売れるのはCMが巧すぎるから

【前編】【中編】とEMSについて熱弁してきましたが(笑)、今回がラストです。

べつにEMSを批判しているわけではないんですが、私の考え方でいうと「腹筋を割るという目的で使うにはEMSは向いてない」。でも、クライアントさんから質問されるほど、いまだに人気があるアイテムなことも事実です。

で、なぜそんなに人気なのかと私なりに分析してみれば、それは「コマーシャルの巧妙な心理作戦」だと思うんです。

モデルは影で超努力してる

EMSアイテムを紹介するモデルは、男女とも引き締まっていて腹筋ボコボコ! そんな人たちがベルトを巻いて出たら、「これを巻くとこうなれるのか!」と一瞬で思ってしまうのが人間ですよね。

でもそのモデルたち、じつは撮影前、おそらく2週間は食事を調整し、撮影本番の10分くらい前には腹筋運動を200回くらいやってパンプアップ(筋肉がパンパンに張ったような状態を作ること。一時的に筋肉がより強調されるので見た目も変わる)させてるんです。

私もフィットネスモデルとして仕事を頂くことがありますが、撮影される前は食事を調整して見せる身体づくりに変えていきます。多かれ少なかれ、筋肉を見せる仕事をしている人は、撮影前は意識して身体を絞って(=脂肪を落とす)いるはず。まあ当然、そんな実情はプロのモデルであればあるほど、口外しないでしょうけど……。

だから皆さんがCMで見ているような「うわー超筋肉ついてる!」と思われるような身体は、想像を超える努力で出来上がるもの。でもCMはそこは見せません。仕上がった身体にベルトで巻かれて出てきたら、これでそうなるのか!って錯覚します、誰だって。でも実際はちがう。ベルト以外の努力があって、その身体ができているということです。

もとはリハビリで使うもの

そもそもEMSは、医療機関でリハビリに使われるためにデザインされたと言われています。骨折などで身体を動かせない人に対して、筋肉が衰えることを防ぐために使われていたんです。動かない身体に刺激を加えることで、筋肉が最低限アクティブな状態でいられるようにしたんですね。ちなみに、CMに出てくるモデルのように筋肥大ができるかどうかは、まだ証明されていません。

中には「ベルト巻いて筋肉痛になった!」という人もいますよね。でもそれはつまり、超微弱な電圧ですら効いてしまうほどの、超運動不足な人ってこと。となると、どんなに刺激が小さくても、普段からまったく筋肉を使えていない人には、効果があると言えるかも?

結論、自分で鍛えた方が早い

そんな人は稀として、腹筋を本当につけて結果を出すなら、しっかり腹筋を使うエクササイズを自分ですることです。電気刺激のような「やった感」はないかもしれませんが、脳を使って腹筋を動かすには自分で鍛えるしかありません。

EMSアイテムが「ラクして結果を出したい」という人の心理をついていることに、うすうす気づいてる人は多いと思うんです。でもそれ自体を信じたくない……だってそれが正しければ、自分でやらないといけないですからね。

楽しみながら身体を変えることはできても、楽(ラク)に体を変えることはできません。ラクに身体を変えられる商品を今か今かと待っているより、早く自分で動いて、身体を変えた方が早いですよ。

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