24時間ずっと日焼け止めで完全防備しなきゃ…と、構えてしまいがちな夏。デメリットばかり気にしてしまう紫外線だけど、実は適度な日光浴は身体や心にプラスの効果もあるそう。一方で、一般的に知られているように、日光浴のしすぎはシミやしわのもとにも。

曖昧になりがちな「紫外線」の知識をおさらいするべく、「オバジクリニック トウキョウ 」総院長の野本真由美先生に取材を敢行! 紫外線のデメリットを避け、メリットを享受するには…?

野本真由美先生

夏前に知っておきたい!「紫外線」のメリット・デメリット

オバジクリニック トウキョウ 」総院長。ビバリーヒルズにある美容皮膚科「オバジクリニック」と同じコンセプトで「スキンヘルス」を目指し、日本人に適した漢方、スキンケアやメイクの指導なども取り入れている。ミスユニバース新潟代表選考の審査員長も務める。著書に「美容皮膚科で生きる漢方」。

紫外線がもたらすメリット

太陽光が当たると、食事だけでは補いきれないビタミンDを皮膚でたくさん作ることができます。そして、ビタミンDはホルモンのように多彩な作用があることが分かっています。

現代人はビタミンD不足なケースが多々みられますが、その原因は日中を室内で過ごすライフスタイルの人が多いこと、外出しても日焼け止めを外用して常に紫外線を防御していることなどが挙げられます。

まず、日光浴が身体と心にもたらすメリットをみてみましょう。

肉体面でのメリット

  • 骨の減少を抑制。顔や姿勢を若々しく保つ

    顔の老化にも骨の変化は大きく関係していますし、姿勢の美しさにも関係します。

    • がんの抑制

    特に、女性に多い乳がんと大腸がんを抑制する力が高いのがビタミンDです。

    • アレルギーの抑制

    ビタミンDは花粉症をはじめとしたアレルギーを抑制する働きがあります。

    • 血流が良くなり、基礎代謝が促進される

    太陽光は紫外線だけでなく赤外線が含まれるため、体を温める力があります。血流改善に伴う基礎代謝促進が期待できます。

    • 成人病の予防

    血中ビタミンDが高い人は高血圧、糖尿病、心疾患にかかりにくく、認知機能も低下しにくいことが分かっています。

    • 長寿の傾向がある

    近年、ビタミンDは長命遺伝子に関与して寿命を伸ばし、加齢に伴って慢性疾患を引き起こす毒性蛋白質の蓄積を防ぐことがわかってきました。そのため、寿命が長くなる傾向があることが示されています。

    また、ビタミンDの生成がもたらす効果以外にも、日光浴には次のような作用があります。

    • 体内リズムを整え、睡眠の質を向上させる

    朝に日光を浴びると、その15時間後から夜の眠りの深さを決めるメラトニンが分泌されます。睡眠の質を向上するためには、朝の日光がキーワードです。

    • 皮膚疾患の抑制

    紫外線には皮膚の異常な免疫反応を抑制する作用があり、乾癬(かんせん)やアトピーなどの皮膚疾患が改善しやすくなります。

    精神面へのメリット

    • うつ状態を抑制する

    冬になると冬季うつ病の発症が多いことが知られていて、これは冬の日照量が少ないことによるビタミンD欠乏も一因です。

    • 幸せを感じさせてくれるホルモンが分泌される

    朝の日光は脳が幸せや安心感を得るために必要なセロトニンというホルモンを分泌させます。

    紫外線がもたらすデメリット

    紫外線が身体に与える影響を大きく2つに分けてみましょう。

    • 急性反応 

    サンバーン(日光皮膚炎)があげられます。皮膚に軽いやけどを負った状態で、赤み、かゆみなどが起こり、炎症後に色素沈着が半年ほど残ります。急性反応を繰り返すと、将来皮膚がんのリスクが高まります。

    • 慢性反応

    紫外線によるしみ、くすみ、しわ、たるみなどの光老化による皮膚障害があります。

    身体に良い「日光浴」と、健康障害を起こす「日焼け」の境界線

    皮膚に急性反応を起こさない程度の紫外線を少しずつ浴びるのが「健康によい日光浴」、急性反応を起こすものが「健康障害を起こす日焼け」と考えてください。

    紫外線のデメリットを避け、メリットを得る正しい方法は?

    季節によっても、住む地域によっても紫外線量は違うので絶対的なことは言えませんが、日頃紫外線に当たっていない方は、午前10時まで、あるいは午後3時以降の弱い紫外線に日焼け止めを付けず15分ずつ顔や首、腕などを日光にあてることから始めてみましょう。

    日光浴に慣れてきたら、紫外線量の多い午前10時から午後3時までの時間帯に週に34回、15分日焼け止めをつけずに日光にあたりましょう。

    特に40代以降の女性は骨量が減ってきますので、肝斑などのしみが悪化しない程度に日光に慣れておくとよいでしょう。

    日焼け止めの正しい選び方

    正しい日光浴の方法が分かったところで、次に知るべきなのが日焼け止めの知識。混乱してしまいがちなサンスクリーン選びのポイントを以下の3つのタイプ別に、野本先生が教えてくれました。

    外出はオフィスの通勤と家事の洗濯のみ

    ミネラルファンデーションSPF15程度のパウダー(紫外線散乱剤使用:ノンケミカル)が皮膚に最も負担が軽く、お勧めします。メイク後2時間以上経過して外出する際は、上からパウダーを重ねてください。

    ショッピングのために街歩き。カフェのテラスで休憩も!

    SPF30までのサンスクリーンをメイクの下に。皮膚が弱い人は、紫外線散乱剤(ノンケミカル)でカットすることをお勧めします。ウォータープルーフである必要はなく、専用クレンジング不要のものを。2時間以上経過したら、パウダー系UVをメイクの上から重ねてください。

    海水浴へ! ビーチで朝から日没まで過ごす

    SPF50のウォータープルーフのサンスクリーンを全身に2時間ごとに塗りなおす。塗り忘れやすい耳の上、唇、うなじなどにもON。また、帽子をかぶらないときは頭頂部の皮膚にも塗ってください。そして1日の終わりには専用クレンジングできちんと落とすことも大切!

    健康的に夏を過ごすためのアドバイス

    紫外線にも化粧品にも、“いいところ”と、“わるいところ”があります。化粧品のつけすぎもトラブルのもと。紫外線の当たりすぎもトラブルのもとですが、当たらなすぎるデメリットもたくさんあります。バランスよく、健康的な夏を送ってくださいね。