今年10月、『ニューヨーク・タイムズ』誌によりハリウッドの大物プロデューサーであったハーヴェイ・ワインスタインのセクハラやレイプ疑惑が明るみになったのをキッカケに、続々と被害に遭った女性たちが告発を続けているハリウッド。さらに名女優のサルマ・ハエックもセクハラをされた過去を寄稿し、そのあまりに衝撃的かつ生々しい内容が話題に。

サルマ・ハエックに対するセクハラとパワハラ

ニューヨーク・タイムズ』誌での告白によると、サルマは出世作となった『フリーダ』の舞台裏で、ハーヴェイ・ワインスタインから様々なセクハラやパワハラを受けていたという。

「ハーヴェイは、私にとってはモンスターだった。すでに終わったことだと、何度も自分自身に言い聞かせてきたの。私は、"人を許せる心の広さ"に誇りを思っていたけれど、起こったことを具体的に話すのに躊躇するようならば、本当は自分の中で解決してないんではないかと気づいたんです」

始まりは、映画のプロジェクトをハーヴェイに持ち込んだところからだったそう。

「彼は、最低限の賃金に10パーセントを上乗せした額を出演料として支払うよう約束してくれました。プロデューサーとしてのクレジットも入ることになりましたが、そちらのギャラはなし。でも、将来的に(ハーヴェイの会社である)ミラマックスと数本の映画を制作する契約だったので、キャリアアップにつながると思ったんです」

しかし制作が進むにつれ、ハーヴェイからは多くを要求されるように。

「私は、何度も彼に『ノー』と言いました。ホテルやロケ地、それも場所が変わっても何度も突然やってきた。部屋に入ろうとする彼に『ノー』と言い続けました。彼は、まったく関わっていない映画のロケ地に現れたことだってあります。彼とシャワーを浴びることに『ノー』。彼の前でシャワーを浴びること、彼にマッサージをさせてあげること、彼の裸の友人からマッサージを受けること、オーラルセックスをさせてあげること、女性と裸になること…『ノー』と言い続けました。おそらくそれは、ハーヴェイが最も嫌いな言葉だったのでしょう。私が断るたびに、彼は怒りました。『お前を殺してやる、できないと思うな』と脅迫されたこともありました」

サルマが自分の思い通りにならないと分かると、あらゆる手を使って『フリーダ』の製作を中止させようと動き出したハーヴェイ。「ギャラ無しで脚本を書き直す」、「1000万ドル(約11億円)の資金を用意する」、「大物監督の参加」、「4つの小さな役所に有名な俳優を雇う」という無理難題を持ちかけられても、サルマは果敢に立ち向かい、すべてやってのけたそう。それでも、どうしても1つだけ、逆らえなかったことがあったという。

「(無理難題を)すべて成し遂げたにも関わらず、私の『唯一の魅力で才能は、セクシーであること』だと、ハーヴェイに言われました。だから『セクシーさを封印しているこの映画には、何の良さもない』と。そして、この映画を作り続けたいならば、他の女優と一緒に完全なヌードシーンを撮影することを条件に出されたんです。私は、『ノー』と言えなかった。もう何年という時間をこの映画につぎ込んできたから」

「撮影の時、ストレスに襲われて、私は人生で初めてパニックになりました。息もできず、泣き続けたんです。女性と一緒にヌードシーンを撮るからではありません。"ハーヴェイのために"ヌードになることに、パニックになったんです。周囲は私と彼のそれまでのやり取りを知らなかったので困惑していました。スタッフが私の準備を待つ中、私はとうとう吐いてしまいました。結局、精神安定剤を飲んで挑みましたが、泣き止むことはできても吐き気は悪化しました」

その後も「映画の公開を取りやめる」と脅されるなど、様々なパワハラを受けたというサルマ。なんとか無事に映画館での公開までこぎつけ、最終的にハーヴェイがアカデミー賞の6部門でノミネートされ、2部門受賞する結果に。

「なぜ女性のアーティストは、自分たちの物語を伝え、そして実力を発揮するために戦争に行かなくてはならないのでしょうか? なぜ私たちは、尊厳を守るために必死に戦わなくてはならないのでしょうか?」

「女性にも男性と同じ価値があると認められない限り、この業界は捕食者にとっての肥沃な土地であり続けるでしょう」

サルマのこの生々しい告白に、ジェシカ・チャステインやリース・ウィザースプーンなど多くの女優仲間がサポートを表明。

一方でハーヴェイはというと、この告発に対する否定コメントを発表。

「無意味なセックスシーンを撮るようプレッシャーを与えた覚えはないし、現場にもいなかった。そして、あのシーンはキャラクターにとって重要なもので、演出もサルマとジェフリー・ラッシュで考えたものだ」

有名音楽プロデューサーによるセクハラ&レイプ疑惑

サルマの告発と並んで注目を浴びているのが、ヒップホップの大手レコーディング会社「Def Jam」を立ち上げた大物音楽プロデューサーのラッセル・シモンズへのセクハラ疑惑。彼は現段階で13名もの女性からレイプなどを告発されており、そのうち7件はニューヨークで起こったものだったため、ニューヨーク市の警察が捜査を開始したよう。

しかし、ラッセルはこれらの疑惑を否定

「私はすべての疑惑を激しく否定します。心底驚いていますし、過去に持った関係は全て合意の上でした」

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「今日から私は主張をします。全てのレイプ疑惑に対し、潔白であることを証明します。今日は"1つ目の罪"(17歳の時に、ブレット・ラトナーが見ている中でレイプされたと告発した)ケリ・クラウセン・カリギーに注目します。彼女の主張から、すべての『#MeToo(私も)』が始まりました。私は『#MeToo』のムーブメントを否定しているのではありません。私を告発した人物に責任を取ってもらいたいのです。ですから、私は『#NotMe(私は違う)』と書きますが、これはムーブメントにするためではありません。あくまで私が無実であることを訴えているだけです」

その他にも、ダスティン・ホフマンに新たな疑惑が浮上しただけでなく、歌手のニック・カーターは元交際相手から向けられた疑惑を否定、人気司会者でジャーナリストのマット・ラウアーは複数の女性から告発を受け、一部を認めた上で謝罪している。

止まないセクハラ告発の嵐。批判に曝されるリスクを負いながら声を上げた女性たちの勇気を無駄にせず、ハリウッドはもちろん社会全体が変わっていくことを願うばかり。