昨年10月に「発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由」を出版。自身のADD(注意欠陥障害)と向き合い、生い立ちから現在モデル・俳優としての活躍に至るまでを綴った栗原類さん(22歳)。

今回スキンケアブランド『キールズ』が、2017年のグローバルチャリティー活動として、発達障害の1つASD(自閉症スペクトラム)の支援団体「AUTISM SPEAKS」への寄付を通じて、ASDの子どもたちと家族をサポートする活動を実施することを発表し、イベントを開催。その日本のチャリティーパートナーを務めているのが、栗原さんだ。ASDへの関心を高め、ADDである自身の経験を伝えていくことで、発達障害への理解を得られるようにと支援を行っている。その思いと、これまでの経験について伺った。

ASD(自閉症スペクトラム)とは、発達障害の1つで、世界人口の1%がこの症状に該当すると言われている。また、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)によれば、米国では68人の子供のうち1人が、日本では55人に1人ASDと診断されると推定されている。

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Cédric Diradourian

栗原類

俳優、モデル。イギリス人の父と日本人の母を持つハーフ。幼少期から行っているモデル活動の経験を経て、その後バラエティ番組でも活躍。2012年から役者としてドラマ、映画、舞台に出演。2014年にはパリコレのランウェイデビューも果たす。2016年10月、著書「発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由」を出版。近年は、映画「アニバーサリー」「インターン」「新宿スワンⅡ」、舞台「気づかいルーシー」「春のめざめ」などに出演。

――この本を出版された理由を教えてください。

テレビ番組で発達障害を話したのがきっかけです。出版の話をいただき、社会全体で「発達障害とは何か」を知ってもらおうと思い書きました。僕は公表したというわけではなく、この仕事を始める前からSNSなどで、自分はこういう人間ですと伝えていたので、もっと詳しく自分はどういう人間なのかを伝えていくという気持ちでした。隠しているつもりもなかったので、出版後、多くの方から「勇気のある行動だ」と言われ、すごく恐縮しました。

――ご自身のADDについてですが、どのような症状なのでしょう?

症状は人によって様々です。僕の場合は、準備がきちんとできなかったり、順序をたてて物事を考えるのが難しかったり。あと、なんでも寝たらすぐ忘れてしまう性格で、記憶力が弱く、長く覚えることができないんです。例えば、反省した出来事など、その時はすごく反省するんですが、一晩寝ると何も起こらなかったかのようになってしまうんです。小学生の頃、母親に「発達障害だよ」と言われた後も忘れていました。本格的に発達障害であると認識し始めたのは(自分が)中学2、3年生のときです。

――本を書く際に、幼少期のことを詳細に綴られていますが、実際そういった思いを振り返るときにどういった工夫をされたのでしょう?

自分が幼少期のこと全くを覚えていないので、その頃について書くのは大きな課題の1つでした。小学校の時に自分がどういう人間だったか…学生時代も学校のみんなが嫌いだったので、学校のことも詳しくは覚えてなかったんです。母親や16年近く診てくれている主治医の高橋先生、学生時代の友達に自分はどういう人だったのかを聞きました。思い出そうとするのが一番大変で、一時期はスランプになって本当に本が出せるのかなと不安になることもありました。

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Cédric Diradourian

――お母さまが子育てについて詳細に書いている章がありますね。「幸せになってほしいという気持ち」と「人と比べずに(栗原さんにとって)ベストな選択をしてきました」とありましたが、今、お母さまの気持ちをご覧になってどう感じましたか?

学生時代は、母親の気持ちやどう育ててきたかというのを感じ取ることができなかったんです。今回初めて知ることも多かったんですが、本当は何十回も言われているけど、自分の記憶力が弱いために初耳のように感じているのかもしれません。ここまで自分を育ててくれたことへの気持ちは、なかなか言葉にできないですね。

――テレビで見ていると、すごく穏やかで謙虚な方だと感じていたのですが、その性格はお母さまの影響も大きいのでしょうか?

