私たちが生まれてきた場所、そして愛する人との新しい命を育む場所。女性たちの「子宮」は未来へ繋がる宝箱といっても過言ではありません。普段は目に見えない部分だからこそ、きちんと目を向け、労ってあげたい…。今回は、若い世代にこそ知ってほしい「子宮頸がん」の早期検診の重要性について、「LOVE49プロジェクト」(認定NPO法人子宮頸がんを考える市民の会)の渡部享宏さんに伺いました。

——まずは、「LOVE49プロジェクト」について教えてください。

4月9日は「子宮頸がんを予防する日」。検診の重要性を知ってほしい

これは、僕たちが2005年に立ち上げたNPO団体「子宮頸がんを考える市民の会」が実施している子宮頸がん予防のための啓発活動で、現在はおもに2つのテーマでプロジェクトを進めています。

"子宮頸がんを知るきっかけが、本人やその身近な人にならないために…

まずは、子宮頸がん原因と予防法である検診の重要性を知っていただくために声をあげること。そのために、49日を「子宮頸がんを予防する日」と記念日登録し、この病気に関わる医療従事者と共に作成したフリーペーパーを全国的に配布したり、行政や企業とタイアップしたイベントや講演会を行っています。残念ながら、子宮頸がんの死亡率は年々、増加傾向にあります。その大きな原因は、やはり検診を受けていないこと。早期発見、そして治療をすれば、子宮頸がんは治る病気なので、これは非常に残念です。やはり、子宮頸がんを知るきっかけが、ご自身やその周りの親しい方になるという事態だけは避けたい…。そのためにも、今後はもっと啓発活動の幅を広げていきたいと考えています。

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それとともに、子宮頸がん検診に行きやすい社会システムを整えることも大事です。現在の日本社会には、自治体サービスとしての住民がん検診と、会社の健保組合から提供される職域がん検診の、大きく2つの検診プログラムが走っています。とくに後者における、がん検診の実施がまだまだ脆弱で、大企業の単一健保などでは積極的に行われていたりする一方、中小企業の多くの会社では行われていないといった実情です。より多くの女性にがん検診を受けていただくためにも、国や企業への働きかけを強めていきたいです。

——子宮頸がんは、若い世代にはあまり馴染みのない病気な気がします…。

子宮頸がんの最大のポイントは、若い女性が発症しやすい病気なのに気づけていないこと

実は、子宮頸がんは若い世代こそ発症しやすい病気なんです。そのため、国も子宮頸がんに関しては20歳からの検診を勧めています(その他のがんは40歳から)。この病気で命を落とすこともはもちろん、結婚・妊娠の前に子宮を摘出せざるをえない方がいるということをあまり知られていないことが大きな問題です。

——子宮頸がんになる主たる原因は?

セックスをしたことのある女性であれば、誰しも感染しうる「HPV」

子宮頸がんは、「HPV(ヒトパピローマウイルス)」というウイルスに持続感染をすることにより発症します。これは性交渉をしたことがある女性であれば一生に一度は必ず感染するとも言われるありふれたウイルスです。ただ、一部のHPVはがん因子をもっており、数年〜10年ほどかけて体内で変異しながら、子宮頸がんへとつながるというメカニズムになっています。

——子宮頸がんは、年齢が若いほど進行が早いとも聞きますし、やはり早期発見のための検診は欠かせませんね。

マタニティ検診でがん発覚…。最悪の事態を避けられる社会になってほしい

中には、妊婦検診のときに子宮頸がんが判明する例もあり、これは社会的にも一番避けたいケースです。そうならないためにも、より早い段階で子宮頸がん検診に行っていただくことが重要です。その他のがん検査と違い、子宮頸がんの場合には直接細胞を診るので、がん細胞になる前の段階で因子を見つけることができます。若い女性であれば、25歳のタイミングで一度必ず受診すれば、20代後半からの子宮頸がん発症は避けられるという専門家もいます。子宮頸がんはもちろん、経膣エコーも行えば子宮内膜症などその他の病気の早期発見にもつながりますよ。

アラサー世代は、子宮頸がん検診にプラス「HPV検査」も受けると安心

また、30歳以上の方には、がん検診時にあわせて「HPV検査」も受けることをお勧めしています。HPVとは、子宮頸がんの原因となるウイルス。細胞診と同時に行え(結果が出るまでは約1週間)、コストは子宮頸がん検診にプラス5000円ほどで原因ウイルスが無くなっているかがわかります。日本はまだそこまでいっていませんが、例えばイギリスなどでは、HPV検査で問題がなければ、その後の5年間は子宮頸がん検診を受けなくても良いとされているなど広く認知されています。

——こうしたお話を伺うと、検診を受ける重要性は感じるものの、とくに若い世代においては初めての婦人科検診に「怖い」「緊張する」という感覚を覚えて躊躇してしまう女性も多いと思います。

最近では、ホテルのような空間でリラックスして検診が受けられる病院も増えていますよ

そうですね。以前に行ったアンケートでは、「男性医師に子宮がん検診に携わられるのには抵抗がある」という声も多くありました。産婦人科医不足という問題もあり、その中で女医さんばかりを揃えるということも難しいのでしょうが、例えば海外ではトレーニングを積んだ看護師さん・助産師さん(女性)に内診を許可するなど、女性が受診しやすい環境もあります。そういうふうに、日本でもより女性目線にたった検診システムが整備されるべきだと感じ、厚生労働省に働きかけを行っている最中です。

一方、最近では、女性専門のフロアや、ホテルのようなラグジュアリーな空間での検診ができる病院も増えています。以前よりも女性が健診に足を運びやすい雰囲気になっていると思うので、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。

——LOVE49」では、ほかにどんなことをされていますか?

キャラクターを用いたバッジやTシャツ、大丸松坂屋百貨店で販売している「オリジナル・エコバッグ」の収益金の一部をLOVE49の活動に寄付いただいています。

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最近では、グッズ販売に加え、成人式用のパンフレットも作成しているんです。これは、地元の成人式に行くと配布されるもので、20歳という最適なタイミングでの検診の促進につながるということもあり、全国の行政の皆さまに重宝していただいています。

子宮頸がん患者の遺族の中には、幼いお子さんを残し、若くして奥さんを亡くすという悔しい経験をされた男性もいらっしゃいます。子宮頸がんと直接的には関係のない男性であっても、若いうちから正しい知識をもつことで、ひいては生まれてくるはずの子どもの命や、パートナーの命を救うことにつながるかもしれません。そういう思いもあり、冊子の内容はあえて男女ともに届く内容で編成しています。

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——子宮頸がん検診は、出産という選択肢や自分の命を守ることにもつながるんですね。

自分の命は自分で守る。そのために、まずは早期検診を

まったく検診を受けないで子宮頸がんになる可能性がある道と、それを回避できる道。検診を通し、自分の人生が選べるといっても過言ではありません。ご自身の望む明るい未来のためにも、毎年の健康診断にプラスするなど、定期的に子宮頸がん検診を受けるようにしていただけたらと思います。あわせて、ご家族や友人など、まわりにいる女性たちにもぜひ呼びかけを広めていただきたいです。


NPO法人 子宮頸がんを考える市民の会

理事長 渡部享宏さん

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大学生時代に、HIV/AIDS予防・啓発学生団体を設立。活動を進める中で、発症する経緯や若い世代がかかりやすく将来に影響する病気であることなど、エイズと背景が似ている子宮頸がんのことを知り、以降、医療者と共に若いころからの定期的な検診の重要性を広く社会に呼びかけ続けている。