ここ数年、イギリスで熱い注目を浴びている81歳のおばあちゃんセレブがいる。それが、イギリスのお菓子研究家、メアリー・ベリー。おばあちゃんと言うると、ふっくらした小動物系のふんわり優しい雰囲気をイメージするかもしれないが、これがまったく正反対! とにかくキレイでおしゃれでキビキビ! 男性にも負けずとも劣らない、かっこいい、魅力的な女性。


1960年代から活動してきた彼女はイギリスでは女性におなじみの顔でしたが、2010年にイギリスBBC制作の、一般人の出演者がお菓子作りの腕を競うリアリティ番組「グレイト・ブリティッシュ・ベイク・オフ」の審査員として出演して以来、国民的人気者に。その時すでに75歳を超えていた。

なぜ75歳でブレイクできたのか、どうしたらあんな風に歳を重ねのか…。いまを生きる女性のお手本とも言える、彼女の魅力、これまでの生き方に迫りました。

メアリー・ベリー2
『Mary Berry Cookery Course』
メアリーの著書、『Mary Berry Cookery Course』より。

1.生い立ち

1935年にイングランドのバースで生まれ。父はバースの市の都市計画に携わっていて、母は専業主婦。それなりに裕福な家庭で育った。昔、温泉地として貴族や王族に人気だったバースは小さいながらも世界遺産にも登録されていて、かつての繁栄を偲ばせる素敵なティーショップやお菓子屋さんが軒をつらねています。そんな環境もメアリーのお菓子作りのセンスに生きているのかも。

13歳の時に大病を患い、回復はしたものの背骨が歪み、左手が不自由に。でも、当時隣のベッドで寝ていた少女が死亡したのを目にして「自分は運が良かった」と思ったのだそう。22歳でフランスに渡り、料理学校の名門ル・コルドン・ブルーで修行をします。当時は大変な貧乏でバゲットばかりかじっていたとか。

2.最初のブレイク

メアリーが最初にお菓子でブレイクしたのは1960年代終わり頃。イギリスの主婦向けの雑誌「ハウスワイフ」という雑誌にレシピを掲載するようになります。徐々に人気が出はじめ、その後、料理専門のエディターに。その後1970年からさらにメジャーなイギリスの主婦雑誌「アイディアル・ハウスワイフ」で3年間レシピを掲載し、人気を定着させます。

3.息子の死

その後、お菓子だけでなく、ル・コルドン・ブルーで腕を磨いた料理の知識を生かし次々にレシピ本を出版。1966年に結婚した夫との間に3人の子どもももうけ、メアリーの人生は順風満帆に見えました。が、それが大きく変わったのが1989年。最愛の次男ウィリアムが19歳のとき交通事故で亡くなってしてしまうのです。メアリーはその頃のことについて、「クリスチャンとしての信奉の気持ちが強くなった。それがなかったら立ち直れなかったわ」と話しています。

4.2度目のブレイク

次の転機が訪れたのが2010年。スイーツブームのイギリスで、お菓子作りの腕を競うリアリティ番組「グレイト・ブリティッシュ・ベイク・オフ」がBBCでスタート。75歳のメアリーはセレブシェフ、ポール・ハリウッドと審査員を務めることに。番組の大ヒットにともなって、説明を加えながら的確に参加者にアドバイスするメアリーにお茶の間の人気が急上昇。それまでのメアリーのファン層だった主婦やお菓子作りの好きな人たちだけでなく、若者や男性にまで人気が広がっていきます。

グレート・ブリティッシュ・ベイクオフ
Youtube
優しいだけじゃありません、メアリーは結構はっきりダメ出しします。でも失礼に感じないのは、料理に愛情があるから。

5.作りやすく、楽しく

メアリーの人気を支えるのは、TVでの活躍だけではありません。ここ数年イギリスでもてはやされた個性を売りにするシェフたちと違って、メアリーのレシピは本格的なのに作りやすく、材料も手に入りやすい。写真付きで解説するなど丁寧で詳しく、理論的。長年の経験を活かしたプロ意識の高さと、作る人への思いやりがファンを増やしていきました。レシピが、休日に写真を見てうっとりするだけではなく、ちょっとしたパーティーにも使える実用的なものばかりなのです。

メアリーのレシピ本
山下英子
メアリーのレシピの一例。すごーくお洒落でも奇をてらっているわけでもない。でも詳しい、そして実践できるのが嬉しい。

6.中高年のファッションアイコンに

お菓子作りや料理が専門なのにメアリーはとてもスリム。ティーンの頃大病を患ったメアリーは、健康管理にとても気をつけているんだそう。そして、イギリスの伝統的ミドルクラスらしい、派手すぎなく落ち着いた品の良いファッション。穏やかだけどきっぱりとした話し方は頼もしいおばあちゃんという感じ。イギリスではこれまでメアリーに「近寄りがたい」イメージを抱いていた人たちも多かったけれど、TV出演をきっかけにメアリーへのイメージがガラッと変わり、正直で信頼できる憧れのセレブとして国民的支持を得るようになったんです。

メアリー・ベリー
Facebook Mary Berry the Cook
メアリーはわざとらしく高いものを着たり、若く見せようとなんかしません。自分を知って似合うものを着る、それが美学なんです。

7.メアリーのレシピを再現してみた!

メアリーのレシピは作りやすいものばかり。中でもイギリス人の大好きな「レモンドリズルケーキ」を作ってみました。

レモン・ドリズルケーキ
山下英子

【メアリー・ベリーのレモンドリズル・トレイベイク】

材料(16個分)

A.

バターもしくはマーガリン 225g(室温)

砂糖 225g

卵 4個

セルフライジングフラワー(なければ製菓用の薄力粉) 275g

ベーキングパウダー 大さじ1(薄力粉を使う場合は若干量を増やして)

卵大 4個

牛乳 大さじ4

レモンの皮をおろしたもの 2個分

B.

レモン汁 2個分

グラニュー糖 175g

作り方

①オーブンを180度に温め、焼き型(30x23cm、なければ別の型でも大丈夫)の底にクッキングシートを敷いておきます。

②Aの材料をボールに入れ、ハンドミキサーで2分間滑らかになるまで混ぜます。

③2を焼き型に入れ、均等にならします。温めたオーブンで3540分、ふっくらした触り心地になるまで焼きましょう。

④焼き上がったら、わきにナイフを入れて型から外し、網の上で冷やします。

⑤グレーズを作ります。Bの材料をよく混ぜます。混ざったら、スプーンで焼きあがったケーキの表面に熱いうちに塗ります。冷やしたら16等分に切り分けででき上がり。

作った&食べた感想

メアリーのレシピの中でも最も簡単なケーキの一つ。面倒くさがりな人でも、簡単に作れますよ。基本中の基本のケーキですが配分が絶妙! 酸っぱすぎるのが苦手な方はレモンの量を半分にしてみると、より優しい味に仕上がります。

メアリー・ベリーの公式サイト

参考図書:『Mary Berry Cookery Course

Dorling Kingslay Limited UK2013



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