アンセル・エルゴートpinterest
Noriko Yoneyama

全米興行収入1億ドルを突破し、世界各国で話題のカーアクション映画『ベイビー・ドライバー』。スリリングな展開を盛り上げる名曲との完璧なコラボレーションは『ラ・ラ・ランド』超えとも言われ、迫力のカーチェイスシーンは見応え満点。主人公ベイビーを演じるアンセル・エルゴートが映画公開に合わせて来日! 

2015年のEDMイベント「ウルトラジャパン」にDJアンソロとして参戦して以来の来日となったアンセル。NY出身で、有名なフォトグラファーの父親をはじめアーティスト一家に育った彼は、シャイリーン・ウッドリーと共演した『きっと星のせいじゃない。』(2014)の世界的大ヒットで、ハリウッドスターの仲間入り。プラダの顔をつとめたり、ファッションアイコンとしても注目を集めるほか、最近ではレコード会社との契約を果たすなど、ミュージシャンとしても有望な才能あふれる23歳。

身長193cmというモデルのようなルックスとスウィートなキャラクターで、アメリカをはじめ、世界中の女子に絶大な人気を誇るイケメン俳優アンセルに、コスモポリタンが直撃!

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――あなたが演じる主人公ベイビーはどんな人?

ベイビーは子どもの頃に自動車事故に遭った男なんだ。7歳の時に両親と死に別れ、耳鳴りがするようになって…それ以来、車を盗んだり、運転したり、とにかく車のことばかり考えているんだ。耳鳴りをかき消すためにいつも音楽を聴いていて、その音楽が映画を突き動かしている。ベイビーは犯罪組織のボスであるドク(ケヴィン・スペイシー)に借りがあって、それを返すために運転手として彼の強盗団に加わっている。

――ベイビーの華麗な運転ぶりは作品の大きな見どころですが、この映画のために特訓をしたのでしょうか?

もともと運転の仕方は母に教えてもらったんだけど、というのは家族の中で一番運転が上手なのは母で、父は下手なんだ(笑)。A地点からB地点に行くみたいな普通の運転なら、かなり上手だと思うよ。今回の映画の場合は、スタントドライビングが必要になるので、スタントドライバーと一緒にトレーニングをしたんだ。車の中にいるシーンの撮影は、実際にはスタントドライバーが動かしていて、あたかも僕が運転しているかのように撮っていることもあるんだけど、シフトしたときにカラダがどっちのほうに傾くかとか、急ブレーキを踏んだときにどうなのるかとか、ベイビーの動きを特訓したんだ。この映画がすばらしいところはCGを極力使ってなくて、ほとんど実地でやっていることなんだけど、僕はベイビーのすべての動きと理論を自分でもできるように、知る必要があったんだよね。

――SNSではよく曲を作っていますね! 音楽好きなところはベイビーと似ていますか? ほかにもご自分とベイビーの似ているなと思うところを教えてください。

ベイビーはとても「忠誠心」があると思う。彼は(ヒロインの)デボラ(リリー・ジェームズ)に恋をしてから、悪いことが起こっても、ずっとデボラに対して忠実で、すべてのリスクから彼女を守ろうとする。育ての親のジョー(CJ.ジョーンズ)に対しても同じで、彼は自分の近くにいる大切な人が安全でいられるようにという強い思いがあるキャラクターなんだ。「忠誠心」は、僕の人格にとっても重要なこと。ベイビーもそうだけど、僕もアグレッシブな男ではないし、喧嘩をけしかけるようなタイプでもないけれど、家族や愛する人に何かあれば、行動を起こすし、守りたいと思うタイプだから。そこが僕との共通点だと思うし、彼の気持ちはすごく理解できるね。

あとベイビーは、ベイビーなんだ。若い男性で、まだまだ成長途中で、遊びゴコロがある。そこもベイビーと似ているかな。早くからスーツを着て、大人の男を気取っている人もいるけど、僕は自分の若さを謳歌したいと思っている。僕はまだ23歳で、その23歳という時間も限られていて、子供でいられることがハッピーなんだ! エドガー・ライト(監督)は僕がこの役に向いていると思った理由の1つに、いつも大人になったフリをしているような男子ではなくて、"僕にまだ子供らしさがあるから"ということもあると思うよ。

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――俳優だけでなく、ミュージシャンとしても活躍していますが、どう両立していますか?

この映画では、完全に両立できたね。たぶん、音楽活動をしているからこの役をもらえたんじゃないかと思うんだ。エドガー・ライトとは初めて会ったときから意気投合したよ。でも最終的には、僕が音楽やダンスもやっていることが有利に働いたんじゃないかな。 この映画では、アクションや銃撃戦やカーアクション、それにさりげない動きにいたるまで、振り付けされているからね。僕自身のキャリアについていえば、どちらか一方を選ばなければいけない理由は思い浮かばないな。演技も音楽も大好きだから、両方やっているんだ。

――多くのシーンが演出を曲に合わせて作られているそうですね。特に、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンの『ベルボトムス』に合わせた圧巻のオープニングシーンは、すべてのタイミングを合わせるのが大変だったのでは?

