アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーの最高経営責任者(CEO)を務めるドーン・ハドソン氏。大物プロデューサーや映画監督、俳優などの相次ぐセクハラ疑惑騒動を受け、行動基準(Standards of Conduct)に関する書簡を、改めてメンバーに送付したそう。

米『バラエティ』誌によると、彼女は一連の騒動を受け、問題解決にあたる対策本部を設置。このチームは、主にアカデミーの行動基準を見直すもので、ハドソン氏は「まだ課題は山ほどあります」、「タスクフォースは被害者からの告発を受けたとき、私たちが平等かつ迅速に対処できるよう、さまざまな対策を練ってくれています。具体的な対処法は来年、メンバー宛に送付する予定です」とコメント。

アカデミーの行動基準には、「(アカデミー会員は)人間の尊厳と多様性をリスペクトするというアカデミーの価値観をもとに、倫理観を持って行動することが義務付けられています」と記載されている。また「行動基準に違反して、自分の地位、権力、また影響力を乱用する者」は除名や追放を含む懲戒処分の対象になるとの注意書きも。

メンバー宛に送られた書簡には次のように書かれている。

「アカデミーのメンバーシップは、世界的な映画製作者というごく限られた人たちに提供される特権です」

「映画芸術科学の分野で優れた成果をあげることに加え、メンバーは人間の尊厳や多様性をリスペクトし、創造力を育てる環境を支援するというアカデミーの価値観をもとに、倫理観を持って行動することが義務付けられています」

「アカデミーは、全メンバーがそうした原則を守り、原則に違反する者を目撃した場合は責任を持って対応してくれることを期待しています」

「アカデミーには、行動基準に違反して、自分の地位、権力、また影響力を乱用する者の居場所はありません」

「ジェンダー、性的指向、人種、民族、障害、年齢、宗教、また国籍に基づく虐待や嫌がらせなど、あらゆる形態の差別は断固反対です」

「理事会(Board of Governors)は、アカデミーのミッションや価値観を反映させるためにも、これらの基準が必要不可欠だと考えています」

「基準に違反する者、またアカデミーの品位を損なう者がいれば、理事会は原則に従い、懲戒処分を行うことができます」

米『タイム』誌が先日、今年の「パーソン・オブ・ザ・イヤー(今年の人)」にセクハラ被害を公表した「Silence Breakers(沈黙を破った人たち)」を選出したことは記憶に新しいはず。同誌のカバーを飾った女優のローズ・マッゴーワンやアシュレイ・ジャッドは、大物プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインからのセクハラを告発し、同じような被害にあった女性や男性たちにも立ち上がる勇気を与えた。

そしてそんな事態を重く受け止め、ようやく行動基準見直しに踏み出した映画芸術科学アカデミー。来年には対処法も確定するということなので、その内容にも引き続き注目を。

Translation:Reiko Kuwabara

From:Harper's BAZAAR UK