女優として活躍する一方、2000年からは人道支援活動に従事し、現在はUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の特使としても、難民を救うために日々尽力しているアンジェリーナ・ジョリー

そんなアンジーが昨日<ニューヨーク・タイムズ>に、現在世界で波紋が広がっている米国の「入国禁止令」について、政権に向けた公開レターを掲載。

ここでは彼女がレターの中に綴ったコメントを、一部抜粋してお届けします。

難民とは、戦火に巻き込まれ、迫害を受けた男性や女性、そして子供たちのことです。テロリストとは程遠い存在であり、時に彼らがテロの被害者となることもあるのです。

「人権は文化や、国や、民族や、宗教を超えて存在する」という概念を守るために、アメリカの人々は心血を注いできました。難民の受け入れを停止し、イスラム教7カ国からの入国を拒否するという決断に世界の仲間たちがショックを受けているのは、アメリカにこういった歴史があるからです。

世界的な難民危機とテロの脅威は、確かに私たちにとって、いかに国境を守るかを考えさせられる問題です。すべての政府が、国際的責任と、市民の要望のバランスを見出さなければなりません。しかし、私たちが出す答えは、恐怖心からくるものではなく、事実を元に熟慮されたものであるべきです。

もちろん、別々の地で生まれながらもアメリカに誇りを抱いている6人の子供たちの母親として、この土地が彼らにとって、そしてすべての子供にとって、安全な国になってほしいと願っています。しかし同時に、私は知りたいのです。避難を必要とする子供たちが、慈悲深きアメリカに亡命の理由を説明するチャンスは与えられないのでしょうか。地理的、または宗教的な部分だけで、その国の全ての人や、赤ん坊さえをも危険とみなし、一切を拒絶すること以外に、この国の安全を守る方法はないのでしょうか。

恐怖心からなる行動は、私たちのやり方ではありません。弱者を標的にすることが、強さを見せつけることにはならないのです。

この国を安全な国にしたい。だからこそ、テロの脅威の根源となっているものに、じっと目を向けなければならないのです。IS(イスラミックステート)のような組織に活動する隙を与えているものは何なのか、彼らが(難民を含めた)人々にどれほどの絶望を与え、どれほど不法なことをしてきたか。同じ脅威と闘い、安全を求めるという共通の信念を持った私たちは、団結すべきなのです。これが、私がすべてのアメリカ国民を代表して、この偉大なる国の大統領に望むことです。

特筆すべきは、アンジーが記事のタイトルにも記述している「恐怖心からではなく、事実を元に行われるべき」というフレーズ。これはアメリカのみならず、この世界で生きる私たち人間1人1人にとっても、じっくりと向き合うべき重要なテーマといえそうです。