あれは本当にチャレンジングな撮影だったよ。日曜日なら交通量が少ないということでアトランタのハイウェイをブロックして撮影していたんだけど、時間が限られてしまうわりに、大変な撮影だから、撮影期間中はほとんど週に1回、日曜日は『ベルボトムス』のオープニングシーンという感じで、何度も撮影したんだ。冒頭の車の中で水のボトルを持ったりして、振り付けに合わせて演技するのが僕にとってはすごく楽しかったんだけど、運転のシーンはさっき言ったようにCGをほとんど使っていなくて、僕だったり、奥でスタントマンが運転するというやり方をしているんだ。ベイビーはずっとヘッドフォンをつけているわけだけど、ほかの役者さんにも見えないようにちょっと音楽が聞こえるようになっていて、毎回音楽をかけながら撮っていったんだよ。見ているとアドリブでやっているように思うかもしれないけれど、全部細かく振り付けられていて、それを覚えてやっていたんだよね。

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――今回、ケヴィン・スペイシーやジェイミー・フォックスなど、超ベテランのスターたちと共演はいかがでしたか?

彼らと仕事するのは「夢がかなった」という感じだったよ。最初はちょっとナーバスにもなったし、どうしよう、ビッグなスターと仕事するんだ、失敗できないって。でもセットに行ってみたら、リハーサル初日にいきなりみんながとても優しくて、温かくて、サポートしてくれるような方々ばかりだったんだよ。

ジェイミー・フォックスのことはバスケ好きだし、素晴らしいミュージシャンでもあるし…彼のことはよく知っていたから、撮影が終わるころまでには仲良くなって、出かけたり、僕の音楽を聞いてもらえたりできたらなと思っていたんだけど、最初のリハーサルの日に、ジェイミーが、「ヨー! 音楽作っているの、知ってるよ。一緒にやろうよ」って(ものまね口調で)。もちろん、やりましょう!って返事をして、電話番号を交換して、初めて会ったその日の夜に家に招いてくれたんだ。アトランタにある彼の家にはバスケットコートも音楽スタジオもあって、一緒にバスケをしたあと、自分の音楽を聞いてもらって、その音楽に対してアドバイスをしてくれたんだよ。僕の想像のなかで偉大なスターだったジェイミー・フォックスが、会った初日から僕にすごく優しくしてくれるなんて、本当に信じられなかったね。今ではとても仲がいいんだよ。

――実際に自分にそんなことが起こって、どういう気分ですか? もし子供の頃の自分に今の話しを伝えるとすると、どういうふうに話しますか?

Oh my god! 夢みたいだよね。昨日の夜、クレイジーすぎる夢を見たよって友達に話すみたいな感じかな。ジェイミー・フォックスと会って、バスケして、一緒に音楽プレーして、すごくいい夢だよね。そのまま寝てたほうがいいような(笑)。

ジェイミーだけでなく、ケヴィン・スペイシーとは『ベイビー・ドライバー』の前に『ビリオネア・ボーイズ・クラブ(原題)』という映画でも一緒で、その撮影もすごく楽しかったんだけど、今回ケヴィンのことをよく知るようになって、僕にとって彼はメンター(指導者・助言者)のようでもあり、よき友人でもあるね。今朝も彼とメールしていたんだよ。これまで僕は10本近い映画に出てきて、知り合いや仕事仲間もできたけど、この映画では本当の友人ができたんだ。それが超ベテランスターであるジェイミー・フォックス、ケヴィン・スペイシー、ジョン・ハムだなんて、信じられないよね! 彼らとは今も連絡をとっていて、どこかで一緒になると「会おうよ、遊ぼうよ」という話になるんだ。こういう友情が築けるって、特別だよ。

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インタビュー翌日の舞台挨拶では、「いまでは誰もが知っている『エイリアン』や『ターミネーター』だって、最初はひとつのオリジナル作品だったわけで、まったくのオリジナルストーリーである『ベイビー・ドライバー』が同じように、20年たってもみんなの記憶に残るような、愛され続ける作品になるとうれしい」と語っていたアンセル。ベイビーのドライビングテクはもちろんのこと、名優たちが演じるアクの強いワルのなかで際立つ、センシティブで、ピュアで、キュートなベイビーの魅力にノックアウトされること間違いなし!

ベイビー・ドライバー

監督/エドガー・ライト 出演/アンセル・エルゴート、リリー・ジェームズ、ジェイミー・フォックス、ケヴィン・スペイシー、ジョン・ハム、エイザ・ゴンザレス  配給/ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

新宿バルト9ほか全国劇場にて公開中