ミシェル・オバマがファッションアイコンになったワケ

バラク・オバマ大統領就任前から「ミシェル・オバマはGAPやJ.Crewといった庶民派ブランドを着ている」と国民から親しみをもたれていました。2009年1月大統領就任式では、繊細なレモングラス色のアンサンブルで登場。キューバ系アメリカ人のデザイナー「Isabel Toledo」（イザベル トレド）の服を着こなし、ファッション業界人を「さすが」と言わしめました。なぜなら過去の就任式には、レッドやブルーといった星条旗を思わせる色で登場する夫人が多かった中、フレッシュな色で登場したから。ビッグネームではなく、アメリカが誇るファッション大学FITでクチュール賞を受賞する実力派ブランドを選ぶあたりも、好感が持てますね！ ちなみにグリーンのグローブは「J.Crew」のもの。

就任式後の舞踏パーティでは白のドレスをチョイス。これで運命が一気に変わった1人のシンデレラボーイがいます！ このドレスのデザイナーである「Jason Wu」（ジェイソン ウー）。当時弱冠26歳だったジェイソン ウーの服は、ファッション業界では、人気がありましたが、まだまだ知られていない存在でした。ミシェルが着たことで、全米にその名を知らしめることになり、今では世界的なブランドに。ジェイソン ウーのシンデレラストーリーの始まりの瞬間でした。

第二期大統領就任式後の舞踏会では、またも「ジェイソン ウー」のドレスを着用。一期のホワイトドレスに続いて今回はレッド！　彼女の鍛え上げられた腕を鮮やかに魅せるシフォンロングドレス。4年間、大統領である夫の隣で、堂々と振る舞ってきた彼女を、赤いスパンコールが表現しているよう。

こちらは打って変わってダークトーンのボタニカル柄コートで出席した米中首脳会議の様子。このアンサンブルは2015年9月14日のNYコレクションで発表された「3.1 Phillip Lim」（3.1 フィリップ リム）のカスタムメイド。そして、着用した日はコレクションで発表のあった11日後の25日！ ひっそりと最旬ファッションを纏っていたんです。

さてさて、そんなミシェルが過去に物議を醸し出したドレスがこちら。2011年、同じく中国の胡錦濤国家主席を迎えた晩餐会でのこと。彼女が選んだのはイギリスのブランド「Alexander McQueen」（アレキサンダー・マックイーン）の、中国国旗を思わせる鮮やかなレッド。しかし、米国ファッション協議会CFDAの代表ダイアン・フォン・ファステンバーグとオスカー・デ・ラ・レンタは「アメリカのデザイナーによる服を公式の場で着ないとは」と、批判。こんな珍しい絶妙な赤だったら着てもいいじゃない！ なんて私は思ってしまいましたが。渦中の本人は、自身のファッションにはコメントしない主義なので、このドレスがふさわしいか否かは捉え方次第ということに。

NYにあるメトロポリタン美術館の「アナ・ウィンター・コスチューム・センター」開館セレモニーにて。インド出身で、アメリカでキャリアを積んだ「NAEEM KHAN」（ナイーム・カーン）のワンピースはグリーンの温かみのある刺繍が特徴的。アナ・ウィンターの隣で、目立つビビッドカラーを用いて大統領夫人という立場を強調するのではなく、彼女と同じファッションへの愛情を表現するような佇まいにうっとりしちゃます。何より、多民族国家の代表として、ありとあらゆる国出身のデザイナーの服を着こなすところにも、包み込むような優しさを感じます。