レディ・ガガやファーギーなどの衣装デザインも手掛けるナカザトさん。ベルギーアントワープ王立芸術アカデミーを日本人最年少で卒業し、2009年に自身のファッションレーベル「YUIMA NAKAZATO」を設立。この7月には、「パリ・オートクチュール・ファッション・ウィーク」の公式ゲストデザイナーのひとりとして選出され、森英恵さんに続く"日本人史上2人目"として、ファッション・ウィーク初日のトップバッターもつとめた。まさにいま旬の若きデザイナーの実態に迫る。

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SHOJI FUJII

―はじめに、デザイナーとなるまでの歩みを教えてください。

高校卒業後にベルギーのアントワープへ進学し、4年間を通してファッションデザインを学びました。「自己のアイデンティティーを突き詰める」という学校の教育方針をきっかけに、自分自身のルーツに徹底的に向き合うことになりました。世界中から生徒が集まるなかで自然と「日本人であること」への意識は高まり、そして「日本人として自分にしかできないこと」を問われているように感じたんです。『ユイマナカザト』はその経験から生まれたといっても過言ではありません。帰国後すぐに、本格的に作品づくりに打ち込み、若手デザイナーで集ってパリで合同展示会を開催。これがすべてのはじまりでした。

―ブランド設立当初から使用している"ホログラム素材"に象徴されるように、最先端の技術を活かしたデザインのイメージが強いのですが、ブランドの鍵となるのはやはりテクノロジーですか?

もちろんテクノロジーもキーワードのひとつですが、命題は「伝統とテクノロジーの融合」ですね。学生時代に突き詰めた「日本人である自分自身のルーツ」はブランドの核にしつつも、大切にしているのはバランス感覚。アイデンティティーは主張しすぎず、抽象的に留めておきたいんです。表面的には、未来的なものや国籍を感じさせないデザインを意識しつつ、細部へ解きほぐしていくと"らしさ"が見えてくる表現を理想にしています。

―なるほど。なぜ「伝統とテクノロジーの融合」をテーマに据えたんですか?

実は、僕の両親はモノづくりに携わっていて、昔ながらの生活を重んじるDIY精神あふれる環境で育ってきました。現代の大量生産のモノづくりには、職人さんの手作業や技は活かしにくい面があるんですが、だからこそ、もう一度そういったクラフトマンシップに光が当たってほしいという想いがあって。一方でテクノロジーというのは日々発展していくものじゃないですか。その2つがうまく合わされば、日本のモノづくりはもっと進化できるって思ったんです。

また、大量生産された服は事前に決められたサイズに人がはめ込まれていくものですが、オートクチュールにはそれがない。人に合っていない服をまとわせない、One by Oneの(ひとりひとりに合わせた)モノづくりに興味があったというのは、今回オートクチュールに参加した理由のひとつでもあります。価値観の変化やコスト面の課題などで、衰退してきた歴史を持つオートクチュール。でも、そこにテクノロジーをうまく融合できれば、大量のモノづくりでありながら、ひとりひとりに向けてカスタマイズされているという「マス・カスタマイゼーション」が叶えられるんじゃないかと思っています。

―過去には"漆"や"江戸切子"、"折り紙"などもモチーフとして取り入れられていますが、他に取り入れてみたい日本ならではの素材や、伝統工芸品は何ですか?

伝統性を感じられて、かつホログラムと相性の良いものは常に探しています。一番最近デザインに取り入れたのは、"有田焼"です。釉薬でホログラムを表現した磁器を、「ホログラムバッグ」の底びょうに活用しました。すべて職人さんの手作業で作っていただいたものです。本来の有田焼って、食器や植木鉢として何かを支えていることが多いんですよね。それをバッグに置き換えて考えてみたときに、底びょうの存在と重なってきたんです。有田焼もそうですが、これまでは硬質なものを取り入れることが多かったのですが、今後は織り方や繊維質なもので何かできないかなと模索中です。

―ちなみに今月、コスモポリタンでは「初体験」をテーマにしているのですが、ナカザトさんにとって忘れられない"はじめて"はありますか?

2010年に、東京を舞台にはじめてのショーを手がけたんですが、その時のコレクションは特に思い入れが強いですね。知識や経験値がゼロのなかでファッション業界に乗り込んでいくという、無知だからこその強さやエネルギーがあって。もちろん今は今で、経験や知識を積んできたからこその幅や深みがあるとは思うんですけど、当時の感覚や意識って二度と作り出せないものなんだろうと思ってます。"はじめて"が持つ力はすごいです。

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INFO

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"有田焼"を取り入れた「ホログラムバッグ」が初お披露目!

日本の伝統工芸"有田焼"を大胆にも底びょうに配した「ユイマナカザト」の「ホログラムバッグ」が、817日(水)から新宿伊勢丹にて開催される「アートアンドクリエイション」で初お披露目! リゾートユースにも映える近未来的なデザインと、細部に施されたクラフトマンシップの融合は圧巻。イベントは822日(月)までの6日間限定。