エリザベス女王と長男チャールズ皇太子の関係性は人々の関心を集め、多くの議論を巻き起こすものだった。エリザベス女王は26歳の時に英国女王の座に就いたため、子供たちが幼いうちから王室の公務に取り組まなければならず、1953年の戴冠後にはイングランドの自宅に子供たちを残して6カ月間に及ぶ連邦ツアーを敢行した。エリザベス女王の世代と階級では、幼い子供の日常的な世話を使用人に任せることはごくあたり前のことだった。そのため、チャールズ皇太子は乳母や最愛の祖母と築いたようなつながりを、エリザベス女王との間には持つことができなかったよう。
『ザ・クラウン』でアドバイザーを務める歴史家のロバート・レイシーによれば、世界中に連れ歩くよりも乳母に任せる方が子供たちにとってはより良いはずだと、エリザベス女王は考えていたという。「エリザベス女王自身も、両親が公務で留守になるため、住み込みの家庭教師たちから教育を受ける環境で育った」と『タウン&カントリー』に語った。1994年に出版されたチャールズ皇太子の公認伝記を執筆したジョナサン・ディンブルビーは、彼の初めの1歩(歩き出し)を見届け、彼に遊びを教え、彼を叱り褒めたのは保育園の職員だったとコメントしている。また、最近出版された伝記の作者サリー・ベデル・スミスもディンブルビーと同様の見解を示した。「父親(ジョージ6世)の死でエリザベスが女王になったとき、背負う義務に対する彼女の献身は、子供のための時間が短くなってしまうことを意味していた。家族のための決断は夫(フィリップ王配)に、子供たちの日常的な監視は乳母に頼った」