そうですね、母親が元々音楽ライターをしていて、芸能界と音楽協会は違うもののモデルの仕事を始めるときに「周りのスタッフさんには何年も経験があって、一番の下っ端はお前なんだ、それを忘れるな」って言われていました。僕もモデルの仕事を幼いころに始めて芸歴は多少あるとはいえ、スタッフさんたちは何十年もいろんな作品に関わって、そういう人たちが支えてくれていますし、「自分自信も作品を支える一部だという気持ちを忘れるな」と。メディアに出るときは、素でやっているという感覚がありますね。

――お母さまや高橋先生、NYで診断を勧めてくれた小学校の先生など、親身になってくれる人がこれまでサポート体制を作ってこられたんですね。

今、僕がこの仕事ができるのは周りの人たちがサポートのおかげで、そのことによって自分が成り立っていると感じています。学生時代を思い返しても、ほかの生徒と上手くいかなかったりだとか母親に言えないことは、「私に相談しなくても、高橋先生に相談してもいいから」と言ってくれていました。

今、お芝居やバラエティーの台本、映画の資料を読み込んで、ものを覚えるのが普通の人に比べたら時間がかかってしまいます。でも仕事をしすぎて疲れがすごく溜まっていることに自分自身気が付けないんです。そういう時には、母や高橋先生が気付いて声を掛けてくれたり、事務所のスタッフやマネージャーさんたちも、僕のキャパシティがオーバーしないかを考えて、仕事を1つ1つ相談してくれます。

学生時代は周りにほどんど馴染むことができなったけれど、母親や高橋先生という信頼できる人がいたので、発達障害を持つ親御さんは、そういった信頼できる人を1人でもいいから探してほしいですね。

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Cédric Diradourian

――今回のキールズのイベントに参加してみていかがでしたか?

日本は、アメリカに比べて発達障害に関しての知識が40年遅れていると主治医の先生が教えてくれたんです。でも、キールズさんのような大きな企業がチャリティー活動やイベントを行い、長く続けていただくことで社会にも発達障害がなんなのかを知ってもらうきっかけになると思います。今からでも全然遅くはないですし、取り上げるメディアも多くなっているので、自分のような身近と思われる人が活動することで関心を持ってもらえるきっかけになったらいいですね。これからもできる限りサポートしていきたいと思います。

――周りの大人の方がサポートする上で、必要なことはあるのでしょうか?

あくまでも僕の個人的な意見なんですけど周りがサポートをするっていうのは、その人の好きなものを見つけることだと思うんです。発達障害の人たちって、うまくいかなくても自分の好きなことを学びたいと思う気持ちが強い人が多いと感じています。僕も、学生時代の時はゲームの遊び方を録画してインターネットにあげていた時期があったんです。でも、それに関して母親はやめなさいってことは一切言わなくて。自分がこういう好きなものがあるんだったら、それを伸ばしていっていきたいと思っていました。

ずっと自分で映像を作っていたのがきっかけで、自分もいつか映像制作に関わりたいという目標の1つがあります。なので、母親や周りの人たちが「それをやるな!」と言わないでいてくれたのは、すごくありがたいことでしたね。

――これから目標や夢はありますか?

学生時代に自分でカメラを回しながら作ったことはあるんですが、本格的な長編など映画や映像制作をしたいと思っています。舞台、バラエティーの仕事など、まだ知らないことが多いので、知らないことを繰り返し繰り返し学んでいきたいです。学んでいくことに対する楽しさに、最近やっと気付けるようになりました。


メディアでも活躍する栗原さんが自らの経験談を語ることで、発達障害のお子さんを持つ親御さんはもちろん、多くの人が発達障害とは何なのかを、より身近に感じるきっかけになったのではないだろうか。1人でも多くの人に理解しサポートに繋がれば…という、気持ちが伝わってきた。

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『キールズ』は、2017年チャリティー活動のグローバルパートナーを務める、アカデミー賞受賞俳優マシュー・マコノヒーとともに、「ASDを持つ子どもたちへの関心・理解を深めましょう」というメッセージを込めた支援ムービーを制作。また、キールズで最も人気の保湿クリーム、「キールズ クリーム UFC」のマシュー・マコノヒー監修による"キールズ×マシュー・マコノヒー限定エディション"を数量限定発売(9月9日原宿店先行発売、9月29日全国発売)。キールズは、これら支援ムービーの拡散(シェア1回につき1ドル)や、"キールズ×マシュー・マコノヒー限定エディション"の販売により、20万ドルを上限としてAUTISM SPEAKSに寄付し、ASDを持つ子どもたちとその家族の支援を目指す。

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