全国の地方都市で、常設のクラブこそないけれど定期的なゲイナイトが開催され、先行のクイーンたちがゲストで呼ばれたり、ストレートのミックスパーティの賑やかしで声がかかるようになった。さらに、マツコ&ミッツのテレビでの大ブレイクもあって、今じゃ芸能界のタレントジャンルの一角を担う存在にまで。90年代当時の誰も想像できなった事態になったんです。

今のアタシは衣装もメイクもすっかり控え目になったし、自らドラァグ・クイーンと名乗ることはないんだけど、憧れて始めたホームがそこなのは間違いないわ。テレビ的なナチュラル化が進む一方で、現在もバビエさんやホッシーさんなど王道のクイーン・スタイルを貫くありがたい皆さんもしぶとく(笑)パワフルに活躍中。女子も参加できるミックス・パーティでもその美しくゴージャスなパフォーマンスがいっぱい観られるわよ。知るほどに旨味が出て来る、ドラァグ・クイーンの世界。映画を観て、イベントに出かけて、コスモガールも自分の性と「女表現」について考えてみる良いきっかけにして~! HAVE A NICE FLIGHT